【スローライフ】アンデスの薬草たち(Vol.1)
こんにちは、さくちゃんです!
私が住むレイメバンバは、アンデス雲霧林といって雨や霧が多く、深い森が続く自然の恵み豊かな地域です。この地方では、近代的な医療機関へのアクセスがしにくいこともあり、昔から伝統的な薬草を使って病気や怪我を治療してきました。
私が軽い頭痛や腹痛に苦しんだ時、村人たちは色んな薬草を教えてくれました。彼らは本当に物知りで、家ごとに使う植物が違ったりして、私に教えてくれながら彼ら同士でも知識を交換したり。おかげで私もお庭に薬草を植えて、不調の時にはそれらをお茶にして飲むようになりました。
今回は、ここアンデスの村で実際に使われている薬草をご紹介します。日本でも一般的なハーブもあれば、アンデス固有であまり知られていないものもありますよ。
アンデス雲霧林では一年を通して気温があまり変わりませんが、一日の気温は10度から25度と高低差があります。これは緯度が低く、標高が高い土地の特徴です。標高は、現在私が住んでいる所で2400メートルほど。今回触れる薬草は、標高1500~3000メートルくらいの所に生育するものです。
1.コカ
アンデスで最も利用されている薬草です。麻薬コカインの原料になりますが、ペルー他アンデス諸国では昔から聖なる葉として大切にされていて、ペルー国内では葉っぱの利用であれば違法ではありません。
古くから痛みを和らげる麻酔薬として利用され、高山病に起因する様々な不調を和らげる薬としてお茶にして飲むのが一般的です。ペルーでは粉末にしたものをカクテルや飲み物に混ぜたり、のど飴やクッキーにしたり、様々な商品が売られています。ちょっと緑茶のような苦味があり、大人の味です。
石灰と一緒に直接噛んでエキスを摂取すると、疲れや空腹感を忘れということで、農作業などの肉体労働をする人々の間では今も普通に使われています。疲れた時にお茶として飲んでも、疲れを癒し、気持ちがシャキッとしてきます。
育つのは標高300~1500メートル位までなので、私が住む地域には生育していませんが、車で30分ほど行った谷間で栽培されています。ペルー全土で一般的な薬草なので、こちらにお越しの際は是非試してみて頂きたいものです。
2.カモミール
日本でも一般的なカモミール。お茶として飲むと甘い香りと優しい味わいでホッとしますね。乾燥させた方が味と色合いに深みが出ますが、フレッシュな花でも香りが鮮烈で、また違った楽しみ方ができます。何よりお花がかわいらしい!
お茶として飲むと、気持ちを落ち着かせ、ゆったりリラックスできるので、夕飯後に飲んでも良いハーブですね。胃に優しく、消化促進にもなるので、なおさらもってこいです。私のホテルでは、お客様がいつでも飲めるように、お茶のテーブルを廊下に出していて、そこにいつもフレッシュなものを置いています。
炎症を抑える効果があり、例えば目にゴミが入って目が赤くなったりした時、カモミールを煮出して冷ました水で目を洗うと炎症を抑えてくれます。
3.ムーニャ
アンデスミントとも呼ばれる、ミント系の薬草です。消化を助け、胃腸の不調に効きます。高地では酸素が不足して消化がうまくできず腹痛や嘔吐をもよおしたりするので、特に高地ではご飯を食べた後にこの薬草をお茶にしたものが好んで飲まれます。
コカをはじめペルー独自の薬草を見直そうという動きから、このムーニャもハーブティーやカクテルなどに広く利用されるようになってきました。以前は首都リマであまり見かけませんでしたが、今は一般的になっています。
カモミール同様、乾燥させたものもフレッシュなものも両方利用されますが、乾燥させたものの方がより薬臭さがあります。言い換えれば「効きそう」。フレッシュなものはミントティーのような爽やかな風味です。
フレッシュなものはアンデスの山間部でしか流通していないので、見かけたら是非試してみて下さい。
4.コンゴナ
ちょっと変わった薬草のコンゴナ。これもお茶にして飲みます。
固い茎に、触れるとポロリと折れる肉厚の葉っぱが特徴。実は多肉植物の一種です。多肉植物の薬草で有名なのはアロエですが、このコンゴナにはアロエのような粘液はありません。
風邪による耳の痛みや頭痛に効き、特に子供が風邪をひいたときに飲ませます。アンデスではよく知られていますが、大量に育つものではないからか、ペルーの海岸都市部でもほとんど知られていない薬草です。
