第5回Zoomで健康 講演スライド(タバコと健康)

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タバコが健康に悪影響を及ぼすことは、もはや疑いの余地がないにも関わらず、日本ではなかなか禁煙が進んでいないのが現状です。
グラフにあるようにここ数年は喫煙率の低下率が停滞しています。

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こちらは、主要先進国における喫煙率ですが、女性は9.3%と最も低いですが、男性は26.2%と残念ながら最も高いのが現状です。

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では、喫煙率を下げるにはどうすればよいでしょうか?
こんな議論があります。
例えば喫煙は体に悪いと誰でもわかってるのに、それでもタバコを吸って心筋梗塞になった場合、それは自分のせいなのだから、治療費の自己負担額を上げよう、そうすれば喫煙率が下がるはず!という議論があります。
どうでしょうか?
ちょっとみなさん考えて見てください。
正解は無いと思いますが、個人的にはなかなか、話はそう単純ではない気がします。             
タバコをたくさん吸っても心筋梗塞にならない人もいれば、タバコを吸わないのに心筋梗塞になってしまう人もいます。
つまり、健康を規定する因子は、喫煙だけでなく、その他の生活習慣病や遺伝的な原因も関与している可能性があります。
また、例えば家族、職場の人がタバコを吸っていてる環境に置かれている場合、禁煙できないのは何も自分だけのせいとは言えません。
なので、その人が心筋梗塞になった原因がタバコだけとは断定できず、さらにもしタバコと断定できたとしても、それをやめれないのはその人だけの問題とは限らないので、タバコを吸って、心筋梗塞になった個人の医療費をあげるのは難しいと思われます。
また、一般的に貧困層や教育水準が低い人ほど喫煙率が高いと言われています。もし、タバコを吸って、心筋梗塞になった人の医療費を上げてしまうと治療を受けられない人が出てきてしまうかもしれず、社会の格差、健康の格差をより広げてしまう可能性があると思われます。

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ですので、現状、喫煙率を下げるには①地道な啓蒙活動(禁煙のサポート)、政策として②タバコの値上げ(増税)③公共空間での禁煙拡大が
とりあえず考えられます。そういえば10月(2020年)からたばこ増税に伴い、たばこの値段が上がりましたね。

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また、実は法律も改正されています。2019年7月から、すでに学校、病院、行政機関、児童福祉施設は敷地内禁煙(屋外喫煙所は設置可能)になっています。
コロナのニュースばかりだったのであまり知られていないと思いますが、それ以外の施設は、2020年4月以降は健康増進法の基準を満たした喫煙専用室以外は原則禁煙となりました。

このように、少しづつ増税と公共空間での禁煙政策が進んでいます。

では、今から地道な啓蒙活動(禁煙のアドバイス)をやっていきます。

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タバコが健康に悪影響を及ぼすことは、もはや疑いの余地はないと思います。
どれくらい悪影響かというと、実際、国際的には人命を平均約10年短縮させると言われており、日本の研究でも男性8年、女性10年の寿命短縮が見られると報告されています。

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この研究は、日本人成人の非感染性疾患,ならびに外傷による死亡に対する「予防可能な危険因子」16因子を挙げ,それらによる回避可能な死亡数を割り出した研究です。
今回のテーマであるタバコを見てみると、もし日本国民全員が禁煙したら、12.89万人の死亡を回避でき、その内訳は肺がん4.2万人、虚血性心疾患2.7万人、慢性閉塞性肺疾患1.3万人と想定されます。
見て頂いて分かるように、すべてのリスク因子の中で喫煙は最も人を死に近づける危険因子ということになります。(ちなみにコロナウイルスは2020年9月時点で1500人程度)

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喫煙が体に悪影響であるということを再確認していただいた思います。

続いて、禁煙したらどれだけ得かという話です。
先ほど、喫煙者は非喫煙者より約10年寿命が短いという話をしました。このグラフを見てください。青線が喫煙者、赤線が非喫煙者、青点線が禁煙者です。34歳までに禁煙できたら今までタバコを吸ったことがない人と同じように長生きできることがわかっています。

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もし44歳までに禁煙できたら、ずっと吸っている人と比べ9年長生きできます

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もし54歳までに禁煙できたら、ずっと吸っている人と比べ6年長生きできます。

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もし64歳までに禁煙できたら、ずっと吸っている人と比べ3年長生きできます。

このように、早くやめた方がその効果が高いですが、その一方高齢になってから禁煙してもある程度の効果があることがわかります。(高齢になってkらでも禁煙は遅くない!!)

