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さかさ近況㉕

 なんかめちゃめちゃ告知が多いが、たまたま時期がかぶっただけである。6月限定売れっ子作家。

『スピン/spin 第4号』に載るよ

 おかげさまで、河出さんの熱いが値段が異常(に安い)な文芸誌スピンに載せてもらう。

巻頭を飾るのは気鋭・坂崎かおるさんの短篇「ニューヨークの魔女」。舞台は1890年代のアメリカ。世界で初めての電気椅子ショー「魔女の電気椅子」とは果たして……。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000482.000012754.html

 と、ご紹介いただいた通り、私の得意とする歴史物の魔女SF、サイエンスというよりスペキュラティブな手触りの短編。主人公は男性だけれども、百合といえば百合。
 書き上げたのはもう半年近く前なのだが、これはかなり手応えのある短編で、スピンの編集長にも一発OKをもらえた(その前にボツの山はあるわけだが…)。もし、1万字の短編大好き宇宙人が地球に攻めてきて、運悪く私が交渉役に選ばれ、「お前の書いたもんでいっちゃんオモロイもんよこせ、さもなきゃ地球を滅ぼす」と言われたら、とりあえずこれを出す。地球は滅ぶ。

 6/27ごろ発売。スピンはとにかくコンセプトも企画も面白い上にめちゃめちゃな値段なので、とりあえず買って読んでね!売り切れも早いよ!

幻想と怪奇SSコンに選ばれたよ

 おかげさまで幻想と怪奇ショートショートコンテストにて、「僕のタイプライター」を優秀作に選んでいただいた。
 『チャイニーズ・タイプライター』があまりにも面白すぎて、勢いで書いた2作のうちのひとつ。実在した(とされる)幻のシェフィールドのチャイニーズタイプライターをめぐるやや怪奇強めの掌編。
 実は私の確認が甘くて、一人称のブレがあるのと、中国語まわりにちょっと誤りがありそうなのだけれども、そこらへんは薄目で見ていただければ…。いつか自分の本に載せる機会があれば修正します。
 こちらは6/13発売の『幻想と怪奇ショートショート・カーニヴァル』(新紀元社)に掲載。すげえ執筆陣で、そしておもろいので、とにかく読んだ方がいいよ!

 本筋から外れるが、ショートショートの定義は最近は8000字ぐらいではないかという話が載ってて、それを短編に含めて考えてる自分からすると、そっかあ…という感じがした

最近読んだもの、見たもの

『君のクイズ』小川哲(朝日新聞出版)

 予想にたがわず面白かった。クイズをこんなにスリリングなミステリ仕立てにすることができるんですねえ。
 誰かが書いていたけど、この物語の構造に唸らされるところは、「回想シーン」そのものが「本編シーン」に組み込まれていることで、無駄がないというところだと思う。単純に読んでいてストレスがない。そして、この「回想」という行為自体が本編の結末に関わってくるので、おお、そうかぁ、こういう書き方もあるのかあと、勉強にもなった。

「でねぼら」関元聡

 このお題をこう消化できるのかと感嘆した。食すと不死になると噂される「デネボラ」をめぐる釣り人の一幕。一万字に相応しい場面と時間の限定で、するすると読める。さすがである。
 これは瑕疵ではないが、オチの部分を、こういったコンテストではどう評価するのかが気になる。あまり新奇とは言えないが、そこに至るまでの手順と構成を私なら◎をつけるが、オチが弱い、と思う審査員もいるかもしれない。そこらへんがコンテスト系の難しいところだ。

「とにかく大きい洪庵先生」畠山丑雄

 anon pressさんはなかなかあまり読めていないのだが、畠山さんだ、と思って読んだらたいそう面白かった。個人的な趣味にもぴったり合った。
 福沢諭吉が緒方洪庵を述懐する、という体裁なので、『福翁自伝』のパスティーシュなのかと思いきや、そういうものをばばっと超えた冷製パスタから始まるのでおったまげた。GoogleもWikipediaも出てくるので、時間軸がびろんと伸びている感覚。でも読み心地がせわしない感じはしない。老人の自分語りってこんな感じだよなと思う。炉端でじいちゃんの昔語りを聞いてる気分になる。そこには正確な時系列も歴史的事実もないし、あったら語りの魅力は失われる。
 洪庵先生は実際は巨人みたいにおっきかったみたいな話なのだけど、なんというか、「私」の恥ずかしさ、みたいなものが感じられる。けっこう「現代的」な言い訳が多い。PC意識だとか、DVとか、時代に対する言い訳みたいな感じ。そのあたりが近代化していく日本の様相との対になっている感じもして、二重の構造のように見えた。そして、「私」の先生への愛が大きい。とにかく大きい。

さなコン書いたよ

 今年はさなコンを堂々と出してみた。
 お題はなかなか難しく、本命は別の作品だったのだが、こちらは書き終わらず、途中で思いついて書いた方が先に仕上がった。お題の処理としては悪くなく、構成も破綻はないと思うが、ややインパクトに欠ける、とは自分でも感じている。ちなみにビフというのは、あれのあれです。なぜあれが出てくるかは最後まで読むとわかる。

短篇公募のススメ

 なんか最近お知らせが多いので、「こいつ書きすぎだろ...」と思われるかもしれない。6月は本当にたまたまお知らせが集中しているだけなので、実際に書いている時期はバラバラだ…と書こうとしたら、そういえば今回出る作品はぜんぶ年末年始につくったものばかりだった。あのときはよく書いていた。今はさぼりぎみ。
 いずれにせよ、別に私は筆が速い方ではないと思う。一時間にせいぜい2000字程度のペースでいつも書いている。ただ、前にも書いたが、「お話を畳む」ということはいつも意識している。これは本当にいい訓練になる。書き始められるが終えることができない、という人はまあまあいるように思う。曲がりなりにもいくつも話を終結させることができれば、時間がない中で書き終わらせる、ということにもつながるので、結果的に、筆は速くないが、量産はできる状態になっているのかもしれない。
 もちろん、この方法は短篇しかできない。でも、短篇のスケールを体感しておくのはよい気がする。円城塔先生は、「16000の体感」と書いていたが、そのスケールを知っておくのはいい。私がいま書きやすいのは12000ぐらいなのだが(10000では少ない)、長編というのはそれを何度も繰り返すということなんだろう。
 なので、短篇(1万字台)の公募がもっと増えるといいと思う(最近多くなってきた気がする)。出版社的には、長編の方が刊行にすぐつながるという事情はあろうが、長編は書くのも時間がかかるし、落ちたときのショックが半端ない(と思う)。書いている間は他のも書けないし…。その点、短篇は、短期間に何度も挑戦できるし、複数にも出せる。落ちても「まぁしょうがねえナア!」の精神でやり直せばよい。私は公募は名刺交換みたいなもんだと思っているフシがあるので、運よく選んでもらえると、いろいろな編集さんに名前を覚えてもらえるよい機会にもなる。
 ただ、ここら辺は個人差が大きいと思うので万人受けはしない感じがする。長いのが得意というか、それしか書けない、という人もいるだろうし、人生観みたいな話にもなってくる。まあ、しょせんは小説の話だ。追い込まない程度に、おのおのがんばろう。

 以上であるが、今月はまだお知らせがある。刮目して待たれよ。