見出し画像

八百屋の「販売」進化論

前回仕入論を書いてから大分経ってしまいましたが、
今回は仕入と優劣つけ難いほど大切な「販売論」を"進化論"形式で書かせていただきます。

八百屋は小売の基礎とも言えるくらいのシンプルな構造なので、
小売を"やってる人""やろうとしてる人"には多少は参考になると思われます。というか、そうなるように頑張って書いてみます。

先日書いた『仕入論』はスタンスの話でしたが、
日々実践の際にスタンスの体現を意識し目指しましょうというものでした。
一方、『販売論』に関してはスタンスというよりは、「商売としてうまくいっている」という状態をどういう環境で体現したいのか?をつらつらと書いてみます。
そして初めに言うと、これは自分一人では到底辿りつけなかった進化論なので(巻き込んだ方々にたくさんのご迷惑かけましたが)組織でやってきて本当によかったです。社員やアルバイト(弊社呼称、"デリバー")の皆にありがとうとここで伝えます。面と向かっても言います。

はい、本題に入る前にもう少しお付き合いください。

青果流通小売業において以下の3つは夢物語なのか?
①「高報酬」≒個が他産業でも評価される能力が付いている
②「労働環境完全ホワイト」≒上場IT企業並みの労務環境
③「高いやりがい」≒仕事で社会価値を果たしている事を常々感じられる

経験上、人気企業が持ち合わせているこの3種の神器を青果流通小売業において達成させるのは、ムリゲーと言われてきています。笑
搾取ではなくて本気で創業者は思っているから仕方ないところがあるのですが、「①と②は後から付いてくる!③があるから頑張れるでしょ!」で走りまくるのが王道の傾向となっております。笑
ただ、これが続くのはどんなに長くてもせいぜい4年程度。組織が肥大すれば尚更瓦解は早いのです。(経験者は語ります)

これから書きたいのは「販売進化論」です。
しかも、この2年間で進化してきた進化論です。
「個人事業で稼ぐ!」が目標であれば、上記は関係のない話です。
しかしながら、弊社株式会社アグリゲートは、この3つの神器を兼ね備え、多くのポテンシャルに溢れる若者たちが目指したい人気業界に食農業界をしたいと考えておりますので、これから書く販売進化論が非常に重要だったわけです。さて前置きが長くなりましたが、本題へ。


1.「仕入力」と「販売力」を、徹底的に繋げる

すごい八百屋(青果店)ってのは実は結構あります。
ただ、そのほとんどがすごい仕入を出来る人が販売まで全部やっている、といういうパターンです。

もちろん、これは全く否定しないし、これがやれる人は八百屋でなくても結構いろんな仕事で成功しやすいと思います。だから、一旦これがやれるようになるというのを目指すのは間違いではありません。
個人事業主で、八百屋としてしっかりと稼いでる人たちは、仕入も販売も自分でやっている人が多いように思います。こんな人の思考回路は以下のような感じです。

❶その日の売上目標、利益目標は頭に置きながらも、仕入次第で日の上振れ下振れは許容する(ズレは月で調整していく→基本上振れするつもり)
❷「いくらで販売する?何個販売できる?」と「販売条件」と目の前の「仕入可能条件」を行き来しながら、仕入の意思決定していく
❸お客さんが楽しめる商品(利益率は一定無視)、ちゃんと利益(粗利)を頂く商品を決めて、売り場が毎日同じになってないか飽きないかを考えている
❹その日のうちに売り切りたいものは、絶対にその日売り切る(まで帰らない)

上記を自分の決めた営業日で毎日実行する。
そうすれば、冗談抜きで売上でなく月収で100万円は行かせられると思います。(オーナー+アルバイトメンバー2-3名でやっている場合)
弊社の経験的なPLから試算するとそうなります。断言できます。
が、毎日市場に行って、閉店まで見守る、要は選手兼監督です。それ相応の時間をかける覚悟が必要です。

実は、私も販売において結果を圧倒的に出すという事はこういう事なんだな。と思っていた時がありました。そして、自分もリミッターを外すとこれは出来てしまいます。ただ、実は現ブランドではやった事がありませんでした。掲げたミッションが「未来においしいをつなぐ、インフラの創造」のように壮大な(≒夢の現実の乖離がハンパじゃない笑)事を掲げていたため、構造作りばかりが気になって、離れるのが早すぎたのはおおいに反省しています。

サイズダウンし、モデル店を創る一員として店に入っていた時、PDCサイクルが高速で回って結果がどんどん向上していくのが楽しくて仕方ない気持ちもここ1~2年で経験しました。(現在、オンライン販売がその状況になっているので、また今度書きます。)

