読書感想文『UNTAMED 「本当」のわたしに会いにいく グレンノン・ドイル 坂本あおい訳』


図書館で、新刊案内に置いてあってタイトルとブックカバーに惹かれて借りた1冊。

思ったよりも引き込まれた作品でした。
ご存じの方は多いのかもしれませんが、私はこの作者の名前は初めて聞いて、今までも自身の体験を執筆していて、これはその3冊目でした。


あらすじ

本当に簡単に。
作者は夫の不倫をきっかけに離婚を経験。
そして、同性である元サッカー選手のアビー・ワンバックと結婚して、新しい生活を送る。
この本はその過程で(もちろんそれまでの過程も踏まえて)、作者が「自分をつくる」体験を一緒に感じることができる本。

感想

「これが読んでみたい!」という出会い方ではないのに、ここまで引き込まれる本は久しぶりでした。

タイトルの「本当のわたし」という部分に惹かれたところが多かったのだけど、まさかここまで共感して読めるとは、というのがまず一番の感想。

私は離婚もしていないし、異性婚だし、仕事も違うし、なんなら国籍も違うし、違うことだらけで、感覚としてぴんとくるものか分からなかったのだけど。
結果から言うと、「みんな同じなんだなー」ということが分かった。

みんな、というのは、「女性」になるのかな。
「女性」という役割を持っているみんな、という感じ。

「自由で平等」なイメージのあるアメリカでさえ、やはり「女性だから」という檻の中に閉じ込められやすいのだから、日本女性はより共感できるのでは、と感じた。

タイトルにある「UNTAMED」は「飼いならされた」という意味。
あまりなじみのない言葉で読み始める時には分からなかったけど、読み終えたあとはなるほどなーと。
多かれ少なかれ、女性として「飼いならされて」育っている私たちが、今の時代を生きていく上で、これを読むことで安心を得られるのではないかなという感想を持ちました。

子どものころは、感じる必要があることを感じ、本能に従い、自分の想像力だけをもとに計画を立てていた。恥の意識によって飼いならされるまで、わたしは野生のままだった。過剰になるのを恐れて、自分の感情を隠し、麻痺させるまでは。自分の直観を信じずに他人の助言に従うようになるまでは。自分の想像はばかげていて、その欲はわがままだと説得されるまでは。他人のきたい、文化が要求する義務、組織における忠誠という檻にはいるまでは。
なるべき自分になるため本来の自分を葬るまで、わたしは野生のままだった。そして人に気に入られる方法を学んだときに、わたしは自分自身を失った。
~中略~
わたしの感情。
わたしの直観。
わたしの想像力。
わたしの勇気。
それらは全部、自由への鍵。それこそ、わたしたち自身だった。
問題は、勇気を出して鍵をあけられるかどうか。勇気をだして自分を解放できるかどうかだ。
あなたも、ついに檻から外にでて、自分に、仲間に、世界に言えるだろうか。わたしはここにいるよ、と。

これだけではないのだけど、「本当の」わたしに会いにいくための、ヒントとなる言葉、メッセージが散りばめられています。

きっと女性だけでなく、男性もあるんだろうけど、役割に縛られてしまい、本当の自分の欲望に気づけなくなっている人は多いと思う。
そんなときに、「本当の」自分は何がしたいのか、自分を見つめなおすときにのとても参考になる本なんじゃないかなと感じました。

私もまだまだ自分の魂の言葉は、なかなか聞こえにくくて、どうしても客観性だったり、周囲の意見だったり、いろんな条件の中での正解を見つけにいこうとしてしまうことが多いけど、自分の心の声にしっかりと耳を傾ける、そんな時間を大切に生活していきたいなと改めて感じた1冊です。

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