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咲とレコード 第5話(天野 咲物語)

咲は朝から大忙し
アパートの廊下を 拭き掃除しているつもり...?
「ザー、ザザー、ザーー」
「咲ちゃん!何をしてるの!」
あせって母親が 駆け寄ってくる。

なんと咲は 雑巾で拭き掃除をしていたのではなく
レーコードで 廊下を掃除していた。
それわそれわ 大切に扱っていた姉のレーコードだった。

母親が手にした時には 時遅し
レーコードは 傷だらけでもう二度とかける事が
出来ない状態だった。
それを見た姉は 号泣
咲は 母親から激怒された。

それでも咲は めげる事なく
毎日のように 大事なレーコードで雑巾かけをするのである。

床とレーコードが こすれる音と感触が楽しかったのである。
暫くの間 この遊びは飽きるまで続くのであった。
その度に 母親に激怒されるが 咲はめげなかった。

後にレーコードは プレイヤーで聞くものだと知り
咲の遊びは レーコードを聞く事に変わっていく。

ほとんど毎日 一人遊びが普通の日常だったので
咲は レーコードが友達みたいな感じになっていった。

レコードをかけて 一緒に歌う咲であったが
ある日レコードの 扱い方が変わったのである。

何故かと言うと 咲が住むアパートに
日本舞踊のおっしょさんが
京都から引っ越してきたからなのである。

姉と咲は そのおっしょさんから 日本舞踊を習うことになり
いつも遊んでいた レコードプレイヤーを使って
レコードをかけて 舞いを習うのであった。

それはそれは 楽しくて仕方がなかった。

咲は筋が良いと誉めてもらっていたが
姉は動きが固いと いつもやり直しをさせられていた。

咲は好きな音楽に合わせて 踊りを踊るのが
心地が良く 日本舞踊の時間が楽しみで仕方がなかった。
それに加えて 浴衣を着れるのが嬉しかった。

でもそれは長く習う事が出来なかった。
何故なら おっしょさんは京都の家をリホームしている間だけ
咲の住むアパートに越してきたので
リホームが終わると 京都に帰って行ってしまったからなのである。

おっしょさんに 咲は筋が良いので
京都まで通わせて 習わしてあげてくれないかと
母親に言っていたらしいが
通うのが大変なので断ったらしい。

咲も 母親にお願いしたが 無理だと言われ
泣く泣く諦めた。

おっしょさんが京都に帰ってしまってから
また咲は レコードをかけて歌う毎日に戻るのであった。

咲が産まれて初めて習い事をしたのが
日本舞踊だったが あっけなく終了してしまったのである。

今回はこの辺で また次回にお話したいと思います。

最後まで読んで頂き ありがとうございました。m(__)m


      作 天静 凛

YouTubeで朗読しています。
https://youtu.be/932SIC2y2qQ

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