第9回六枚道場*後半一言感想

後半の一言感想です。


16.師たち

「冬師/おとがい・喉」が特に好きでした。私は田村隆一が好きで、詩は肉体が感じられるものが好みです。最後の「私は鬱血する」がいいですね。

17.ひかりひかるひかれ

焦燥感と閉塞感が、うまく祖父の死と絡んでいたと思います。ただ全く個人的な話なんですが、ちょっと自分の経験とうまくつながらない部分があって、そこがうまく消化できませんでした。

18.六枚道場って、群像とかすばるみたいなやつ?

個人的に好みの文体でした。それこそ群像やすばるに載っていそうな感じがしました。小説家が謗られる話はなんとなく好きです。

19.彼女のあそこが眩しくて

メタ的な話で作品を完結させるのは六枚道場ならではという感じがしました。ちょっと清水義範的な。すごく真面目に書いたら一大長編ができそうです。

20.代打生石背番号19

野球はあまりわからないのですが思わず引き込まれました。でもときどき、こういう人っていますよね。

21.たべに

読んでいて胸が締め付けられる作品でした。子どもの世界の閉じていく感じが、「たべに」という言葉と共に鮮やかに描かれていたと思います。

22.乙姫情話

幻想的で読みごたえがありました。乙姫と人魚を紐づける話はどこかで読んだような気がするのですが、目の話とどうつながっていくのか、もう少し続きが読みたくなりました。

23.筆を失くした記述者たち

テッド・チャンに出てきそうな面白い設定でした。教授の行方も、「私」の行く先も気になりますね。

24.殺虫灯

少し現実とずれた世界観がよかったです。好みの問題ですが、もう少し不条理めいていてもよかったと思いました。


25.マックの女子高生

私は今回これを書きました。マクドナルド渋谷東口店は存在しません。念のため。

26.角と目

小川洋子が好きなのですが、彼女の作品を思い出しました。穏やかな雰囲気と、晴香の言葉と一角獣の描写が読み手の認識のずれをもたらすようで、心地よかったです。

27.墓場軌道

タイトルからどんな話かと想像していたのですが、全く違う内容でした。今回の中では一番SFっぽかったでしょうか。「墓守」の守るものが序盤と終盤で変わる流れがよかったです。

28.シャスターデイジーの花言葉

読んでいると、思春期真っ只中の青年の心の裡を聞いているようでした。最後の「そうしてまた他人のせいにする」が、この文体に効いてますね。


前半と後半は全然雰囲気が違うな、と感じました。本当に皆さんのアイデアと書く力が強くて、ちょっと自信を失いつつ、がんばっていきたいです。