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克服出来た咲 第8話(天野 咲物語)

とても嬉しそうな 歌声が聞こえてきた。
その主は 12号室のお兄ちゃんだった。

それに気付いた咲は 即座に隠れた。
そう 咲は男性恐怖症のため
お兄ちゃんに近づく事が出来ないのです。

12号室には 20代後半ぐらいの
恋人同士が同棲暮らしをしていた。

両親と姉は 二人ととっても仲良くしていたが
咲は おねえちゃんとは仲良くしていたけど
なんせ男性恐怖症のため お兄ちゃんとは距離を置いていた。

そのお兄ちゃんが ご機嫌なのは
おねえちゃんに了解なしで ペットを買って来たのである。

何を買って来たかと言うと
10㎝ぐらいの赤ちゃんワニを買って来たのである。

おねえちゃんは ビックリしていた。 
咲の姉は 興味深々で12号室に入ったまま 部屋に帰って来ない。

咲は 興味が有るけど お兄ちゃんが居るので見に行けず
自分の部屋にこもっていた。 

咲がワニさんに会えたのは
次の日にお兄ちゃんが 仕事にでかけた後だった。
ワニさんは とても小さくて可愛いかった。
咲が ワニさんに会いに行った時には もう既に名前が付いていた。
ワニさんの名前は ぺぺさんと名付けられていた。

そこから12号室に よく出入りするようになった。

でも これがきっかけで
ここから お兄ちゃんと咲の姉 vs 咲との戦いが始まるのである。

何故かって?
お兄ちゃんが咲になついて欲しくて たまらんかったらしい。

あの手この手で 咲に接近出来るように
作戦を練って 近づいて来るのであるが
咲は いつも泣き叫びながら 自分の部屋に逃げ込むのであった。

そんな戦いが 何ヶ月か続くのであった。

12月のクリスマスに 咲に異変が起こる。

お兄ちゃんが 咲の大好きなキャラクターのおもちゃを
クリスマスプレゼントに買って来てくれたのである。
そこで両親は 咲にちゃんとお礼を言って来るように説得し
最終的には 姉が「一緒に行ってあげるから」と説得され
咲は しぶしぶお礼を言いに12号室に行ったのである。

姉はそそくさと お兄ちゃん達の部屋に 入って行ってしまい
咲はドアの外から 部屋を覗き込み 様子をうかがっていた。
ドア付近には おねえちゃんが立っていて
奥の部屋には お兄ちゃんが座っていた。
咲の姉は お兄ちゃんにお礼を言い
お兄ちゃんと 仲良く喋っていた。

咲は暫くの間 ドアの外でもじもじしていた。
おねえちゃんは「お兄ちゃん怖くないよ 大丈夫だから入っておいでよ」と
優しく見守ってくれていた。
それでも 咲は動くことが出来ず 声も出ないでいた。

どれくらいの時間がたったのか 判らないけど
咲は 勇気を出して お兄ちゃんに「プレゼントありがとう」と
言えたのである。

お兄ちゃんは満面の笑みで「いいえ 気に入ってもらえたかな?」
と言うと 咲は「うん」と言えたのである。
それを聞いた お兄ちゃんは嬉しそうに笑っていた。
咲は その姿を見て(この人は怖い人ではないのだ)
と悟り 時間は掛ったが
一歩ずつ部屋に入って行って お兄ちゃんに近づいていった。
お兄ちゃんは座ったまま動かずに 少しずつ咲に話かけてくれていた。
その度に咲は 怖さがほぐれていくのであった。
最終的には お兄ちゃんの横に座る事が出来たのである。

このことによって 咲の男性恐怖症が少しとけた瞬間であった。

お兄ちゃんは それは喜んでくれていた。

その出来事をきっかけに 咲の男性恐怖症は克服していくのである。

また咲の試練が乗り越えられた日でもあった。

この続きは また次回にします。

最後まで読んで下さり ありがとうございました。


     作 天静 凛

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