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藝大モーニングコンサート

昨年ほぼ休止されていた藝大モーニングコンサート。

その第一回が先日あった。
緊急事態宣言のまっただ中。
11日の喪明けと前後して、藝大のお隣、国立博物館では、大人気の鳥獣戯画展を含む展示の再開を予定していたものの、急遽臨時休館の継続を決定。
おそらくそれに呼応してだろう、藝大美術館も休館を延長。

当然、延長期間中のコンサートもキャンセル……と思いきや。

休止の連絡はなかった。
Webを確認しても、その手の表示はない。
恐る恐る行ってみると、案内の人達が小雨の中、キャンパスに立って人々を誘導している。

学生達に演奏の機会を。
そんな、静かな、凜とした学校の姿勢を感じた。
教育機関の一環として、演奏家を育てる一環として、
人前での演奏は欠かせないだろう。
やるべき対策をきちんととって、演奏会をやる。

ちなみに、小さな奏楽堂だけれど、一席ごとに間をあけているので定員は通常の半分。満席だったのではないだろうか。

演奏は四年生。今回はトロンボーンとピアノ。
藝大フィルハーも二アという藝大のスタッフからなるプロの演奏集団と共に協奏曲を弾く。
その経験。そして、人々の前で弾く経験。
どちらも、経験しなければ身につかない、
演奏者として欠かせないプロセスなのだろう。

なにしろ、コンクールで連戦錬磨のパフォーマーとはいっても、
仕草そのものはまだまだ素人。
お辞儀の仕方一つにしても、よくいえば初々しい。
深々と頭を下げたあと、ついうっかり、これでいいですか?っていう顔で、
指揮者を見ちゃったりもするのだ、4年生。

聴きたいという人がいて、聴いてもらいたいという人がいて、
初めてパフォーミングアートが成り立つんだなぁと、
感慨深いコンサートだった。

上野のお山の片隅で、静かに演奏会を続けている奏楽堂。

こういう時だからこそ、アートの力、演奏のパワーを聴衆に届けてほしいとも思うけれど、自分達に人に喜びを与える力があるんだ、ということを
学生さんたちが実感してくれるといいなぁと思ったりした演奏会でした。


得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)