絶望のメリークリスマス
「姉ちゃん知ってるか?サンタさんなんておれへんのやで」
「ウソや!ウソや!そんなことあれへんわ!お菓子もいっぱいもろたやんか!」
私が小学生4年生、妹は3年生(早行き)の時のこと。
妹は
「フン!」と言って足つぎに乗り、茶箪笥の上の戸棚の戸を引き、中くらいの缶かんを取り出した。
「開けてみ!」
「いやや!」
すると妹は黙ってその缶の蓋を開ける。私はドキドキしている。
*****
ついその前もこんなことがあった。
「姉ちゃん知ってるか?お母ちゃん、ビッコやで」
「ウソや!ウソや!」私は必死で抗議した。
「ほな、よお見とき!」しれっと言いのけて妹は去った。
私の胸のドキドキが止まらない。顔も熱くなっていた。
母が帰ってきて、私はそっと顔をあげて盗み見をしたら妹の言う通りやった。
高校生になって、さりげなく母に聞いたら
「生まれた時から股関節脱臼やってん、今でも痛い時があるんやで」
私は母が気の毒になってかわいそうで仕方なかった。
*****
「見てみ」と言った妹は、缶の中のものを片手いっぱいに掴んで取り出したのだ。そこには靴下に入っていたのと同じお菓子や飴ちゃんが遠く滲んでいた。
サンタさんにもらった帽子と靴下はふわふわとしてとてもきれいだった。妹はそれを見越したか、今度は、押入れの中にゴソゴソ入り、ピンクと白のモヘアの玉を取り出した。
「もおええわ!」
妹のせいで台無しになったクリスマス。何もかも信じられなくなった。
が、なぜかお母ちゃんにはこのことを黙っておいた。
それより、その時から妹のことが嫌いになり、大人になるまで言葉を交わすことが少なくなったのであった。
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