ただ、これだと、
①「高報酬」→達成
②「労働環境完全ホワイト」→真逆で未達
③「高いやりがい」→ハイ状態においては達成、ただ段々体力が落ち未達に

という感じで、これしかないのかもしれないのだけど、
これでいいのか・・・という先が不安な状況でした。


2.「仕入力」と「販売力」を、あえて分ける

次に生まれて来たやり方が、
仕入を自分でやっておらずとも、
「販売事情」で「仕入」を徹底コントロールする、というものです。

もちろん八百屋の醍醐味は、
当日の朝、仕入予定にないものが出て来た場合も、
それらを取り込んでなんとか販売し利益を生みだすというものがあります。

それは産地から行う産直取引でも同じです。
これは八百屋側からしたら醍醐味ですが、市場や産地からは期待されている役割です。なぜなら、大手量販店は2週間前に予定した青果を基本は予定した価格で売りますので、当日市場に入荷が多かったからと言ってその青果の行き所はありません。その時に頼りにされるのが八百屋です。

それを完全に捨てるというわけではもちろんないのですが、
それも販売コンテンツの1要素として最初っから予算枠組みを決めて
徹底的にコントロールした発注をするというものです。
要は予算オーバーの当日入荷は徹底的に断るという事になります。
これは、仕入側は結構やりにくくなるという側面が実はあります。

ただ、八百屋の醍醐味のスポット仕入が良い成績の源泉かと思いきや、
コントロール発注で成績が著しく出た事にはじめは自分もカルチャーショックでした。神話が崩れました。
もちろん、創業すぐでこれでは成績は出ないかもしれませんが、
ここまで育てて来た仕入網が一定あるのであれば、大事なのは臨機応変のお値打ち仕入よりもお客様ニーズをあらかじめ想定し、販売オペレーションを基点として仕入を徹底的にコントロールしてイレギュラーを無くすというものです。

一定の仕入力がある事が前提ですが、これで十分な販売が出来て利益も出るようになりました。

こうなると、
①「高報酬」→達成
②「労働環境完全ホワイト」→達成
③「高いやりがい」→達成しているが、醍醐味や期待には少しだけ添えない
という形です。

ただこれも、③がやりようがあるのではないか。また、もっと上に行ける伸びしろまでコントロールしているかもしれない。という、いいのだけどこれでいいのか・・・?というモヤモヤがありました。

3.分けられた「仕入力」「販売力」を、再度繋ぐ

実はこれは、今まさに"進化"真っ最中です。
あえて、「仕入」と「販売」を改めて完全分業し、働く時間を制限して労務を整えてきました。(簡素化して上記のように言ってますが、分断されないような構造を持ったり、施策を打ったりはしています)

「仕入」と「販売」が完全に分けて動くとどうなるか?
仕入は発注リストを作り、販売はそれを見て売るものを決めて発注する。
両者の想いやモヤモヤは両者の心に留めておいて、セクション毎に愚痴を言い合う。そういう流れが待っています。

結果が出ても、そういう未来が待つ組織に「やりがい」は感じられなくなるのではないかと思います。

そこで今トライしているのは、当たり前かもですが、以下です。

「仕入」は(エンドユーザーのお客様まで)販売はしないけど、どういう販売をしたいのか、実際の販売状況はどうか?、を店舗毎にダッシュボードを基点に相談する。
「販売」は(メーカー、生産者さん、市場などから)仕入はしないけど、どういう仕入をしたいと思っているか、仕入がどうだったか、を、仕入チームとダッシュボードを基点に相談したり振り返ったりする。その際、仕入状況も把握し、個店毎の販売計画に役立てる。

定量的な数値を見ながら、定性的な実際の声を聞きながら、お互いの健全な労働時間の中でコミュニケーションをする。コミュニケーションが取れているから、八百屋の醍醐味の急な仕入も比較的トライしやすい関係性となり、意図とニーズが合っていたかの振り返りもすぐに出来るようにする。

上記、めちゃめちゃ当たり前の事を言っているのですが、これがトライ出来るようになるまで本当に長い時間かかりました。(出来ているのではなく、トライしだしているという状況になるまで時間がかかりました)

そしてこれは完全に嗅覚的な予想ですが、これが体現出来た時に「2」の時に出していた以上の単店利益が出るだろうし、

①「高報酬」→達成
②「労働環境完全ホワイト」→達成
③「高いやりがい」→達成

に、晴れてなるであろうと考えています。


4.まとめ

これから青果店を起業するという人は、どっちにしろ「1」はやって損はないとは思います。八百屋の様な小商いで商売をする場合、自分で利益の出し方が分からずに他の人に指示して利益を出させるのは、宝くじレベルの博打だと思います。なので、まずは自分で出す。

ただし、平行して、働きまくるというレバーを引かずして同じ様な結果を出すにはどうすればいいか?をひたすら考え少しずつでも施策として実行続けると、あなたにとっての「2」や「3」にいけるのではないかと思います。
今回は、株式会社アグリゲート、旬八青果店にとっての「2」「3」を書きましたが、正解は無数にあると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?