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第9回Zoomで健康 講演スライド(トンデモ医療に騙されないために)


今回のテーマはトンデモ医療(ニセ医療)に騙されないためにです。
このテーマは是非、今健康な人にこそ聞いて欲しいです。
その理由は、2つ
①健康な時には、だれがそんな怪しい治療法に引っかかるのか!と思っていても、例えばいざ自分が、がんと告知されたばかりで、心が弱り切った状態の時に勧誘されたら・・・ どうでしょう?
→なので、健康なうちに騙されないための勉強をしておきたい
②例えば、知人、家族ががんと告知されたら、良かれと思って(もちろん多くの人に悪意はない)がんに効きそうな食事、飲み物、温泉、商品を勧める人が多い。勧められた本人はそのようなものに効果が無いと分かっていていても、無下に否定することもできずストレスに感じるし、効果があるかもと勘違いしてしまい病院での本当に有効な治療法を受けなくなり気付いた時には手遅れになってしまう

なので、今日一緒に勉強していきましょう!

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インターネットが普及し、健康や医療についての情報収集手段の80%以上がインターネットとなっています。
インターネットの普及は、手軽に大量の情報を入手できるようになり私たちの生活をとても豊かにしました。
しかし、懸念点もあります。
その1つが、インターネット情報の信憑性です。

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こんな興味深い研究論論文があります。
GoogleとYahoo!でそれぞれ5種類のがんを検索し、上位20のウェブサイトを評価したところ、信頼できるサイトは1割しかないという結果でした。

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確かに、自分も少し調べただけで、血液クレンジング、ビタミンサプリの内服やビタミン注射、酵素風呂でがんを克服とか、コーヒー浣腸でダイエット、肛門日光浴で不眠解消などなどトンデモ医療がたくさん出てきました。
最近だと、血液クレンジングはちょっとした社会問題になりましたよね。
あと、SNSを利用している人は気がついていると思うのですが、SNSのアルゴリズムとして今までみた動画やサイトから好みが判断され、好みに合う情報が優先的に表示されます。
そのため、一度トンデモ医療を見ると、それに関する情報やトンデモ医療をすすめている人の情報にどんどんさらされる危険があります。

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インターネットは、デマ情報が多いというのは何となく予想できたと思いますが、実は本に関しても、本に書いてあるから正しいと信じるのは危険です。2019年9月12日時点で、とある人がAmazonのがんカテゴリーランキングトップ12位に入る本をすべて読んで確認したところ科学的に正確な内容で書かれた本はわずか3冊だけだったと報告しています。

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ですので、インターネットで調べるにしても、本で調べるにしてもその情報が本当かどうか見分ける必要があります。
もちろん、非常に重要な事は自分の主治医に確認することが一番確実ですが、ちょっとしたことは毎回は聞けないかもしれませんし、主治医がいない人のために、情報の信憑性を見極める6つのポイントを上げたいと思います。
①保険が利かない高額な治療法は危険
②動物実験で効果あり!の情報に注意
③~に100%効く!と断定は怪しい
④個人の経験(体験談)による効果を強調している治療法は危険
⑤【免疫力UP】という言葉は怪しい
⑥予防と治療がごちゃ混ぜになっている

これから詳しく解説していきます。

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これは、とあるクリニックのホームページに載っていたがん治療の料金表です。
6回受けると1815000円・・・
これだけ高いので当然効くのでしょうか?

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ここでまず、治療法を整理していきます。
治療法は、大きく2つ未承認治療と標準治療に分けられます。
この違いについて、もう少し詳しく見ていきます。

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①まず、ある病気に効果がありそうな成分を探します。
例えば10000万個候補となる薬(成分)があったとします。
②次に、その候補をマウスなどに投与する動物実験が行われ、効果があるか、副作用はどうかを調べます。
効果があって、副作用も許容範囲である薬は10000個中29個程度となります。
③次に、その候補の薬を人間に投与して効果や副作用を確認します。人間に対する実験はPhase Ⅰ~Ⅲと3段階にわかれておりこれを全てクリアした薬が晴れて標準薬と認定されます。
PhaseⅠ~Ⅲをもう少し詳しく見ていきます。

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PhaseⅠ→極少数の患者に試して、人間に毒性が無いかどうか調べる。
29個中14個が合格します。
PhaseⅡ→少人数に試して効果があるかどうかを調べる
14個中3個が合格します。
PhaseⅢ→現時点で一番有効な治療薬と比較して優れているかどうか調べる
3個中1個が合格します。

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つまり、標準治療薬に認定されるのはわずか0.01%しかありません。

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よって標準治療はスーパーエリートの治療法なのです!
なので、この素晴らしい治療法は国民全員が受けられるべきであるので保険が適応され、私たちが支払う金額低く抑えられているのです。
つまり、本当は高価な薬だが保険が適応されるため安くみえるのです。

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標準治療以外はいずれも、効果や安全性が保障されていない薬となるわけですが・・・

未承認治療は3つ(先進医療、治験中、代替療法)にわけられます。
先進医療とは、海外や国内の基礎研究、臨床研究で効果がある程度認められているものの、国が承認して保険適用にするほど信頼性の高いデータが得られていない治療法
まだ結果が出ていない治験中の薬
良い結果が得られなかった代替療法

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代替療法は、例えば、血液クレンジング、ビタミンC注射、免疫細胞療法などのように医師が処方(提供)する自由治療、とサプリ、ヨガ、食物療法など医師以外も提供する民間療法に分けられます。
特に自由診療というのは、厳しい試験をクリアできなかった治療であり、そのため保険適応にならず、高価な治療となっています。