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今まで、喫煙による悪影響、禁煙による好影響の話をしてきましたので最後に禁煙方法をお伝えしようと思います。

①禁煙開始日を宣言する
②一気にやめる
③禁煙後にやってくる離脱症状とピットフォールを理解する
④3つの変える(環境を変える、行動パターンを変える、置き換える)で禁煙を維持する
成功しなければ・・・・
⑤禁煙外来
(⑥電子タバコ、非燃焼・加燃式タバコ)

順番に説明していきます。

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禁煙は、思い立ったら始めるのではなく、上記スライドにあるようなおすすめ時期を禁煙開始日と決めてみてください。
開始日を決めたら、家族や周囲の友人・同僚に禁煙の意思と禁煙開始日を明確に伝えてもらい、彼らのサポートを得るよう強く勧めます。
特に、職場の同僚からタバコを勧められる人には、職場の同僚の理解と協力を得ることが禁煙成功のカギとなります。

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徐々に本数を減らすやり方と、一気にやめる方法を比べた研究があり、
一気にやめた方が禁煙率は高い結果になっています。
ですので、禁煙開始日を決めたら徐々に本数を減らすのではなく、一気に禁煙しましょう!

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禁煙すると、かならず離脱症状がやってきます。
離脱症状というのは、体からニコチンがなくなったことによるイライラ感、頭痛、集中力低下、不眠などの不快な症状のことですが、
この離脱症状が禁煙後、どのタイミングでどのように出現するかを事前に知っておくことは、禁煙を継続するうえでとても重要です。
それでは、順に見ていきましょう。

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数時間以内:体がニコチンを欲し、落ち着かなくなります。もう一本くらい最後に吸ってもいいのではという考えが何度もよぎります。

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2~5日:離脱症状のピークがやってきます。イライラ、集中力の低下、頭痛、不安がやってきて、たばこを吸えば症状が治まるという考えに何度も決意を崩されそうになります。

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5~7日:離脱症状は徐々に終息しますが、手先や口元の寂しさを感じ、たばこを吸った時の感覚が思い出され何となくタバコに手を伸ばしたくなります。

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7~30日:禁煙できたことに自信が持てるようになり一本くらい吸ってもまたすぐ辞められると考えるようになり、禁煙のへの意思が弱まり、また喫煙してしまうリスクが高い時期です。

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30日以降:ニコチンを欲する症状が自然に出ることは少なくなりますが、飲み会、ストレス、同僚からの誘惑をきっかけに喫煙してしまわないように注意しましょう。

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禁煙をしていると、様々な誘惑に襲われます。それに負けず、禁煙を維持するポイントが3つのかえるです。

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一つ目が環境を変えるです。
上記スライドのように禁煙のきっかけとなる環境を改善しましょう!

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2つ目が行動パターンを変えるです。
上記スライドのように、喫煙と密着している今までの生活行動パターンを変えましょう。

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3つ目が置き換えるです。
喫煙の代わりに他の行動を実行し、吸いたい気持ちをコントロールしましょう。

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今まで、自力での禁煙を成功させるための方法を述べてきましたが残念ながら自力で禁煙できる人は非常に少ないのが現状です。
これは、なにも意思が弱いということだけではなくニコチン依存というタバコの恐ろしい要因が大きいのです。自力で成功しなかったら、是非禁煙外来を受診してみてください。

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禁煙外来を保険診療で受診するには上記スライドの4つの条件が必要ですので是非checkしてみてください。

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最後に新型タバコについて少しだけ触れておきます。日本では、電子タバコは医薬品医療機器法による規制により販売されていません。そのかわり、iQOSを代表とする非燃焼・加燃式タバコが流通しています。どうやら電子タバコに関しては、紙タバコより健康被害は少ないことが示唆されています。(もちろん、電子タバコも有害で、その使用は推奨されません)なので、紙タバコを吸うくらいならまずは、電子タバコに変えて、その後禁煙を頑張るというのも選択肢の一つと考えられています。一方、iQOSを代表とする非燃焼・加燃式タバコに関しては未だ質の高い研究はなく紙タバコとくらべて健康被害がマシかどうかは、はっきりしません。

次回の日程が決まりましたら、instagramで告知しますので是非フォローしてみて下さい。これからもよろしくおねがいします!

https://www.instagram.com/oishi_naika

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