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フライキャスティングを解体する(2)

●再び「たった4つのルール」

 初回で示した4つのルール。糸を一本の棒、いや、槍のように扱う。適当な棒を遠くに投げようとしたら、振り回すのではなく、槍のように投げようとする、その動作。

1.竿先は直線を動くように
2.竿全体はひとつの平面を描くように
3.滑らかに加速し、最後で急停止
4.前後それぞれでラインがほぼ伸びきるまで
待ってから次の振りを始める

 それぞれの理由を解説しましょう。

1.竿先は直線を動くように
 これは、糸を一本の棒にするための基本的な動きです。竿は見かけ上、円運動に近い動きとなりますが、硬い棒ではありません。曲がります。しなります。つまり、そのしなりの分、竿先は円弧を描かず、凹むわけです。これを、糸(フライライン)の荷重を乗せることで直線化する、ということ。さらにこのことは、竿を担いだり、水平より下まで振り下ろすようなオーバーアクションはできないということです。
 よく、入門書では時計で示していますが、あえてそれを言うなら、10時から2時の間、ひょっとすると、11時から1時の間くらいのショートストロークでも、行けます(注:これは竿の角度であり、腕の角度ではありません)。

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2.竿全体はひとつの平面を描くように
 これは、うっかり腰や肩を回してしまうことの防止です。せっかく竿先が直線的に動いているつもりで振っていても、水平方向に回転しては意味がありません。これ、意外に上級者でも多く、最後に遠くに投げようとした瞬間に限って距離が伸びない人の多くは、全身を使おうと向きを変えてしまったりしています。
 基本は左右の肩を結んだ線が、目標に対して正面を向いた状態を0度として、30度から45度、竿を握った側の肩が後ろに下がる感じ。これをキープです。

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3.滑らかに加速し、最後で急停止
 意外に難しいのはこれでしょうか。糸を棒にするためには、インパクトではダメで、加速しつつけなければなりません。加速に段がつけば、そこで糸は波打ちます。また、振りはじめに意気込んで「ピクッ」とでも竿を余分に動かせば、それで糸は動き出してしまい、力のない二段加速になります。あくまでも滑らかに加速、なのです。
 そして最後の急停止、ですが、ここで竿を反発させます、頭の上ではありません。顔より前です。直線的に加速してきた糸が、ここで竿の反発力を受け、さらに加速して飛んでいくわけです。

 遠くに投げる時の「シュート」はこのさらに後、糸の先端部が竿先を超えたあたりで、糸を持った側の手を離しましょう。このタイミングも独特に見えますが、加速を最大限使うと、このタイミングになります。早すぎると、糸が伸びずにU字型で着水してしまいます。

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4.前後それぞれでラインがほぼ伸びきるまで
待ってから次の振りを始める

 で、最後。これは空中で糸が伸び切る前に振り始めると、糸を伸ばす方にパワーが食われてしまい、途中まで全く加速が効かないことになります。ターンしたタイミングは、手元にも伝わりますが、最初は後ろ側も目視したほうがいいでしょう、
 そして、遠く、正確に投げたいなら、後ろでしっかり伸びるような、丁寧なバックキャストが必要になるのです。この後ろでの伸びというのが実は重要で、どんなに前への振りが完璧でも、後ろで糸が綺麗に伸びない状態では飛距離が出ないのです

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※なお、ロールキャストやロングロール、さらに両手投げの竿をメインとしたスペイキャスト関係はちょっと理屈が別になります(水面の抵抗を利用して、空中ではできない擬似的なテンションを作る)が、きちんとバックキャストしておく意味や、4つのルールのメカニズムがわかっていれば理解も早いと思います。

●ちょっとした工夫の補足

手首を固定する
 手首のスナップで投げる癖のついている人の場合、後ろに投げた時に手首を開いてしまう人がいます。こんな時は、竿尻と腕を縛って固定してしまいましょう。昔、教えている時はバンダナなどを使いましたが、今は100均にあるマジックテープ式のベルトで使えそうなものがありますね。
 ちなみに自由にコントロールできるようになってくると、手首のスナップをメインに振るとか、変則的なこともできるようになりますが、最初のうちは、回したり開いたりブレたりと不確定要素になるので、竿を持つ手の手首はできる限り使わないほうが上達は早くなります。

人差し指で引っ掛ける/親指で押し込む
 どうしても振りがイメージできない人用の短期速習型の手段です。後ろに投げる時は、竿のグリップをしている手の人差し指に意識を集中。この指で竿を引っ掛けているつもりで、後方斜め上の空中にラインを放り上げる感覚。前に振る時は親指で目標に押し込む感覚。これで小さな管理釣り場なら使える距離(10m以内)なら投げられます。また、この方法は「理屈はわかってるけど、どうにも手が動かない」という人にも向いています。

体の前で横に振る(サイドキャスト)
 これは芦沢さんの方法でもあり、『釣りキチ三平』でも使われた方法です。お腹の前で左右に振ることで、目視しやすく、自分のトラブルがわかりやすくなります。2、3、4の確認でもありますね。
 なお、竿を横に倒し、体の真横から投げる「サイドキャスト」は夏の川のトンネル状に茂った場所で釣りをするのに必須ですから、覚えておいたほうがいいですね。竿の動きで魚が怯えるようなところでも、水面スレスレなら竿の動きや飛んでいく糸で脅かしにくいので、そのあたりも知っておくといいかもしれません。

前後を逆にしてみる
 後ろに障害物が多かったり、後ろから、あるいは横からの風がメチャクチャに強いときなどでは、前後を逆にしたスタイルもあります。つまり、目標は背中側になるわけですね。本来、投げるまでのラインの繰り出しと修正のための前後の振り(フォルス・キャスト)は、前も後もない打ち返し動作なので、こういう「リバース・キャスト」は問題なくできるのが理想です。

次回(3)は、振りながら糸を伸ばす話、最後に遠くに飛ばすシュート、それからパワーアップのための技術「ダブルホール」あたりでまとめにしようと思います。

フライフィッシング入門:目次
https://note.mu/sakuma_130390/n/n85152b3ea6f3

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