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佐久穂町の昔の集落の暮らし 影① 〜同じ年のお二人のお話〜

佐久穂町の西側、北八ヶ岳の裾野にある上区。その一つに影という名前の集落があります。今回は、25歳で影へお嫁にきたお二人にお話をお伺いしました。
お話を伺ったのは…

<影在住>
岡部 光恵さん(86)
岡部 のぶゑさん(86)

[佐久穂町の昔の集落の暮らし 影 〜同じ年のお二人のお話〜]
は、①〜③編まであります。

お嫁に来た頃の影といえば、お蚕さま

インタビュアー(以下 イ)「お嫁に来た頃は、影はどんな様子でしたか。印象に残っていることや、風景とか違いますか。」

光恵さん(以下 み)「そりゃ、違う。昔は、お蚕飼ったり、お百姓もいろいろ作ってたけど、今はそんなに作らなくなったしね。」

のぶゑさん(以下 の)「私ら来たときは、さかり(全盛期)で。お蚕や百姓専門でね。」

「お蚕さんは、どんなお世話をするんですか。」

「桑の木があって、それを切ってきて。私たちが嫁に来たときは、自動車なんてないから、『しょいこ』(荷物を背負って運ぶための枠)で背負ったり、耕運機っていうのがあって。それせえ(耕運機まで)担いできて、載せてきて。桑くれ(蚕へのエサやり)して大変で。」

「桑を、山からとってきて、(蚕が)小さいときは(葉を)摘んできて。それから、(蚕が)大きくなったら大きい木から取ってきて、枝を取ってみんなくれただよ。」

「女の人も山に入ったんですか。」

「そうだよ。男衆おとこしょうと一緒に、同じ仕事をしたんだから。」

「桑の葉っぱはどのくらいの時期に取れるんですか。」

「今と一緒。ちょうど今頃が、2回目に飼う蚕があがる(繭になる)っくらい。」

「そう。お盆なんて、遊んでられない。うちなんて、5回くらいとったよ。晩晩秋なんていってさ。(蚕を年に5回飼ったよ。)」

「お休みなく、大変だったんですね。」

「私らの頃は、お勤めなんてないから。お蚕さまさまで。」

「それ専門にね。お百姓が専門だから。」


「お蚕さんの後は、どんなお仕事をされたんですか。」

「タバコもやった。でも、上区ではそんなに(タバコを作った人は)いないよ。」

「タバコは、年に何回とれるんですか。」

「1回。夏にとって。大変だよ。種まきから始めて、芽が出て、畑に移して。みんな植えてさ。順に大きくしてね。一枚一枚ね、とって干して。全部干して。干すだけじゃないよ。干して乾けば、家に持ってきて、そんでそれぞれにさ、1段1段区分けしてさ。いいタバコを出荷するには、手をかけなけりゃ。大変だったよ。」

「タバコは手がかかるんですね。この辺は、お花もすごかったんですよね。」

「私が来る前は、菊やなんかやっていたみたい。それに続けて、私は、ヒマワリやリンドウにカスミソウ、ヘレニウムを育てて。昼間は自分で管理してさ、主人は仕事に出ちゃうから。」

「ご主人は、お勤めとお花とされたんですね。影地区では、タバコにお花にいろいろなものをやったんですね。」


タバコ出荷する行程を丁寧に話してくださる 光恵さん(手前)
お花がお好きだったと話してくださる のぶゑさん(奥)


料理や家畜のお話

「お嫁に来た時の、ごちそうってなんですか。」

「わたしらの頃は、えらい買っても食べない(食材を沢山買って食べない)だし、自給自足で。みんな作って。」

「煮物が一番おいしかったんじゃないかな。」

「何が入っていたんですか。」

「採れたもの。季節の野菜。」

「肉なんて食べられない。肉も魚もね。昔は、魚を自転車につけて売りに来たんだよね。それをおじいさん(大舅)が木箱で買って。おじいさんが煮魚が好きだから、作ってね。ホッケがあの頃、安くて食べたの。」

「昔はホッケだっただいな。大きくてな。」

「鯉も食べましたか。」

「鯉は田に飼って食べたよ。」

「田んぼを始める時期に田んぼに鯉を入れて、稲刈りまでに捕まえて食べるんですか。」

二人「そうそう。」

「鯉は捕まえるのが大変でさ。稲を転ばせると怒られてさ。ハハハ。」


「お正月のお料理はどうされていましたか。」

「さっきの鯉をさ、(囲炉裏で)焼いて干してとって(保存して)あるからさ。」

「ウサギとかは食べましたか。」

「そうそう。ウサギとか鶏を飼って。そういう肉を食べただいね。小さいうちから飼ってね。草もみんな取ってきて。今はどこでも草がいっぱいだけど、わたしらが来た頃は、どこでもウサギやら飼ってたから草がないっくらい。」

「ウサギ飼っていてそれを、年の暮れになると殺す人が来て、やってくれるだ。暮れになると殺し屋が来るだ。ハハハ。その人は、皮を持っていくだ。」

「ウサギの他には、何か飼っていましたか。」

「ヤギ飼ってたよ。嫁にきたから、『ヤギ飼っとくれ』ってな。子どもに乳くれに。」

「ほとんどの家で飼ってたじゃないかな。」

「ヤギは、乳が出なくなると肉にして食べるんですか。」

「ヤギは食べなかった。(売りに)出しちゃうだよ。」

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お嫁に来てから、養蚕にお百姓に、お仕事はたくさんあったそうです。同じ影でも、タバコとお花と出荷していた物が違うことは、お話を伺ってとても面白かったです。
次回の「佐久穂町の昔の集落の暮らし 影 同じ年のお二人のお話②」では、生活に欠かせない井戸のお話と、お二人の子育てについてお伺いします。畑でとれた大豆をどのように活用していたのでしょうか。

▼続きはこちら
佐久穂町の昔の集落の暮らし 影②


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文 川嶋愛香


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