【社会・集団・家族心理学】家族システム論


家族システム論

 家族を複数の役割を有する存在が、相互作用して成り立っている1つの組織として考える理論である。
 📕「家族」は、メンバー一人ひとり(要素)が相互の関係性や歴史性を共有しており、ひとまとまり(意味のある)統合体として機能していることから、1つの代表的なシステムとして見なすことができるという理論。

家族システム理論の概念や考え方

円環的認識論

 家族内のメンバーが因果的な関わり方ではなく、円環的(循環的)に関わっており、発生した問題や出来事の原因と結果を直接的に結びつけることができないという理論。あるメンバーの行動が他のメンバーに影響を与え、それが再び元のメンバーに返ってくるという理解が重要である。
 📕ベースとして家族は取り巻く環境との間でエネルギーや情報、物質などのやりとりがある解放システムであり、その解放システムを特徴付けるような多方向にわかる相互的な連鎖を円環的因果律という。
(例)母親が仕事で重要な役割を任されることになり、日々大きなストレスに追われることになった。家庭でも、笑顔が薄れ子供達も母親の様子を気遣うようになった。その頃から、子供が学校で友人に暴言を吐く等の問題行動を起こすようになり、先生は友人間で何かトラブルが起きたのではないかと検討していた。しかしそれは家族の問題から発生しているものであった。

階層性

 家族を構成するメンバーは小さい単位に分かれており、その各メンバー毎に上位、中位、下位等の階層で構成されている。家族内での力関係や権威の構造を指し、家族メンバーの間に存在する地位や役割の違いがシステムの動作に影響を与えるという概念である。
 📕家族をシステムとみなすと、家族を構成する一人ひとりのメンバーは、それより小さな単位のシステム、すなわち、家族の下位システムにあたる。一人ひとりの人間も、小さな細胞システムや器官システムが集まって構成されている。他方で、拡大家族や親族集団、コミュニティなども、複数の家族から成るより大きなシステムとみなすことができる(スープラシステム)。
これらのシステムは独自性を維持しつつ、かつ一連の階層的次元にしたがって相互に関連していることをシステムの階層性という。

家族システム理論に関連するワード

サブシステム

 1つのシステムの下位次元として機能しているシステムのこと。家族システム内で特定の機能や役割を持つ小さな集団を指す。典型的なサブシステムには、夫婦サブシステム、親子サブシステム、兄弟サブシステムがある。
 📕家族をシステムとしてみなした際に、一人ひとりのメンバーやそれより小さい単位のシステムで家族を構成する下位システムのこと。
(例)家族の構成メンバー、神経系や消化器システム

拡大家族

 📕夫婦とその子供から成る核家族に、その血縁者が同居している家族

家族システム理論の機能

モルフォスタシス

 機能的に変化を生じさせようとした際に、元々の機能を維持しようとして働くプロセスのこと。家族は、既存のパターンや構造を維持しようとし、変化を最小限に抑えるための行動を取る。
 📕形態維持:システム内外に生じた様々な変化に対して、もとの安定を維持する働きのこと

モルフォジェネシス

 状況や環境の変化から、システム自体がそれに伴い変化を発生させること。システムの成長や進化を可能にするために重要である。
 📕形態発生:システム自体が改変されてしまうような変化のこと
(例1)子供が受験期に差し掛かったことで、家族の日常生活の優先順位が大きく代わり、家族機能もそれに伴い変更された
(例2)子供が就職を機に、一人暮らしを開始するにあたって、家族のありた方が大きく変化したこと

サイバネティクス

 家族システム内で機能する抑制・調整・フィードバックのこと。家族システム内での相互作用が、フィードバックを通じてどのようにシステム全体の動作に影響を与えるかを示す。
 📕自動制御理論:家族システムを維持するために自動的に働く制御・調整・フィードバック機能のこと。
(例)子どもが大学進学を目指す際、親が高い期待を持つと、子どもがその期待に応えようとする場合がある。これがプレッシャーとして感じられると、子どもがストレスを抱えることになり、成績に影響が出ることもある。親がその状況に応じて期待を調整することで、子どものパフォーマンスが再び安定する場合もある。※フィードバックループの一例。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?