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いくつになっても、祝ってくれる人がいるなら誕生日は嬉しい

少し前、めでたく39歳になった。39歳!ひえええ。

誕生日の前日、Bさんから
「飲み会なくなった!」
と連絡があった。
異動が決まって以降、引き継ぎ業務と飲み会ラッシュで死ぬほど忙しいようで(先日はLINEの返信が深夜1時過ぎに来て、朝6時頃に私が「遅くまでお疲れさん」と送ったら即レスで「いまから出社!」と返ってきた。え、ちゃんと寝てる?)、この種の連絡が来るのは久しぶり。

タイミングが合わなくてもう行けないかもね、と話していた、いつもの店に行くことにした。
少し顔を出していない間に、秋らしいメニューが加わっている。
ハイボール、さんまのお造り、白子ポン酢。いつものメニューも食べ納めようと、冷やしなす、ちくわの磯辺揚げ、カニクリームコロッケ、ぶりかまの塩焼き、焼きそば。久しぶりに来たらどれもこれも美味しくて驚く。
途中から日本酒も頼み、ハイボールをチェイサーにして飲んだ。

職場の女性陣に餞別で何あげたらいい?と訊かれ、予算を訊くとひとり1000円とのことだったので、スタバのミニカップギフトを勧めた。

こういうやつ。季節によってデザインは変わるけど、大体いつでも売ってる

「職場の人にあげるならいちばん無難やと思う。これもらって喜ばん女はいないから。もし要らんって言われたら私にちょうだい」
と言ったら、
「おまえにそんな安物あげるわけないやろ」
と言われた。
去年の誕生日にはLINEのスタバギフト(たぶん700円相当くらいのやつ)をくれた人が何を言うてんねん、と心の中でしみじみニヤニヤしてしまう。

こんなふうにたわいない話をしながらお店で飲むのは本当に久しぶりで、Bさんが
「やっぱりおまえと飲むと楽しいな」
と呟いていたのが良かった。私も、色々と吹っ切れていたおかげで純粋に楽しかった。
私の家に帰り、干し芋をつまみながらハイボールを飲んで寝る。



夜が明けて誕生日当日になった。
5時頃に目を覚ましてゴロゴロしている時間帯、
「誕生日やから、Bくんからチュッチュ攻撃してくれてもいいんやで」
とおねだりしてみる。
「何やねんそれ!」
と笑いながらも、おねだりに応えて顔にキスを浴びせてくれた。満足。

この日の夜、Bさんがレストランを予約してくれていた。私が前から行きたいと言っていた、星付きのイタリアンである。
予約時間は18時。
この日は休前日だった。仕事と飲み会に忙殺されているBさんが休前日の18時に来るのは至難の業のはずである。多少遅れることも覚悟していたが、待ち合わせの時間ぴったりに家まで迎えに来てくれた。(件の店が私の家から徒歩圏内、かつ私はこの日の午後休みを取っていたので、うちに来てもらう手はずになっていた)
お店まで向かう道すがら、
「よく出てこれたね。大丈夫やった?」
と訊くと
「ぎりぎりまで仕事しちゃうとぎりぎりの案件が入ってくるから、手前で終わらせるのがコツやねん。さすがにきょう遅れたらめっちゃ怒られるやろうなと思って」
と言っていた。

私のほうは時間に余裕があったため、いつもより凝った髪型にしたり普段着ないワンピースを着たりしていたのだが、お店に入って席に着くと
「なんか、おまえが頑張って可愛くしてきてくれてるのに、俺いつもの恰好でごめんな。髪もボサボサやし。散髪行きたかってんけど、どうしても時間が合わなくて」
と謝られた。
え、私の中では、時間通りに仕事を終えて来てくれただけで100点満点やねんけど。

この日私がつけていたピアスは、先日プレゼントとしてBさんに買ってもらったものだった。
普段は私のアクセサリーなど毛ほども気に留めないBさんだが、
「あ、買ったやつつけてる。いいやん!可愛いやん!」
と褒めてくれた。嬉しい。

Bさんは生ビール、私はグラスのスパークリングで乾杯。
地元の海や山の幸とイタリアンの技法を組み合わせたお料理は、どれもこれも筆舌に尽くしがたい美味しさだった。イタリアンなんだけどお箸でいただくものや、エスニックな香りがするものなどバラエティに富んでいて飽きさせない。2時間半のうちに、何度「美味しい」と言ったか分からない。
すばらしいお料理の数々にワインも進む。1本目はロゼ、2本目は赤ワインを開けた。

小さなお店でテーブル同士の距離も比較的近いのだが、途中で来られた老夫婦がとても素敵な雰囲気で、私たちを見ながら奥様が
「いいわねえ、若い人たちって」
とニコニコ言ってくださった。
隣県からわざわざこのお店を目指して来られて、今日は駅前のホテルに泊まるとのこと。
気づくとBさんも私も、「じゃあ明日の朝はここのパン屋さんに行かれたらいいですよ!」「ここのおまんじゅうも美味しいです!」とお勧めのお店を力説していた。
老夫婦を挟んで私たちと反対側にいたご夫婦も、なぜか県内のお得な観光情報などを提供している。
両サイドからの情報をニコニコと聞きながらメモする老夫婦。

おかしいな。
大阪・天満あたりの飲み屋でよく体験する「偶然居合わせた客同士のセッション」が、なぜ星付きのレストランで…?

色々と謎だったが、楽しかったし店員さんもにこやかに見守ってくださったので良いことにしておく。デザートまで最高に美味しく、そして雰囲気も本当に素敵なお店だった。

こんなに真っ赤なロゼを初めて飲んだ

早い時間のスタートだったので、コースを終えてお店を出てもまだスーパーが開いている時間で、晩酌用のお酒とおつまみを買いに寄った。
ワインを2本開けているので二人ともいい感じに酔っ払っている。
佐久間「誕生日やし、ハイボール作るのめんどくさいから缶入りのやつ買っていっていい?」
Bさん「全然いいけど、おまえ誕生日じゃなくてもよく缶のやつ買ってるやん」
佐久間「ばれた?」
缶のハイボールと、スナック菓子などを買い込む。美味しいイタリアンでお腹いっぱいになったのに、こういうものを見ると買ってしまうのはなぜ…。

佐久間「もうこんなふうに飲めなくなるんやなぁ」
Bさん「おまえそうやって言うけどさ、これがもし仙台とかやったらほんまにもう会えんくなってたで。大阪やで?おまえ月イチで来てるやん。考えうる異動の中で、大阪が最高の選択肢やと思うけど。そんなメソメソする意味がわからんねんけど」

…え、
そんなことを言われたら私は吹っ切れなくなるねんけど?????

スーパーでその会話をして、家に帰ってからはあまり記憶がない。缶のハイボールを飲みながら、気が大きくなっていっぱいキスをせびっていたような。

すっかり酔っ払って、いつの間に着替えたのかも思い出せないが朝になったらちゃんと二人ともパジャマを着ていた。
しじみ汁を一緒に飲み、しばらく朝寝を楽しんでからいつものパン屋さんへ。
きのうの老夫婦にお教えしたのもこのお店なのだが、お二人には会えなかった。でも行ってくれていたらいいな。

数日前まで、というか当日まで、こんなにも幸せな誕生日を過ごせるとは思っていなかった。
30代ラスト、正直このまま歳をとっていくのかという恐怖もあるけれど、祝ってくれる人がいたら誕生日はこんなにも嬉しい。

来年の誕生日、私はどこでどんなふうに過ごしているのだろう。

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