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このグラフはタテ軸が生存率、ヨコ軸が病気と診断されてからの期間です。
見て分かるように標準治療薬の方が代替治療より長生きできることが一目瞭然です。

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ここまでをまとめると、
標準治療=最善治療(スーパーエリート)≠並みの治療法(標準という言葉から並みの治療と勘違いする方がいる)
標準治療=保険適応されるので安価
自由診療=エリートになれなかった治療=保険適応されないので高価

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ということで、高い治療法の方が利くかもしれないと、もしかしたら思っていたかもしれませんが、今までの話から
①保険が利かない高額な治療法に注意 は理解していただいたと思います。

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続いて②についてです。
聞いたことがある人がいるかもしれませんが例えばアガリスク製品のホームページにはがん抑制効果が謳われており、その根拠として動物実験での効果をあげています。

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先ほどの図に戻りますと、
動物実験をクリアしても、その後標準治療に認定される確率は残念ながら約3.4%です。

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ということで、動物実験で効果ありと言われても、人間に効くはわからない、むしろ効かない確率の方が圧倒的に高いのです。

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続いて③についてです。

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ノーベル賞を受賞した薬剤で、おそらく皆さんの記憶に残っているオプジーボについてちょっと見ていきたいと思います。
このグラフは縦軸は生存率、横軸は月を表しています。
青がノーベル賞を受賞した本庶佑先生が開発した抗がん剤 オプジーボ
緑がそれまでの標準治療薬
肺がん患者の1年生存率を24→42%に引き上げるという素晴らしい結果が認められました
しかし、逆に言うとノーベル賞を受賞する程のエリート中のエリートの薬剤ですら、58%の肺がん患者さんに効果が乏しく命を落としているということになります。
つまり、ノーベル賞の薬ですらこういう結果なのだから、代替医療である例えばビタミン剤が、キノコが、温泉療法が、がんに対して100%効くはずがありません。

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ということで〇〇に100%効く!と断定は怪しいというよりウソの可能性が非常に高いので要注意です。

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続いて④についてです。

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このような感想を時々見かけます。
この感想をみて、どう思いますか?

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まず余命2年ってどういう意味でしょうか?
2年前後で多くの人が亡くなるという意味でしょうか?

余命2年とは、半分の患者さんがなくなる期間を指します。
このグラフを見てください。
これは大腸がんの例ですが、縦軸が生存率が横軸が治療開始からの期間です。治療開始から2年のところで生存率が50%となっています。つまり余命2年です。さらに、治療開始から5年のところを見ると、生存率は20%となっています。
要するに、余命2年と100人が宣告されたら50人は2年で亡くなりますが、20人は5年たっても生存しています。
つまり、余命2年の人が5年生きることは、特段奇跡的な状況ではないのです。特性ビタミン剤を打ったから5年生きれたとは言えないということです。

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また、オプジーボの研究に登場していただきます。
再確認ですけど
このグラフは縦軸は生存率、横軸は月を表しています。
青がノーベル賞を受賞した本庶佑先生が開発した抗がん剤 オプジーボ
緑がそれまでの標準治療薬
肺がん患者の1年生存率を24→42%に引き上げるという素晴らしい結果が認められました

ここで3か月時点に注目してみましょう。
例えば、100人治療しているとして、
オプジーボは3か月の時点で90人生きていて10人亡くなっています。
ここで、オプジーボ使用したけど残念ながらなくなってしまった10人のうちの家族の一人が、オプジーボは全然効かない詐欺の薬だと主張したとします。
確かに、この人にとっては効かなかったかもしれませんが、実際は100人中90人に効くとても良い薬です。
このように、私は効かなったという個人的な感想、薬全体の評価を言い当てていないのです。
逆に、実際は治療成績が非常に悪い治療法(例えばあやしいキノコ)をたべて、たまたま1年生きていて、とても素晴らしい治療方法だ!と主張しても、やはりその治療全体の評価を言い当てていません。

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このように、個人の経験(体験談)による効果だけを強調している治療法は危険というのが分かっていただけたと思います。

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次は⑤についてです。

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これは一言。
クリニックの自由診療で免疫細胞療法を高額で受けられことがあります。
今まで、説明してきたように自由診療ということは残念ながら標準治療=エリート治療となれなかった治療方法です。
しかし、免疫細胞療法をオプジーボに代表する標準治療薬の抗がん剤と同列で説明がなされていることを見かけます。
オプジーボを代表とする抗がん剤は免疫細胞療法とは全く違います。

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最後に⑥についてです。

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例えば、がんの予防に科学的根拠のある食べ物がこのようにあります。
しかし、これはあくまでも予防効果です。既に、がんになってしまった人がいくら魚を食べてもがんは治りません。
ネットを見ていると、予防効果と治療効果がごちゃ混ぜになっている記述があるので気をつけてください。
ちなみに、現時点でがんを治す食べ物は残念ながら存在しません。

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以上6っのポイントでした。

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そして、最後に標準治療が残念ながら効かない。
そのような時に、代替療法に頼りたくなってしまう気持ちはよくわかります。
そこで、代替医療に頼る前に治験中の薬に注目してください。
この中には、将来標準治療となりえる薬が含まれている可能性があります。特にPhaseⅢでは。
ご自身の病気に対して、どういう治験がなされていて自分はその治験に参加できるか主治医に確認してみると良いでしょう。

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