アニメチェンソーマンは普通に面白いアニメだからこそ原作を知っていると違和感が強くなるという話

チェンソーマン…嘗てジャンプで連載されていた漫画である。エログロをメインにしつつも締めるところはしっかりと締めており、個人的にジャンプの中では上位に入る面白さだと私は思っている。
そのチェンソーマンが待望のアニメ化という事もあり、私は漸くか!と期待半分でありながら単独出資という余り類を見ない制作体制の為…大丈夫か?と不安半分だったものの、PVやOPの完成度の高さの為にあぁ…大丈夫だ、と思っていた。
思っていた、というのは放送前までであり…今半分はつまらない、とは言わないものの何だったんだろうな…という感想である。
タイトルにあるように決してつまらない訳ではない、正直なところ世の中のアニメはこれ以下の方が多く今期…どころか今年のアニメの中で見ても上位には君臨する面白さだろう。
ただ、それならばこんな記事は書かないのである、このチェンソーマンというアニメ、原作を知っていれば知っているほど、そしてアニメで初見の人は人ほど原作の説明を端折っているため違和感を強く感じるという、どうしてそうなったのか、と言わざるを得ないつくりになってしまっている。
これが原作を知っている人向けに、あるいは何も知らない人向けに、どちらかに割り切って作っていれば恐らくはこんな事にならなかっただろう。
私は原作改変をある程度肯定的に捉えている人間であり、この作品のアキをメインにしつつ、デンジとのW主人公という形で作成しているのは私個人的には良い点だと思っている。特に、アキのアニオリ追加シーンは中々に原作理解度が高くて、良いとは感じた。
ただ…だとしても、じゃあ面白いのか?と言われると微妙な所であるのだが、以下に何故そう感じたのかをつらつらと書き綴っていく。
良い点悪い点、どちらもあるからこそこのアニメは何とも言えない…アニメになってしまっているのだから。

良い点

・作中の陰鬱な雰囲気を表している

チェンソーマン自体が現代の日本を舞台にしつつも細部が違っていて、常に暗い雰囲気を醸し続けている作風の都合上、本作の東京の描写は物凄く原作の良さを表していると感じた。
シーン一つ取っても雰囲気の重厚さを出しており、晴れている日なのにも関わらずどこか暗さを感じさせるシーンは、流石、と感じた。

・アキの描写の増加

上で述べたようにこの作品、アキとのW主人公を意識しているような作りとなっており、細かい描写一つとってもアキの人となりが分かるようになっている。
朝のモーニングルーティンや、早川家のシーン等、アニメになって追加されたであろうシーンも作風全体の雰囲気と合わさって違和感なく調和している。
特に私が3話のマキマとのドライブシーンである。抑揚無い演技、陰鬱な東京を指し示す描写、映画のようなカット等、このように細かいシーン一つとっても丁寧に作られている。

・永遠の悪魔に閉じ込められた所

永遠の悪魔の密室シーンは、作風全体をこの場面に合わせるように作ったんじゃないか?と思うぐらいによく作られていたと思います。
監督が得意としている引きの構図、自然なまでに溶け込んでいる暗い雰囲気、パニックに陥るコベニ等々、ここの一連の下りは本当に良かったです、
私個人が割と間を丁寧に作ってくれている作品が好きな事もあり、ここの雰囲気の出し方はトップクラスに大きく、ここのシーンをこのように作成して頂けただけでもありがたい…と感じました。

・サムライソードとの迫力ある戦闘シーン

作中では二度、戦闘シーンがあるのですがどちらもよく動いて、流石の作画力だと感じました。
個人的には二度目のビルでの上でのチャンバラから、電車の上に映ったシーンは映画と大差ないほどに作られており、ここも物凄くよかったです。
現代を舞台にしつつこのように中二病真っ盛りのアニメが減った現在、このシーンは…おぉ、と感激してしまいました。

・配役の良さ

西友はほぼほぼ違和感がなく、メインキャラはほぼ全員合致していたと思います。透き通っていて裏表を感じさせるマキマ、頭悪そうなパワー、冷静に落ち着いているアキ等々、声優の配役は、悪くないです。

