書籍:企業文化をデザインする

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


企業文化をデザインする

冨田憲二さんが書かれた「企業文化をデザインする」を拝読しました。

こちらの書籍では、企業が持つリソース「ヒト・モノ・カネ」のヒトにレバレッジを掛けることの重要性を語っています。
そして、そのレバレッジの掛けるために企業文化の重要性を説いています。

この書籍を通して、企業文化の構成要素を理解し、解像度をあげることが可能です。
その上で、企業文化をデザインして定着させていく手法について、学ぶことができます。

この書籍からの学びを、いくつか記載したいと思います。

時代背景

かつて、日本の製造業が強い時期においては、利便性の高い製品を作ることで顧客から選ばれていました。
今よりも正解がわかりやすい時代であったため、その正解を実現する工場(モノ)への投資が重要であったと言えます。

そのような時代においては、企業文化のような言語化が難しいものに向き合わずとも、正解に向かって突き進むことで、企業は成長することができました。

しかしながら、製品が一定レベルを超えた段階で、差別化が難しくなります。
どの製品でも、同じような機能を備えていくようになりました。

加えて、インターネットの発達によって、情報がものすごい速度で流通することとなりました。
成功要因やニーズの高いものは、情報としてシェアされ、それに従ったものづくりがされるようになります。
さらに、品質が低いものは、口コミなどによって排除されていきます。
結果として、製品全体の品質が底上げされて行きます。

さらに、情報通信の発展が、社会の変化を加速させます。
VUCAと呼ばれる時代となり、不確実性が高い時代となりました。

このような状況下においては、「わかりやすく説明可能な状態に言語化する」ことが難しいものに向き合う必要が生じてきます。

言語化コストが高いもの、曖昧で説明が難しいものを、複雑なまま許容していくことが必要な時代となりました。

企業の持つリソース「ヒト・モノ・カネ」の中で、もっとも複雑性が高いものが「ヒト」です。
この「ヒト」のリソースを最大限活躍させるために必要となるのが、企業文化です。

人間は、感情の生き物です。
感情によって、信じられないほどのパフォーマンスを叩き出すことがあります。
逆もまた然りで、感情によって全くといっていいほどパフォーマンスがでなくなることもあります。

この特性を最大に活用して、企業活動を行うために、企業文化が重要となります。

企業文化

企業文化は、大きく、以下の二つから構成されるといえます。

  • 信念

  • 行動

企業活動を含めた、組織の行動は、何かしらの信念に基づいた行動の集積になります。

ホモ・サピエンスの特徴

我々、現生人類はホモ・サピエンスと呼ばれる種です。
今では「人間」とよばれるものは、すべてホモ・サピエンスです。

「サピエンス全史」では、約7〜3万年前に、ホモ・サピエンスには認知革命が起きたと記載されています。

その頃から、ホモ・サピエンスは、虚構を信じる能力を手にしました。
目に見えるもの以外のものも、信じられるということです。

これによって、例えば神話を通して「私達は同じ神話の民だよね」のように、連帯を持つことができるようになりました。

この虚構を信じる能力によって、ホモ・サピエンスは他のヒト科(ホモ・エレクトスやネアンデルタール人)を圧倒することが出来るようになりました。

現実には存在しない概念上のものを信じることによって、我々は大きな力を発揮してきました。
その一つが「信念」です。

ミッション・ビジョン・バリュー

すでに多くの書籍で語られている、ミッション・ビジョン・バリューについて整理します。

これは、「信念」から「行動」に落とし込むための枠組みです。

  • ミッション:実現したい世界

  • ビジョン:そのための使命

  • バリュー:そのための判断や行動

これらは重要な考え方であり、企業文化を可視化するために必要な整理です。

スタンスとスタイル

しかしながら、ミッション・ビジョン・バリューによって、すべての企業文化が表現されているわけではありません。

ここで、「スタンス」と「スタイル」という言葉を持って整理を続けます。

  • スタンス:宣言されたもの、可視化・言語化されているもの

  • スタイル:宣言されていないもの、可視化・言語化されているもの

ミッション・ビジョン・バリューは、「スタンス」に該当します。
スタンスは、一度明示したら、次のアップデートまではそのまま維持されます。

スタイルは動的であり、部署間の人の異動、採用による人の増加、上長の変更によっても変化します。
また、社会の変化からも影響をうけて、スタイルは都度、調整されていきます。

スタンスとスタイルの不一致は、望ましくありません。
言語化されたスタンスと、言語化されていないスタイルとで矛盾があると、組織や経営者に対する信頼が揺らぎます。


以上です。

これらの前提に則って、どのように企業文化をデザインしていくのかについて書籍では語られます。

構造的な話や、どのような人を中核に添えるべきかといった話もあり、非常に学ぶ所が多いと感じました。

企業文化は、「明文化されない曖昧なもの」というわけではなく、ミッション・ビジョン・バリューといった形で言語化されますが、それだけではありません。

言語化されていないグレーゾーンのような所にも企業文化があり、そのグレーゾーンに対する試みも重要だと言えます。

企業が右肩成長をしているときには、仕組み(モノ)や資金(カネ)によるレバレッジが効くため、企業文化に目をつむっていても特段問題となりません。

しかし、成長の踊り場(停滞期)に来た時には、組織内で不和が生じます。
場合によっては、停滞の犯人探しが始まります。

ここで踏み留まって、新たなジャンプをできるかどうかは、企業文化によるものが大きいでしょう。

そう考えると、企業文化が重要な時代になっていると言えると思います。

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