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【短歌】昇降機

   headache


自動ドアゆるゆる閉ぢて火の中に放られたるはひとつ生首


なんといふ耳障りなる 閂が外れる音は煉獄からの


睨めずにゐる 目の前のパスタには燻された牛が列を成してて


新築の匂ひは遠くわたしにも死亡通知を届けてくれる


しゅっとしたシルエットから溶けだしたカエルが瓶の底では鳴いた


人が人を食べる映画を観る吾ももはや全てに殺されたくて


   6月3日


花立てを洗へば墓石もつやつやと喜ぶやうだ今日といふ日を


   故障?


地下にゐる子どもをそつと起こしたいエレベーターの気持ちになつて


連れられて6階へゆく気まぐれの小旅行する しようかうき なる


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