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ヌルデの木~佐々木泰久さんとともに~
9月末頃の話です。
御物作りをご存じの方がいないかと、頼った先は「佐久穂町むかしたんけん館」(以下「むかたん」)。交流と親睦を図りながら、地域の歴史・文化への理解を深め、文化財の保護と活用に寄与することを目的とする佐久穂町の体験型の施設です。「もし、ご存じの方がいらっしゃったら教えてください」とお願いしていたところ、「むかたん友の会」の佐々木泰久さん(昭和14年生まれ、上畑出身)をご紹介いただきました。
丁度「むかたん」でイベントがあり、そこで活動されていた泰久さんにイベント終了後少しだけお時間を頂戴してお話を伺うことになりました。
佐々木泰久さんのお話し
「子どもの頃に親かおじいさんが作っているのを見ていた。小正月には男の人は御物。女の人は繭玉を作っていたね。御物はヌルデの木を切って作っていた。小学6年生くらいまで見た気がする。うちではその時期までは作ってなかったけど、親戚の器用な人が作るのをね」と教えてくださいました。
そもそも、ヌルデの木が分からないと言うと
「そうですか。いっぱいありますよ。ちょっと遅いかもしれないけど、実がなっている頃だから見るとすぐわかります。実のところには白い粉がついているんです。『塩』と言って、舐めるとしょっぱいんです。漆と似ているけれど、でもここいらでは漆のあんな大木はないから。」
とヌルデの木について教えてくださいました。実際に見てみたいね、と話していると
「じゃあ今から行きますか。」
と言って急遽車を出して下さいました。
ヌルデの木
向かった先は、勝見沢。佐々木さんのお住まい上畑の集落を通り、山手へどんどん坂道を登っていきます。林を抜けると、光が差し込んできて、勝見沢用水のため池に出ました。
「この実がなっているのがヌルデです。」と、枝をそばに寄せてくださいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1707095002282-vtQ666U7bZ.jpg?width=800)
実を触ってみると、粉というかヌルっとした感触がしました。ついた粉を舐めてみると、思わず「すっぱ」と声が出るくらい酸っぱく感じました。ただ、後味がお酢というよりは塩のほうが近いように感じました。
その後佐々木さんは枝を一部切り取ってくださり、その場で皮をそいで刀を作ってくださいました。
時間にして2分もかからなかったでしょうか。あっという間でした。
「皮がむきやすいんです」とおっしゃっていました。
「神棚に飾るのは15cmほどの短刀くらいの。子どもたちが腰にさすのはもっと長かったかな。それで『ヘビもムカデもどーけどーけ』ってね。うちの周りを歩いて回ったんです。小学校低学年くらいまでがやったかな。」
出来上がった刀を持たせていただくと、ぺたぺたはしないのですが、しっとりとした感触がしました。
その後勝見沢を開田されたという戦前の、親世代の貴重なお話も教えてくださいました。
このあたりのことは、『八千穂村誌 第四巻歴史編』第七章の「2開拓事業の進展」にも記載がありますので、ご興味ある方はぜひご覧になってください。
実際に見たり、体験しないと分からないことがたくさんありました。
佐々木泰久さん、本当にありがとうございました。
文 永井
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