悪い点

上に書いた点以外全部です。というか正直なところ、上で上げたシーンもほぼ漏れなく原作改悪がついて回るので手放しに褒められる点はほぼほぼ無いです。
私自身は原作を改変するのは良いと思っていますし、例えばチェンソーマンが原作の雰囲気を完全に殺してもアニメとして面白ければそれで良い、と思っているんですよね。正直、原作自体が人を選ぶことは間違いないのでその選択は悪いとは思いません。ただ余りにも、意味不明な改悪が多すぎて…この点が他の原作改変アニメと全体的に変わってきているんですよね。それが新規に分かりやすくなっているか?と言われると恐らく、新規は改悪されたせいでなぜ?となっているに違いない…序にそのせいで原作もそこまで面白くないんじゃないか?と思われてしまう二重苦。いっその事原作とは別ベクトルで(例えばサイドアキのように)作成してくれたらまぁ、ありかな、と私は感じましたが、中途半端に原作と同じだからこそ違和感が強くなる。そもそもアキの描写が増えた、と書きましたがそれに比例するように原作のデンジのシーン削ってるのは何やってんのお前?って感じました。
以下特にひどい点を書き綴っていきます。

・何言ってるか分からない

作中に出てくる男性キャラの7割が何言ってるか分かりません。これ比喩じゃなくて本当に喋り方に抑揚が無いし小さすぎて聞き取れないんです。上でアキの声は合致していると書きましたがそれでももう少し声は大きくして欲しかったです。ただアキはまだマシでサムライソードや岸辺は本当に酷いです。このアニメ、全員がそういう演技なのかと思えば女性キャラはほぼ全員はっきりと聞こえます。
というか…何ていえばいいのか分からないんですけど、男性陣は映画形式のようにリアリティある演技に対して女性陣は悪い意味でアニメの演技だから違和感が半端ないんですよ。
永遠の悪魔のシーンは特に顕著で、コベニの演技が悪い意味で浮いていて正直笑ってしまいました。
これは演技が酷いからではなく、本当に作中でコベニだけ悪い意味で浮いているんです。下手じゃないからこそ重い雰囲気に合っていないという…というか、聞き取り辛いから音量あげたらコベニのシーンで音量下げたって人、割といるんじゃないんでしょうか。
序に未来の悪魔も、全然叫んでなくて…え?ってなってしまいました。

・デンジの改悪

デンジの改悪は半端ないです、上でリアリティある演技と書きましたが、その煽りを最も受けているのが主人公の彼です(普通主人公に合わせるのでは?)。
これは私個人の意見なので、どう捉えるかは人によって変わると思われますが私はチェンソーマンの序盤は陰鬱な雰囲気をデンジとパワーのバカみたいな明るさで中和する、と考えていたし、そういう視点で漫画を読んでいました。
ただ、アニメはバカみたいな明るさは無かったです。もっとこう、それこそコベニ位にぶっ飛んだ演技をして欲しかったんですが、リアリティある描写の煽りを受けて普通の人、みたいな印象を受けました。
声優があってない、とは感じずモンストの声は私がデンジに期待していた演技をしてくれていたので正直…余り言いたくないですが作風全体を現実感ある描写に統一するのは間違いだったのかな、と私は感じました。

これの演技がただ、悪いだけなら良いんですけど作中で無駄に強調されたエロシーンも含めてデンジが変態みたいにしか見えないんですよね。原作でそうだろ…って言われたら正直反論出来ないんですがエロシーンはナルトみたいに軽く流してほしかったのに、そこ無駄に尺取るんだ…という、デンジの人気を落としたいのかな、と私は感じてしまいました。

・不必要な原作改変

原作改変は悪いとは思いませんが、根本的に改変している所が意味不明でそれ自体が面白さにつながってるかと言われると正直厳しいと私は感じています。
1話の俺たちの…のシーンで嫌な予感はしていたんですが、まさかその通りだとは思いませんでした。
特に、原作を読んでいる人ならばデンジの改変は嫌でも目につきますよね。
まずは筋肉の悪魔…これ単体がいるかいらないかで言えば、いらないよりのエピソードではあるのでカットされたんでしょうが他のシーンいれるよりこっち先に入れろよ、ってのは強く感じました。
後は特に酷かったのが12話ですね、上では面白いと書きましたがサムライソードの居合を防ぐ場面だったり女性を庇うシーンだったり…一つ一つは目くじら立てる程悪い(良いとも言ってない)訳ではないんですが積み重なって絶対デンジの事嫌いだろ…と嫌でも感じさえられます。
ただまあ、デンジはまだマシな方で特に上記のシーンも別にそれ単体として見るなら違和感は余りないのでこの辺りは過敏に反応しすぎ(改悪するなよって話なんですが)なのかもしれません。デンジの演技に引っ張られ過ぎていて悪い方向性にバイアスがかかってるだけかもしれませんが…これ以上に酷い改悪シーンも出てきます。

