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フライキャスティングを解体する(1)

 フライフィッシングが敬遠され気味な理由はさまざまあります。釣具のシステムが独自すぎてわかりにくいとか、いろいろ言われますけれども、おそらくはあの「投げ方」がトップでしょう。オモリの重さではなく、糸の重さを利用して投げるのです。
 塊になったオモリやルアーを、遠心力を使い、スイングのほぼ頂点で最大パワーを発揮してリリース、あとはフォロースルー…のような、普通の釣りの投げ方とは、全く違った世界。やる前から、あれは自分の知識にはない何かの技だとわかっている。試しに少しやってみても、力を入れれば入れるほど飛ばない。この戸惑いは大きいと思います。

●たった4つのルール

 しかし、そんなに難しいことでもないのです。守らなければならないことは、たったの4つ。

1.竿先は直線を動くように
2.竿全体はひとつの平面を描くように
3.滑らかに加速し、最後で急停止
4.前後それぞれでラインがほぼ伸びきるまで
待ってから次の振りを始める

 これだけです。要するに、糸を一本の棒、いや、槍のように扱う、槍投げに近いイメージです。
 適当な棒を遠くに投げようとしたら、振り回すのではなく、槍のように投げようとしますよね?とすると、1〜3までの動作を自然にやりませんか?そうなんです。

 上記4つを説明すると、きちんと論理立ててスポーツをしている人たちは瞬時に理解して、実際に竿を渡すと、数回の問題点の指摘で、もう実戦レベルまで振ることができたりします。
 あと意外な話なのですが、あまりスポーツをやっていない女性の方が上達が早い傾向があります。これは種明かしをすれば不思議でもなんでもありません。普通にキャッチボールをしても、彼女たちは手首のスナップを使ったり、全身をひねったりせず、どちらかといえば体は直立のまま、押し出すような投げ方をしますね。あれが仕草的にはとても近いのです。

 逆に困るのが、振りかぶって手首のスナップで投げようとする人。飛ばない、ライントラブルを起こす程度ならまだいい方で、最悪、竿が後ろの地面を叩きます。これを矯正するのが一番大変です。

 このへんの詳細は(2)の方でみっちりやりましょう。

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●最上のテキストはあのマンガ

 私のフライキャスティングはほぼ独習、中学生時代、自宅前の空き地で毎日練習していた結果、竿の硬さや反発力といった特徴をほぼ瞬間的に理解し、振り方をロングストローク/ショートストロークなどに調整できるようになりましたが、これではあまりに汎用性がありません(つまりは全く自慢できる話ではない)。友人たちとも練習しましたが、教えるのもなかなか難しいものでした。

 高校生のとき、当時の日本でトップクラスの著名なフライフィッシャーマン、芦沢一洋さんと出会いました。芦沢さんのコーチングは、アメリカのこれまたトップクラスの釣り人、ダグ・スイッシャー氏のアレンジではあるのですが、とてもわかりやすいものでした。
 で、芦沢さんのコーチングですが、私の竿を手に取り、見本を見せたあと、私に少々振らせた結果「教えること何もないから……。長い目にライン(糸)を出して、練習いっぱいしてくださいね〜」と数分で卒業(…苦笑)となってしまい、あとはひたすら「どう教えるか」を見ていることになったわけです。
 ちなみに見ていることになった理由でもあるんですけど、講習最後まで使っていたのは、私の竿でした(…再度苦笑)。その後芦沢さんとは、親子ほども歳の離れた友達付き合いのような関係になるわけですが、それはまた別の話です。

 とはいえ芦沢さんはもうだいぶ前に亡くなり、今はそのコーチを受けることはできません。では、代わりに何かいいフライキャスティングの教材はないかということになるのですが、数多くのハイレベルなフライフィッシャーマンが口を揃えて言う教材があります。しかし、それは教本やビデオではありません。
 なんと『釣りキチ三平』の「フライフィッシング編」(連載時タイトル:ニンフの誘惑)です。ストーリー的には問題なしとはしませんが、フライキャスティングの基礎から実際の釣りに関してまでの話は、おそらく、この本を超えるのは難しいだろうというレベルです。下写真の大型コミックス2冊にまとめられているものが、古書店含めて一番入手しやすいと思います。

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(2)に続く

フライフィッシング入門:目次
https://note.mu/sakuma_130390/n/n85152b3ea6f3

フライフィッシング、および海川の小物釣り入門の実用記事を書いています。気に入っていただけたらサポートしてくださると励みになります。 (モバイル決済不可/note社経由したくない等の方はお問い合わせを。ギフト券などもご相談ください) もちろん出版企画は大歓迎します。