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最後の週末、ゆるやかな終わり

Bさんが引っ越す前の、最後の週末。

当初の予定では土曜日に私がBさんの家へ行く予定だったが、金曜日の夜、飲み会帰りのBさんがうちに来た。
だいぶベロベロだったので、シャワーを浴びてもらってから一緒に冷凍の汁なし坦々麺(お酒のあとって本当こういうのが美味しく感じる…)をつつき、寝る。
酔っ払ったBさんの、無条件に甘えてくる感じがやっぱり可愛いなと思う。

明けて土曜日、二日酔いでしんどそうだったが
「仕事が終わらなすぎるから会社に行く」
と言って早々に帰ってしまった。
週末も出社しないと間に合わないかも、と聞いてはいたので、「終わったら教えてね」と言って送り出す。
久しぶりにピラティスをしたり、昼寝したり、漫画を読んだりして夜までの時間を潰した。

暗くなったころに、Bさんから
「帰宅!」
とLINEが入った。

仕事してたことは何も腹が立たないのに、このLINEを見たらひどく悲しくなってしまった。

Bさんの家と私の家は、ターミナル駅を挟んで反対側にある。お互いの職場は、どちらも駅周辺だ。
仕事が終わってすぐに連絡をくれれば駅のあたりで合流するなり何なりできたのに、ひとりで家まで帰ったんだと思ったらものすごく悲しくなった。

電話をした。
佐久間「もう家なん?」
Bさん「うん。…え、帰ってきたらあかんかった?」
佐久間「別にええけど。会社らへんから連絡くれるんかと思ってたから」
Bさん「ごめん!何も考えず帰ってきてもうた」
佐久間「………」
Bさん「……うち来てくれるん?」
佐久間「…うん。会社から連絡くれたら一緒に行けたのに」
Bさん「え、ほんまごめんて。無意識に帰ってきてた」

Bさんは社畜だしこういう人だって分かってる。全然悪気はなかったのだろう。
でも、会える時間が限られてしまったいま、こういう邪気のなさが何より悲しい。

自転車を漕いでBさんの家まで行き、なんとなく二人でごはんを食べた。ハイボール、まぐろの刺身、ねぎとろと味海苔、炒飯。
珍しくBさんが率先して炒飯を作ってくれたのは、ちょっぴりの罪滅ぼしなのかもしれない。

ベッドに入り、明日どうするかを話す。
佐久間「午前中は荷造りやんな」
Bさん「せやな。午後はお買い物いく?」
佐久間「…うん」
Bさん「おまえが言うてた店、どこやっけ」
佐久間「あそこはやめとく。見てみたけど、やっぱり車じゃないと行かれへんし。百貨店いこう」
Bさん「そう?わかった」

自分で決めたことではあるけど、こうもあっさり引き下がられるとそれも悲しい。我ながらめんどくさいな。

日曜日。
引っ越しの荷造りをしようと意気込んで起きたが、あらためて部屋を見渡すと箱詰めするものがほとんどないことに気づいた。
Bさんの荷物のほとんどは服なのだが、すべて引き出しかハンガーラックに収まっているため、ダンボールに入れる必要がない。
それ以外のものは、まだ使うのでダンボールに入れられない。
「引っ越し屋さんが来る前に1時間がんばれば終わるやろ」という結論に至り、荷造りはしないことになった。
それもこれも1月にきちんと断捨離したおかげである。
Bさん「ほんま、やっといて良かったわー」
佐久間「私に感謝してな」
Bさん「はい。ありがとうございます」

そんなわけで午前中はだらだらとTVを見ながらBさんが茹でてくれたうどんなどを食べ、お昼ごろから外に出た。
やたら暑い日で、自転車で町の中心地まで走ったらすっかりバテてしまい、スタバに入ってめったに頼まないマンゴーパッションティーフラペチーノを飲む。Bさんはアイスコーヒー。
何かのイベントで結構町が賑わっていて、窓ガラス越しに人間観察をしながら涼んだ。

百貨店で、誕生日プレゼントを買ってもらった。
この話は別途書こうと思う。

スーパーで買い物をしてBさんの家に戻ると夕方で、早めの晩酌。ハイボール、レモンサワー、豆腐サラダ、わかさぎの南蛮漬け、ローストビーフ、ねぎとろと味海苔。
私がどうしても辛いものを食べたくて買ってきた「暴君ハバネロ」も一緒につまんだ。

まだ17時くらいだったが、炎天下を自転車で走り回った疲労に酔いと満腹が重なり、二人ともあっという間に寝てしまう。
目が覚めたら22時くらいだった。寝過ぎ。
Bさんがいなかったのでお風呂場を覗きにいくと、ちょうどお風呂から出たところだった。
「お湯溜めたから、入る?」
と言われて、私もお風呂へ。
スマホを持って入ろうとしたら
「これ要る?濡れるやろ」
と、Bさんが洗面所に常備しているジップロックを差し出してきた。
「え、なんで?洗うときは外に出すし、別に濡れないから大丈夫」
「落としたり水しぶき飛んだりせえへんの!?…女の子やなぁ」
変なところで女の子認定されてしまった。アラフォーだけど。

ゆっくり温まって部屋に戻ると、Bさんがレモンサワーを作ってくれていて、晩酌第二弾。
さっき残ったローストビーフやハバネロを食べながら、がんがん飲む。日曜日の23時としては絶対ダメなレベルで飲んだ。

月曜日、Bさんは始発で出ると言うので私はもう少し寝ていくことに。
目を覚ますと、ちょうどBさんが支度しているところだった。
Bさん「鍵ここに置いとくから、郵便受けに入れといて。クーラーと電気切ってな」
佐久間「うん。気をつけてね」(二度寝の体勢)
Bさん「ありがとう。…寝坊すんなよ!」
最後にお父さんモードを発動して出て行った。

そこからまた1時間くらい寝て、起きて、部屋を整えてから自宅に帰った。
この半年以上、ずっとBさんの部屋に置きっぱなしだった化粧品のポーチも持って出る。
洗面所に置いてもらっていた眉ペンも回収した。歯ブラシは引っ越し前の掃除に使うかもしれないので、そのままにしておいた。

鍵をかけて郵便受けにしまいながら、思いのほか心は穏やかだった。

きょうまでの色々なやり取りの中で、悲しくなったり嬉しくなったりを繰り返しながらも、少しずつ落ち着いていた。
落ち着いたというより「思い出した」というほうが正しいかもしれない。
Bさんと出会って1年、どれだけ関係を深めようとも「どちらかがこの町を離れたら関係は終わる」ことを常に肝に銘じてきた。
その範疇を超えて好きになってしまってたので最初の衝撃は大きかったものの、自分に言い聞かせてきたことをあらためて思い出すことができたら、意外と短期間で気持ちが凪いだ。心の準備って大事だ、淋しいけど。


起きたことをそのまま整理せずに書いているので、説明不足なところも多いと思うし、読んだ方がどんなふうに受け取ってくれるのかも分からない。けど、とりあえず書き残しておく。

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