9話のコベニの弾切れシーンは本当、終わってますね。これだけはどう頑張っても理解出来なかったです。
原作は弾切れをしたから相手の弾を防ぐために仕方なくデンジを盾にして逃がしてしまうんですが、何故かこのアニメでは車に入るのを見送ってから車の中を打つようになっています。ネットではそもそも原作を見てない人がいるのかライドストップ起きてホールドオープン状態になる場面を再現しているから弾切れになって打たなかった、と解釈している人がいるのですが私が言いたいのはそこじゃなくて、何で玉残ってるのに悠長に待ってんだよ!?って所です。
ここはマジで意味分からなくて100回見てもこの改悪はよくわかりません、そのせいでコベニが異常な身体能力を持っているのにデンジを盾にして急に謝るとかいう…薄情に近いキャラになってしまってますし、その窓を打つシーンを入れたいならばいっその事全部終わってから抱えて一言いえばいいのに、何かどうすればこういう展開になるの?と本当に理解出来なかったです。仮にもしそのライ(ryが正しいとしてもアニメ的に分かり辛くする描写はどうなの?って感じました。言い方は悪いですけどドラマならそれは正しいかもしれませんが、アニメで視覚的に分かりやすくしなくてはならないのにわざわざ分かり辛く(原作は弾切れだって事を分かりやすく描写していましたし)するのはどうなんだろう…と感じました。
正直これに比べたら他の改悪とか可愛いものです、これだけは本当に意味分からないです。原作通り作ればいいのにわざわざ改悪してまでその描写を入れたかったのか…という。
Easy revengeも字幕無かったり、そもそも気軽に、と間違えられているのですが…まあ、些細な問題ですかね。
ほんと、大なり小なり改悪が多すぎてこれは一例ですけど、無駄に削ったり無駄に原作を変えたりしている場面はかなりあります。

・BGMが印象に残らない

日常シーンは良いんですけど戦闘シーンは本当、酷いです。アニメなのにアニメらしい描写を削ってるせいで、本当に印象に残らないです。
デンジがチェンソーマンになっても、作画は良いのに全く盛り上がらないんですよね。
冗談抜きでOPが一番盛り上がります、何か…本当に何なんでしょうねこのアニメ、書いてて嫌になってきました。
印象に残らないだけなら良いんですけど、デンジも声張ってるんでしょうけどBGMに無駄にかき消されてるせいでそのあたりも何なんでしょうねこれ。
夢バトルのシーンが顕著ですけどBGM微妙なのにデンジの声がBGMにかき消されているっていう…いっその事無音にしてくれ、とは感じました。

・アニメらしい描写を徹底排除

上の要点見て頂ければわかると思うんですが兎に角アニメらしい要素を排除しているんですよね、このアニメ。
日常シーンはそれで良いと思うんですが戦闘シーンまでそれやってるせいで悪い意味で淡々としているアニメなんです。
序に言うと原作のギャグシーンも諸々ギャグになってないですね、上のBGMが微妙問題と合わせて終始え?これ?ギャグなの?みたいなシーンはかなりあります。
デンジの無駄に抑えた演技も相まってパワーとのやり取りが喧嘩にしか見えないんですよね。
これ、一応は少年漫画なんですけど…何なんでしょうね、本当。実写映画ならこの方向性は間違ってないですが、これ、アニメなんですよね。

・そもそもMAPPAの広告が煽りすぎた

根本的にこれですよね、最高のアニメーションをお届けって言われて単独出資、それに加えてあのPVを見たら嫌でもこれは面白いものになるぞ、って思うじゃないですか。
単体で見てもつまらない…とまでは言わないけど突出して最高には思えないし、漫画のアニメ化も原作を知っていると悪い意味で引っかかる部分が多々の時点で根本的に何でこんな風になってしまったんだろう…ってなります。
というか普通に作ってくれれば良かったんですよね、普通に原作を再現して普通にアニメっぽい描写を入れて、そうすれば少なくともここまで賛否別れる出来にはならなかった気がします。
後、多分監督の責任ですかね、あんま言いたくないですが。アニメでアニメを作りたくないっていう監督に任せたのが全ての間違いの気がします。
どう見ても失敗できないアニメでここまで挑戦する意味もよくわからないし、考えれば考える程よくわからないアニメなんですよねこれ。(そもそもチェンソーマン自体が万人受けしないのに、それに対して社運をかけるような事をしている時点で何故?と)



個人的にはレゼ編だけ見てみたいですけど、まぁ…期待薄って感じですね。正直作られないかなとは薄々感じてます。というか正直作って欲しくないですね、チェンソーマンの中でもレゼ編は突出して出来が良い話なのですが一期を見るに原作のいい部分を無駄に改変されそうなのは分かり切っているので。









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