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バランシンが出演したこともあるジェローム・ロビンズの絶品コメディ・バレエ『ザ・コンサート(音楽会)』-----音楽会あるある、人生あるある、バランシンあるある、ロビンズ流の泣き笑い

 喜劇王チャーリー・チャップリンいわく、〈人を泣かせるより、笑わせるほうが難しい〉。しかしことバレエと笑いの相性は、けっして悪くない。数からいえば泣かせるバレエのほうが多いとはいえ、20世紀半ば以降、観客を笑わせずにはおかない名作が断続的に生み出されている。
 フレデリック・アシュトンの『シンデレラ』、ジョン・クランコの『じゃじゃ馬慣らし』、イリ・キリアンの『シンフォニー・イン・D』は、日本の観客にもお馴染みだろう。そしてメイド・イン・アメリカの雄といえば、ジェローム・ロビンズ(1918〜1998)の『ザ・コンサート(音楽会)』。1956年3月にニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)で初演され、2022年9月にスターダンサーズ・バレエ団が日本のバレエ団としては初めて上演する不朽のコメディ・バレエである。
 この作品の生み出す笑いが、なんともロビンズらしい。上記の3作品が「アハハ」「クスクス」「フフフ」といった、おおむね屈託のない笑いを引き出すのに対し、『ザ・コンサート(音楽会)』の笑いには「ニヤッ」「フッ」「ハハーン」というような、少々、はすに構えた感覚がまじる。人間の性(さが)を少しばかりシニカルに見つめる、ロビンズ特有の視線を感じさせるのだ。

Table of Contents
ロビンズ流選曲のツボは、バランシンとはかなり違う
偉大なる先達へのオマージュ
アイリーン・シャラフの衣装の、愛すべき元ネタたち
バランシンが『ザ・コンサート』にノークレジットで出演した〈事件簿〉
ロビンズがタナキル・ルクレアに捧げた最後の作品

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