見出し画像

Megalomania Tokyo 4は良い時間が流れる会【会いに行こう#01】

「競技クイズとデザイン」という記事を書いたのですが、けっこう反応をいただけてとてもうれしいです。

そして、その反応のなかでいろんな大会/イベントの実例を耳にするにつれ「いろんなクイズプレイヤーに話を聞こう」「いろんなクイズの場で良いところも問題点も吸い込もう」と実感しました。いろんな「クイズ」に”会いに行こう”。今、大会帰りの新幹線で聞こえてきた曲から名前をつけた新シリーズです。会うから見える顔がある。
自分はこれまで30以上のクイズ企画・大会にスタッフとして関わってきて、それなりに「つくる」側に身を置いているのかなと思っています。やりたいことを詰め込んだIRODORI ONSTAGE(略称: IO)もありがとうございました。「つくる(≒アウトプット)」はOK。あとはよりよい実例をインプットするのみですね! I/Oだ。

行くぞ、Megalomania Tokyo 4!

「Hayaoshiの大会に出たほうがいいよ」

「Hayaoshi」という発明があります。ブラウザ上で動作するウェブアプリにゲームパッドを接続し、PCに挿したイヤホンから流れる「問読み」の音声で早押しクイズをするという機構であり、これを同時に複数端末で実行すれば、同じ問題でより多くのひとがクイズを楽しめるというものです。
しかし、もともと自分はHayaoshiを使った大会には行かないかな~と思っていました。自分の競技クイズ観というか「つくりたいな~」と思っている場面が、「解答権を得て全員の目の前で正解を放つ」シーンだから(/だったから)です。
と同時に「みんなのクイズの機会を増やす」という目標にも志向していました。IOは「一部屋進行」と「全員に2回の早押し機会を提供」を両立することが第一条件であり、ふたつの目標の体現でした。
一方、「saQunaたんたるひまたんダイキリクイズ」で複数部屋進行を採用したときに、「これだけいい問題を全体でたったひとりしか『正解』できないのはもったいないよな」とも考えていました。加えて、「解答権を得る(≒独り占めする)」「全員の目の前」という要素はそれぞれ本当に必要なのか、切り分けて嗜好の志向に対する思考を試行していました。
そんななかで、問題集『Megalomania Tokyo -Prototype-』を購入して最後の主催者コメントを読み、自分の考えが少し変化しまとまったので、「4」の参加に至ったのです。別に両方あってもよいよな("両方"という書き方をしたが、峻別しているわけではないし、する必要もない)。ちょうど「競技クイズとデザイン」で「享受者の目線」を意識していたことも大きく影響しています。
何度か「Hayaoshiの大会に出たほうがいいよ」と言われ続けてきました。ありがたいことです。出るよ! 「解除」が進んでいく現場を見てないのに話せないもんね。

思ったこと

大会中はたいへん良い時間を過ごすことができました。結果でいうと3連敗、Bクラストーナメント初戦敗退で終了したのですが、それでも「たいへん良い時間を過ごすことができ」たのは、主に以下のような点があったのかなと思います。

  1. 「壇上」の必要性を失った大会が一体感をもたらしていたこと

  2. 何度も楽しい問題で対戦できたこと

  3. 審判というよい体験ができたこと

  4. 多くの方と会話できたこと

「壇上」のない会場がもたらした一体感

これまでの多くの早押しクイズ大会では、「早押し機」をステージ上や会議室の前方(しばしば『壇上』という言い方がされる)に設置し、そこに参加者が着席して早押しクイズを実施してきました。Hayaoshiは「様々な場所で同時にクイズができる」のが特長なので、「(マイクやスピーカーなどを使って全体に向けた問読みが必要な)早押し機」というものがいりません。それは、会場から壇上の必要性をもなくしました。
最終盤は前方に機構と観戦席が設けられましたが、この大会はほぼ全編でフラットな大部屋にテーブルをならべて行われました。自分はこのまっ平らな、遮るものがほぼない会場の雰囲気を好いています。全員の視線を浴びることによるプレッシャーや断絶(例えば『筆記落ち』)の象徴という裏面りめんを持っていた壇上。それを失ったクイズ大会からは、なんだか250人以上のあいだを流れる一体感を感じ取れました。

