納豆菌をバラに
みなさんご承知の通りわたしたちの身近には、さまざまな菌がいますね。いるのかいないのか目には見えませんけれど、見えないところでいろんな働きをしてくれています。そんな菌たちのことをもっと知り、彼らの特性を生かし、農薬を使わなくてももっと気楽にバラを元気に育てられるようになればいいなぁと思っています。
ということで、今日は納豆菌についてお勉強していきたいと思います。納豆って、あの食べる納豆のこと?!とちょっと驚かれたかもしれませんが。
ハイ。その納豆です。ふふふ。
有機栽培をしている農家さんの間では、納豆菌防除をしている方は多いと思います。すでに実績のある方法で、取り立てて新しいことではありません。何がどう働いて植物の助けになるのか、それをまとめてみます。
納豆菌とはどういうものか
学名は Bacillus subtilis var. natto(バチルス サブチリス ナットー)。バチルス属の枯草菌の中のひとつで、稲わらに多く生息していることが知られています。昔の人たちはそれを知っていて、わらに煮豆を包んで納豆が作られたんですね。今や、わら納豆は高級品です。
生育適温は45~75℃とかなり高め。高温で活発に活動する菌ですが、適温から大きく外れても死ぬことはなく、芽胞を作って休眠します。
100度の熱湯をかけても、マイナス35℃でも、乾燥させても大丈夫!pHは7~8のアルカリ性。100%の水分を好みますが、好気性の菌です。
なぜこの菌が薬の代わりとして使われているか
その理由はいくつもあります。病原菌の多くは糸状菌といわれるカビで、その細胞膜はセルロースでできています。納豆菌はセルロース分解酵素を出しながらどんどん増えるので、病原菌は分解されてしまいます。
多くの病原菌が好むpHは5.5~6.5の弱酸性。植物に噴霧して納豆菌が増えると、葉にアルカリ皮膜が出来るので病気を予防できます。
納豆のネバネバはアミノ酸がつながったポリペプチドで、抗菌物質が含まれています。抗生物質がなかった頃は、コレラや腸チフスにも納豆が用いられていたそうです。
ポリペプチドはグルタミン酸(アミノ酸)とフラクタン(フラクトースという果糖がつながった多糖類)がたくさんつながった糖タンパク。これらは植物の栄養となって元気に育てたり、乳酸菌を増やしたり、土壌をふかふかにしたりするので、植物の耐病性が上がります。
上記に加え、納豆菌というのは自然界に普通にいて超強力で、しかも簡単には死なない菌なんですよ。例えて言うなら、無限に分身の術が使える不滅のヒーローみたいな。言い過ぎか?( *´艸`)
ズボラでOK!噴霧液のつくり方
市販されている資材でも納豆菌が含まれているものがありますが、どれもいいお値段ですよね・・・。一応どんな感じか知りたくて市販品も使ってみましたが、自分で納豆を加えた方が明らかに効果が高かったです。
ということで。ここでは自分で作れる方法をご紹介したいと思います。いろんなやり方がありますので、興味のある方は好きな方法でお試しください。
たとえばですが。納豆と適量の水をミキサーで混ぜ、茶こしなどで濾した液をスプレーする。ミキサーがなければ、適当につぶせばOK。本に出ていた農家さんでは100リットルの水に納豆1パックの割合で混ぜ、これをさらに薄めて噴霧するそうです。
それとか、納豆を取り出した後のパックに付いたネバネバを水で洗い、そのネバネバ液を培養して噴霧するという人も。(塩分は無い方がいいです。薄い半透明のフィルムを洗うのでもOK)。もうほんと、簡単お手軽、適当で大丈夫。ぜひお試しください!
培養液の中に、納豆を数粒入れてもいいですね。納豆菌は好気性ですから、じゃぽじゃぽ振ると増えやすいと思います。
噴霧液の適正濃度
病状がひどいのかそれほどでもないのか等で、ご自分で試して調整していただくのがよいと思います。薬害はまず出ませんから、薄すぎない方が良いです。使うのは賞味期限が過ぎて古くなってしまった納豆で十分です。
ただし、粒をたくさん入れる場合は、悪臭の原因になりますのでそのまま保存しないのがオススメ。たくさん作りすぎて残った分は、水やり代わりに土に撒いてしまいましょう。
愛媛県産業技術研究所で開発された、えひめAI(えひめあい)
これも納豆菌を利用した資材で、納豆菌、乳酸菌、酵母菌を培養しご自分で作れる万能液です。植物への利用だけでなく、お掃除やお洗濯、ニオイ消し等にも使えるそうです。
えひめAI-2のつくり方と使い方
濃度や材料、作り方をきっちり知りたい方は、愛媛県のホームページをご覧ください(えひめAIには1と2があり、2の方が家庭用に改良されたものです)。これを50倍~100倍程度に薄めて葉面散布するか、水やり、土壌改良に使ってもいいですね。
*この記事は、2020年6月にブログに掲載したものを、加筆修正したものです。
◇参考文献◇
現代農業2011年6月号
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