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【教育・学校心理学】メンタルヘルス教育


メンタルヘルスとは

 精神面の健康のことを示す。同義で、「心の健康」「精神保健」と表現されることもある。
 学校では自分自身や周囲の人々のメンタルヘルスの増進に寄与できる社会人の基盤を形成することが期待されている。

学校におけるメンタルヘルスの学び

メンタルヘルスについて言及のある法律

  • 教育基本法:教育の目的として心身の健康な国家・社会の形成者を育てることが明記されている

  • 学校教育法:教育を担う学校や教員の立場を明確にしている

  • 教育指導要領:小学校、中学校、高校の各段階でメンタルヘルスに関する学習内容が示されている

小学校、中学校、高校におけるメンタルヘルスに関する学習内容

  • 小学校:学級担任が実施。心の発達及び不安、悩みへの対処について理解できるようにすること

  • 中学校:保健領域にて実施。精神機能と生活経験、精神と身体の関わりを学び、心身の機能の発達とメンタルヘルスの繋がりを理解する、ストレスや悩みを見過ごすことなく、適切に対処する必要があること

  • 高校:保健領域にて実施。心の健康に関する精緻な知識や対処方法を学ぶ。具体的には心の不調により引き起こされる問題や、その予防・早期発見・早期介入のための職場の取り組みと法律との関係性、利用できる社会資源の組み

メンタルヘルスのための心理教育

 心の健康の増進には事後対応ではなく、学齢期の段階をおって予防的な取り組みを始めることが必要である。問題の改善に向けては、その人の強みを活かし、本来の力を引き出す、強みに着目するアプローチが効果を発揮することもある。代表的な方法を以下にまとめる。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

 メンタルヘルス教育に使用すると効果が期待できる。

社会性と情動の学習(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL))

 予防教育の一つで、情動(比較的短期的な感情)や認知の扱い方、共感的で思いやりのある対人関係を学ぶこと。ニーズを持つ対象次第で、プログラムが組まれる。

  • 集団SST:すべての子どもに効果のある取り組みを学級単位で活動に取り入れ、学級全体の風土を高めようとするもの

  • 個別SST:課題を抱える児童生徒が同様の課題に遭遇する際に備えるためのもの

ストレスマネジメント教育について

 児童生徒は、メンタルヘルスの状態に応じて、日常生活のなかで受けるストレスを適切に対処する(マネジメント)することを学ばなくてはなりません。

ストレスマネジメント教育は以下を含むとされている

  • ストレスの理解

  • 自分のストレス反応の理解

  • ストレス対処方法の学習

  • ストレス対処方法の活用

ストレスの理解

 ストレッサー(ストレス要因)となる事象の理解

自分のストレス反応の理解

 自分の状態を適切に捉え、必要な対処を自ら行えるようになることが大切

ストレス対処方法の学習

 問題焦点コーピング、情動焦点コーピング、ストレス解消型コーピングなどのストレスコーピングの方法や、リラクゼーション技法を学ぶ

ストレス対処方法の活用

 日常生活のなかで出会うストレスに応じ、学んだストレス対処方法を活用し、力量をさらに高める、またリラクゼーション方法を実施するタイミングや場面の理解

ソーシャルサポート(社会的支援)の活用

 ソーシャルサポートとは具体的な助言、直接的な手助け、情報や物的な支援を指す「道具的支援」、共感的な理解や励ましを指す「情緒的支援」を指す。こうした活用できる資源を理解することで適切な援助要請に繋がる。

学校適応援助の体系化に用いられる3層構造の考え方

 適応状態に問題のない児童生徒と、少し不適応状態が疑われる児童生徒、不適応状態の深刻な児童生徒に対して、見合ったメンタルヘルス教育と実践を行うことが必要。その時に一次的支援・二次的支援・三次的支援などの3層構造の考え方が、学校適応援助の体系化に用いられる。

  • 一次的支援:全ての児童生徒に対して予防的に実施される

  • 二次的支援:学級担当等によるが教育相談や養護教諭による健康相談および保健室などの居場所づくりを介入策として活用する

  • 三次的支援:スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、多様な専門的資源を活用した支援を行う

教職員や保護者のメンタルマネジメントについて

 教員の精神疾患による休職者数は増加傾向にあり、その原因には長時間労働や職場の人間関係、保護者対応など多種多様である。児童生徒の困りごとに頻繁に接触する学校関係者への支援も同様に必須である。対策としては以下が挙げられる。

  • セルフケアのための理解を深めること

  • ストレスチェックを行う

  • ラインケアを実施する

学校におけるメンタルヘルスへの組織的アプローチについて

 学校におけるメンタルヘルスの増進に取り組むには、教師個人だけでなく、学校組織をあげて実践することで、さらに効果が高まる。組織的アプローチを行うには、以下が重要である。

  • メンタルヘルスの理念:メンタルヘルスの増進について、どのような方針で進めるのかを定める

  • メンタルヘルス(心の健康)推進に向けたルール:校内でどのようなルールで児童生徒のケアを行うかを個々の児童生徒の状態に合わせて定められるようにしておくこと

  • メンタルヘルス増進にかかるツール:メンタルヘルスにかかる問題を含め、児童生徒の状態を包括的に把握したり、支援方法を検討することに活用できる、チーム援助シートやSOSチェックリストなど校内で共通に使用できるツールを準備する

  • メンタルヘルス増進における役割分担:校内の体制の構築や教職員への配慮を行う者、全体計画や個別課題への支援の調整と推進を行う者、メンタルヘルス教育の直接支援を行う者、そしてその管理・運営を行う者

  • メンタルヘルスの年間計画:年間の中でメンタルヘルスを日常的に学ぶ機会を設けること

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