さく

思いついたおはなしを思いつくまま投稿していきます。 裏は表、表は裏、日常はおせろみたい…

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思いついたおはなしを思いつくまま投稿していきます。 裏は表、表は裏、日常はおせろみたいに、変わっていくものだと思います。

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僕だけがどんどんを歳を取る世界なんて何の意味があるんだろう? 『愛しのせりー#1』

 映画の演出でキラキラとエフェクトがついた描写があるけど、そんなの現実ではありえないと思っていた。だって僕はいつもクラスの端っこで、誰にも見せることのない絵を描き、一人自己満足している、狭い世界で満足していたんだから。  僕はハブられた訳じゃなく、昔から一人が好きだった。面倒見のいい年の離れた兄貴が家族の中の”良い子供役”をしっかり担ってくれていたし、だから僕はその舞台から降りることにした。正直家族でさえも人間関係なんて面倒くさかった。  一番学生生活で好きだったのは、放

    • それから13年後。 『愛しのせりー#4』

       僕は今日で30歳になった。30歳の僕は、街の外れにアトリエを借りて、貧乏な絵本作家をしていた。自分の拙い絵に文章を乗せるようになったのは、彼女が学校に来なくなってすぐのこと。今まで絵を書くだけで満足していたのに、あの日から物足りなく感じるようになって、ごく自然と頭の中にストーリーが思い描かれるようになった。2ヶ月もしない内に一つの作品が生まれた。それをどうしても彼女に見せたかった。  彼女が学校に来なくなった理由は誰も知らなかったし、担任の先生も事情を知っているようだった

      • 顔がなかったのは悪意ではなかったんだ。 『愛しのせりー#3』

         荒野のような荒れ果てた土地に女性が一人立っている。その女性の顔は黒く塗りつぶされていて、手にはその場所には似合わない綺麗な花を持っていた。僕がいつも彼女に抱いていた感情、また今目の前にいる彼女に思ったこと。ありのままの表現が紙の上に繰り広げられていた。 「楠くんには私ってこう見えてるんだね…」  やってしまった、と僕は思った。彼女の表情は曇りに曇っていて、心なしか震えているようにも見えた。 「ごめん」  とくに人と関わったことのない僕にはこの一言しか出てこなかった。

        • ”いらない”と決めつけていただだけだったのかもしれない。 『愛しのせりー#2』

           絵を誰かに見せないのも一つの自己防衛だった。だって絵が自分を唯一表現できる場で、自由にわがままに喜怒哀楽をぶつけることが出来たから。それを誰かに評価されたら、真っ白な感情に”他者”が入ってきてしまう。それが嫌だったんだ。  「ねえ、私の顔も書ける?」  彼女は真剣な眼差しで言った。  普段だったら絶対に断っているが、その真剣さに、「人物画はかけないけど、モチーフにしてなら書けると思う」と答えるしかなかった。彼女はゆっくりと目をつぶり、「お願いします」と前の席に腰を下ろ

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