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『放蕩息子』はバランシンの駆け出し時代を映し出す異色作

 2021年2月22日、ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)は、コロナ禍のために中止せざるを得なかった定例の冬季シーズンにかわって、〈Digital Season〉を開幕した。「Three Sides of Balanchine」と銘打った3週間の会期中、週替わりでジョージ・バランシン作品の未公開だった公演映像を配信し、前後して現・元団員、指導者他が各作品について話すプログラムや、初心者向けワークショップ、中・上級者向けレッスンなどをオンラインで併催する、盛り沢山の内容である。

 第1週のテーマは『放蕩息子』。1929年5月21日、セルゲイ・ディアギレフに率いられたバレエ・リュスがパリのサラ・ベルナール劇場で初演した作品だ。その3ヶ月後の8月29日、夏期休暇中だったディアギレフは持病の糖尿病により57年の生涯に幕を閉じ、支柱を失ったバレエ・リュスが再召集されることはなかった。『放蕩息子』は、バランシンが1924年に加入したバレエ・リュスで振り付けた最後の作品となった。

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