消え去りながら訪れつづけ

画像1 あのときのあの水面はもうどこにもない
画像2 あのときのあの空気はもうどこにもない
画像3 あの椅子の感触も湿り気も光沢ももうどこにもない 今はもう別の光を跳ね返しているだろう
画像4 あの屋根の上の月はもう別の月の光に
画像5 地平の夜明けの色は別の夜明けに
画像6 それでも人影に自らの影を重ねて あの頃の川に漕ぎ出していこう
画像7 けれどももう自分は もういない この中にはもう行けない
画像8 遠くの時から寂しく眺めている 行けない場所を 場所を
画像9 沢山の人と沢山の船と沢山の水が流れて行ったこの景色
画像10 新しい時と新しい人が揺れる水面を賑わしているだろうこのときに
画像11 行けない場所は心の中に
画像12 心の中に留め置くばかり
画像13 もうないものはとわにあるのかもしれない 永遠にあるというものはすでにないものであればこそ永遠にあるものなのだ
画像14 光るのは建物であり 日であり 神であり あるいは気の迷いであり
画像15 それぞれの思いのまま景色の中を行く
画像16 アフリカで生まれた者たちの末裔なら この景色を経てきたのだろうねと自らに問えば
画像17 血のうちで戸惑う幽かな気配 そんな昔のことを覚えていてたまるかと
画像18 血の声に逆らって目から滲む水は誰
画像19 もう行けない場所を眺めているこの場所ももう行けない場所になっていくはず
画像20 振り向き後ろ髪引かれひかれながらも絡みつく今の空気が今の呼吸を促す
画像21 安らぎを懐かしみながら肺は容赦なく新しい空気を取り込む
画像22 佇む優しさに涙ぐみながら
画像23 いくつものいくつもの数え切れないほどの景色を越えて行くともよ
画像24 越え続けていくともよ
画像25 疲れ果てた時かたわらに来てくれる景色はきっとある
画像26 やすらかにゆるやかにたしかに 力を取り戻させてくれる景色が
画像27 だからこそ立ち止まらない 変わり続ける景色を行き続ける越え続ける
画像28 かつて本当に自分はここに居たのだと思えることだけがここに居た証
画像29 あのときのあの空気は感覚の中にしかない
画像30 気が付けばどの景色もどの景色も今の目の前に どのときのどの場所も今の空気に溶けて

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