*冒頭の写真がコンゴナ。高さ30センチほどの植物です。
5.マティコ
コロナの特効薬!というデマが流れて一気にメジャーになった薬草マティコ。それもそのはず、咳やのどの痛み、風邪の症状によく効きます。
このデマが流れてから、首都リマではマティコが2枚で1ソル(30円)という法外な値段で売られるようになったそうです。リマにいたら私も一儲けできたのですが(笑)。
お茶として飲みますが、風邪の諸症状に効く薬草の常であまりおいしいものではありません。この辺りでは虫下しとしても飲みます。
6.アヘンホ
ニガヨモギの一種のアヘンホ。西洋では防虫剤としても使われるそうですが、この辺りでは生理痛からくる腹痛、頭痛などの不調にてきめんの効果がある薬草として知られています。私もお世話になっています。
お茶として飲まれますが、他のニガヨモギ同様、あまりたくさん飲んではいけないそうなので、症状がひどい時だけ飲むようにしています。
この辺りでは乾燥させたものをもぐさのようにお灸として使ったりもします。これは、20年ほど前にスペイン人のシスターで針の心得がある人がこの村に滞在していて、村人に伝授したのが始まりだそうです。もぐさがない中でアヘンホを使ったらどうか、と試行錯誤してみた結果「効く!」ということが分かったそう。面白いですね。
以上、2~6の薬草は下記のYoutubeでもご紹介しましたので、是非ご覧ください!
7.イエルバサンタ
熱さましとして使われる薬草です。メキシコにも同じ名前の植物がありますが、ペルーのイエルバサンタとは別物です。
使い方は、葉っぱをもんで汁をアグアルディエンテというサトウキビのお酒に混ぜ、この液体で体を洗います。洗うと言っても、この液体に布を浸して、体をぬぐう、と言った方がいいかもしれません。
アグアルディエンテはアルコール度数が高いものを使います。ヨーロッパでよく使われる、ハーブチンキと同じ使い方かと思います。おそらくは、以前は汁を直接肌に塗っていたのでしょうか、スペイン人到来でハーブチンキの製法が伝わり、アルコールを使うようになったと考えられます。
またリウマチの痛みにも効くそうで、その場合は葉をもんで汁を出し、葉っぱごと湿布のように患部に当てると良いそうです。
8.ボラハ
日本ではボリジという名前で知られている植物です。食用花として使われるお花は青い星型をしていて、とてもかわいらしいです。爽やかな、キュウリっぽい味わい。茎や葉っぱには細かいうぶ毛が生えていて触るとちょっと痛いので注意が必要です。
発汗作用と抗炎症作用があって熱さましに使われます。風邪の初期にお茶として飲むとのどの痛みなどに効果があります。また発熱した場合に、もんだりすりつぶして汁を出し、頭や脇など熱で熱くなっている部分に湿布のようにあてたりします。
9.ジャンテン
日本でもよく知られているオオバコのことです。日本でも雑草のように扱われていますがこちらでも同様で、畑や庭に生えると片っ端から抜いてしまい、いざ必要な時になくて困ったりします。
日本では整腸効果があるので乾燥した葉や実を煎じて飲むようですが、この辺りではあまり飲み薬としては利用されていません。捻挫や打ち身などの腫れに火であぶってからもんで湿布として張り薬にするのが一般的です。また血止めの効果もあり、同様に貼り薬にします。
10.チュパサングレ
スペイン語で血吸い草というおどろおどろしい名前が付けられていますが、日本ではユウゲショウという美しい名前で知られています。中南米原産のこの植物は、打ち身などで生じた内出血、いわゆる青タンを消す効果があると言われています。
先に記載したジャンテンと一緒に使うのが一般的で、よく揉むかすりつぶしてジャンテンと一緒に患部に当てます。私が捻挫した時に実際に使ってみると、確かに内出血していた部分の青みが5日ほどで引いていきました。不思議なものですね。
以上アンデスで実際に使われいる10種類の薬草をご紹介させて頂きました。私が知りえた全てをご紹介しきれていませんし、これからもいろんな薬草と出会うことになると思うので、シリーズ化してお伝えしていければと思います。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
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