回数の多さと問題の質感のマッチ

先述のように、多くのひとが多くの早押しクイズ機会を得ることができるのが本大会(Hayaoshiを使う大会)の特長ですが、そこで出題されるクイズ問題があまりに難しかったり、あまりに簡単だったりすると、その利点が削がれてしまいます(このふたつはともに『解答権を得ることが難しい』というところに帰結する。不思議)。なお「利点」と書いたのは、「クイズに正解する体験がよいものである」という考え方に立っているためです。
その点、たとえば自分は「他の人がまったく手出しできなかった(だろう)ところ」で正解することが何度かできましたし、感想をサーチしてみても「問題の妙味」に着目した投稿が多く目に付きました。
正解が宝物になれる30問を何セットも浴びることができたのは幸甚でした。このあたりは、「4人で実施(それ以上の人数で実施するクイズよりも解答権を得る可能性が高まる)」「7問正解で勝ち(2人が勝てば終了するが、勝ちまでのノルマが一定あり、クイズを楽しめる時間が長い)」というルールも作用しています。
そのうえで自分自身は、「1勝でもしていたらもう30問参加できたのか~」と悔しく感じてもいます。「クイズに対する努力」という論題がありますが、この大会も当然例外などではなくしっかりリンクしていることを痛感しました……。

システム化されたスタッフ体験

一般に、クイズ大会のスタッフ業務は難しい作業が山積します。特に大会/試合中のオペレーションに関わる際は、スピーディーな進行についていける一定の慣れがなければなりません。経験の浅いひとに対してはハードルの高さを感じさせていると考えています。そのあたり、Hayaoshiというアプリが進行も半自動で担えるのが大事になってきます。試合中の進行の方法は、「正解・不正解」「問題表示」「再生」のボタンを押すという、一度でも参加者になればどういう仕組みなのか理解しやすいシンプルなものでした。UIもかなり魅力的でした(ここは独立記事を書こうかな)。
一方、クイズ問題という財産を参加者に渡してしまう方法に注目していましたが、論理・物理で壁を何枚も設けており驚きました。自分ならどこかで妥協しそう……。ここはトレードオフで、すこし複雑かつ全体の進行を揃える必要があるため待ち時間をやや長く感じていました。ただ個人的には、次に記す理由があり、この待ち時間も「たいへん良い時間」に含まれています。

「同卓」という出会い

「壇上」では、基本的に「隣のひと」はいても「前のひと」はおりません。一方この大会は最大32のテーブルそれぞれに4人が、向き合って着席しクイズに挑みます。この配置が、「同卓」のひとびとから会話を自然に生み出せるのではないかと思っています。クイズの世界には「対戦者と待ち時間に喋る」ということがしにくい大会(招集されてすぐに壇上へ行き、終わったらすぐに元の観客席へ戻る)もありますから、特筆すべきポイントです。自分も、対戦開始前に関係ない雑談をし、終了後にそれぞれの正解を称え合い……と喋ることができました。うれしい。収穫も多く、会話の果てにVtuberへれることになりました。新しいコミュニティへのdiveだ!
また、「壇上がない」という項とリンクして、「進行中の試合を見なければならない」という雰囲気が分散され薄まっていたのが、自分にとって居心地がよかったです。初めてお会いした方に挨拶しに行ったり、いろんな話をしたり意見交換したり、そういうことにも時間を使えたのが幸いでした。ただそれが各卓で高じ、進行中の試合があるなかで会話が盛り上がってしまうシーンがあるのは難しいところ……。気をつけつつ!

さいごに

Megalomania Tokyo 4に会いに行きました。ありがとうございました。
「参加したみんなに早押しクイズを提供する」というのは数多の競技クイズ大会が挑んできた命題(もちろん全大会が目指さなければならないわけではない[どんな設計にも理由は要る])ですが、エンジニアリングの方向から成功を刻んでいると思いました。もちろん、開発以外のところでもよいデザインが見られたと思います。参加してよかった。次も参加したいし、次は勝ちたい!

一方自分は、「壇上がある」「筆記落ちがある」「解答権を独り占めする」大会に多く関わってきましたし、これからも関わっていくと思います。
両方あって良いよな。
両方を行き来して、両方でいい体験をできる/生み出せるようにしていきたいと思っています。

ありがとうございました。

こぼれ話: 卓に提供し大活躍したPCを労いつつイヤホンを挿すと、大会用設定のままだったゆえ""音量100%""となった星街すいせいさん(初対面)が鼓膜を殴ってきて、新幹線がおれの墓場になるとこだった


saQuna/さくな
Web/SNSの統轄責任者として「abc/EQIDEN」2022年・2023年大会に参画。その他の担当クイズ大会に「"ONLY MY QUIZ" new generations(メインスタッフ)」「mono-series'19(問題チーフ)」「abc-west 3rd(デザイン・得点表示)」「saQunaたんたるひまたんダイキリクイズ(メインスタッフ)」など。2023年6月には個人大会「IRODORI ONSTAGE」を開催。
立命館大学クイズソサエティーを経て現在は社会人。


頂戴したサポートは、よりよい作品づくりに活用させていただきます。よろしくお願いします!