それから13年後。 『愛しのせりー#4』
僕は今日で30歳になった。30歳の僕は、街の外れにアトリエを借りて、貧乏な絵本作家をしていた。自分の拙い絵に文章を乗せるようになったのは、彼女が学校に来なくなってすぐのこと。今まで絵を書くだけで満足していたのに、あの日から物足りなく感じるようになって、ごく自然と頭の中にストーリーが思い描かれるようになった。2ヶ月もしない内に一つの作品が生まれた。それをどうしても彼女に見せたかった。
彼女が学校に来なくなった理由は誰も知らなかったし、担任の先生も事情を知っているようだった