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子育てより仕事の方が楽だ、とその先輩は言った

 「保育所が決まれば半年で復職します。」そう言ってその人は、2人目出産の産休に入った。

 いつも「子どもは可愛いけれど育児は大変。仕事のほうが楽。」と話していた。

 頭が切れて仕事が速く、仕事が好きな人だった。

 当時は自分に子どもがいなかったので、本当の意味での子育ての大変さを知らなかった。

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 自分は人間を育てられるような人間ではない、未熟者が人を育てるのは早い、と思い、なかなか子どもをもつ勇気を持てなかった。

 しかし、タイムリミット寸前で、自分はいつまで経っても未熟者でこのままでは子をもてない、と気づいた。

 夫婦ともに不妊リスクを持っていたため、不妊治療、13週から切迫流産で2ヶ月入院、自宅療養の末に1人の子をもつことができた。

 子どもをもつことができたのは、とてもラッキーだったと思う。

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 赤ちゃんと接する機会がなく、子育てについての基準が自分にはなかった。 

 振り返ると、泣き続けたり、身体がふにゃふにゃだったり、手がかかったり(これは今も)少し様子が違う子だった。

 現に、最初の集団検診で身体的成長の問題を指摘され、現在も定期的に経過観察に通っている。

 検診までは基準を持たなかったから、比較して心配することがなく、なんとか過ごせたように思う。

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 自分はもともと人に対して「かわいい」など前向きな感情の幅が狭く、愛情表現も乏しい。スキンシップも苦手だ。

 子どもに対しても前向きな感情や愛情表現は他の人より乏しい。預けている保育所の先生の方がよっぽど「かわいい」と言ってくれるし、スキンシップもしてくれる。

 1日10時間以上預けられ、家に帰っても親は家事に追われて遊んで貰えず、あれしなさい、これしちゃダメ、と制限されるのに、なついてくれる我が子がありがたい。

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 さて、「子育てより仕事の方が楽」か。

 自分の答えはYESだ。子どもの特徴やその人自身の価値観、仕事にもよるだろうが、少なくとも自分は仕事の方が楽だ。

 我が子といえども一人の人間。当然コントロールできるものではないのに、常に自分と共にある。生あるものとして欲や心配があるし、常に優先順位の上位にくる。受ける制限も多いなか、これは中々のストレスだ。

 仕事の人間関係はその場限りで済ますこともできるし、業務に対しても割切りができる。自分の職場の場合は、時間が解決してくれることもある。

 体力的な問題も、職場なら年齢的に察してくれるが、子どもはそうはいかない。

 それでも、先輩のようにもう1人欲しかったのは、自分では認識できていないが、やはり子どもをかわいいと感じているのだろう。

 もう会うことはない2人目の子の分まで我が子と向き合いながら、未熟者も少しずつ成長していきたい。



 

  

ありがとうございます^_^