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第3回Zoomで健康 講演スライド(コレステロール値が高いと言われたら)

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まず最初に、脂質異常症(高脂血症)の定義を確認しておきます。
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が140mg/dl以上、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が40mg/dl未満、TG(いわゆる中性脂肪)が150mg/dl以上、いずれか一つあれば脂質異常症(高脂血症)の診断となります。
そして今回はこの中でもLDLコレステロール(悪玉コレステロール)に注目したいと思います。

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高コレステロール血症は健診で指摘される頻度が最も多い病気で、年々増えています。しかし、コレステロール値がいくら高くても痛くも痒くもないので、せっかく健診を受けたにも関わらず病院を受診せず放置してしまう人が多いのが現状です。

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悪玉コレステロール値が高いと、何が危険なのでしょうか?
少し前ですが、こんなニュースがありました。
北京オリンピック100M平泳ぎで北島康生選手は金メダルを獲得しましたが、その左隣にいる銀メダリストのダーレオーエン選手ですが、26歳の若さで急性心筋梗塞で亡くなったというニュースです。
この選手は悪玉コレステロールが非常に高かったと言われています。

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さらに、このグラフを見てください。
このグラフは横軸が総コレステロール値(ここからだいたい80を引いた値がLDLコレステロール値になります。)
縦軸が心筋梗塞になってしまう危険度です。 
つまり 総コレステロール160~179(LDLでいうと90~99)の人達を基準とした時、コレステロールが上昇すると何倍心筋梗塞になりやすいかを示したグラフです。
これを見ると、総コレステロール260(LDLでいうと180)以上の人は、総コレステロール160~179(LDLでいうと90~99)の人達より3.81倍も心筋梗塞になりやすいということです。

つまり、コレステロール値が高いと動脈硬化が進み、心筋梗塞を引き起こしてしまうので適切にコレステロール値を管理する必要があるのです。

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実は、このアプリを使うと自分が10年以内に心筋梗塞になる確率が計算できます。
是非、自分が心筋梗塞になる確率を計算してみて下さい!!

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ちなみに、これが私の結果です。とりあえず、一安心です・・・

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では、治療の話をしていきたいと思います。
治療の目標値は心筋梗塞になるリスクによって違います。(全員が140mg/dlを目指せば良いわけではありません)
例えば、私は幸い低リスクなので160未満が目標になります。
皆さんはどうでしょうか?

高い人は、今から食事のちょっとしたアドバイスをしますので安心してください。

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コレステロールと言ったら卵で、卵は1日1個までにしなさいとよく言いますよね?これって本当でしょうか?
まず血中コレステロール値(検査値)は食事由来と肝臓での合成由来の2つで決定します。
そして、実は、血中コレステロール(検査値)の80%は肝臓での合成由来で、食事からの摂取由来はわずか20%と言われています。
つまり、卵を食べるのを控えても、そもそも食事由来のコレステロールは20%しかないのであまりコレステロールは下がらないのです。
これを受けて、日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会で、コレステロール摂取の目標量は定めないことに決めまりました。

そこで、コレステロール値を下げるには肝臓での合成を抑制する必要があります。
そこで登場するのが、肝臓でのコレステロール合成を促進させる、アクセルの働きをする飽和脂肪酸、そしてブレーキの役割をする不飽和脂肪酸です。

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そして、ここで登場するのが血中コレステロールを下げるための重要な公式です。
S :飽和脂肪酸摂取量の変化量(%エネルギー)
P :多価不飽和脂肪酸摂取量の変化量(%エネルギー)
C :1,000 kcal あたりのコレステロール摂取量の変化量

この式から言えることは、もっとも血中コレステロールを下げるのに効率が良い方法は、”S”つまり飽和脂肪酸摂取量を下げることです。

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そのためには、自分の目の前にある食事が飽和脂肪酸なのか不飽和脂肪酸なのか見分ける必要があります。
まずは、これらの食事を飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類してみてください。

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実はとても簡単で、冷蔵庫に入れて固まる油は飽和脂肪酸、固まらない油は不飽和脂肪酸です。
理想的にはSを下げて、Pを上げて、Cを下げればよいのですが食生活を変えるのは、非常に難しいことです。
例えば、なにか一つだけやるなら普段の食生活は変えないでポテトチップス、ケーキ、チョコレートなどの間食だけをやめるとか、(一番効率の良いSを減らす)もう少し頑張るなら、1週間のうちの数食を肉料理から魚料理に変えるだけでコレステロールは下がります。(Sを減らしてPを増やす)

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私の経験の話ですが、食事頑張っているのですがコレステロール値が下がらない人にはこのようなパターンがある気がします。

①卵だけ控えている(Cだけ下げるように頑張っているが、それは効率が悪い)
②食事の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸両方を控えてしまっている(野菜中心)うえに、間食でスナック菓子やケーキなどを食べている(食事を節制しているご褒美に・・・)(食事でS、Pも減らして、間食でSが増えている。)このような理由で、野菜生活の食事をしているにも関わらずコレステロールが高い人を見かけます
③不飽和脂肪酸(特に魚)をたくさん食べることだけに集中している (Pだけ増やしており、やはりSを減らす必要がある)
④家族性高コレステロール血症

④に関しては重要なので、最後に少し取り上げます。

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さて、ここで注意してほしいことがあります。
日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会で、コレステロール摂取の目標量は定めないことになり、当時、卵は1日1個までに制限すべきだというアドバイスは正しくないといった内容の記事がたくさんでました。
このような記事を見て、卵好きな人は卵をたくさん食べても大丈夫だと思ってしまうでしょう。本当にたくさん食べて大丈夫でしょうか?

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しかし注意が必要なのは、これは卵をたくさん食べても大丈夫ということを意味していません。
食事中のコレステロールの量が血中コレステロール値を反映しないということと、コレステロールを多く含む食事をしても健康に悪影響がないということは全くの別問題ということです。
卵をたくさんとっても、確かにコレステロール値はあまり上がらないかもしれませんが、その代わり糖尿病だったり、心不全になったりするリスクが増えると言われています。
なので、やっぱり卵は1日1個までが体には良いと考えられています。

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実は、ダーレオーエン選手は家族性高コレステロール血症という、遺伝的にコレステロールが高くなる病気であったと言われています。
この病気は、生まれながらにしてコレステロールが高い病気なので、この方のように若くして心筋梗塞になってしまう恐ろしい病気です。
また、食生活が悪くてコレステロール値が高いわけではないので基本的には早期発見早期薬物治療をする必要があります。
しかも、遺伝疾患としては非常に頻度が高く、日本人の200~500人に一人の割合でこの病気であると言われています。
ですので、まだ病院を受診していない隠れた家族性高コレステロール血症の方が、非常に多いと言われています。

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これが家族性高コレステロール血症の診断基準ですが②に注目すると、医者じゃなくても家族性高コレステロール血症を疑うことができます。

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このような所見がもし自分にあったり、知り合いにあったら是非病院受診を進めてください。
皆で、病気を発見しましょう。

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次回の日程が決まりましたら、instagramで告知しますので是非フォローしてみて下さい。

https://www.instagram.com/oishi_naika

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