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THE QUIET MANを自分なりに再構築してみた:後編

※こちらの記事は、必ず前編を読んでからご覧ください。

 これから2周目を始めますが、読む前に自分なりの答えを考えておくと、より楽しめると思います。なんのための誘拐だったのか? ライラの嘘とは? そのあたりがポイントだと思います。

※さっぱりわからないよ!という方は、タイトル画面をじっくり見ていただくと気づくかもしれません。

 それでは2周目、お楽しみください。


 ……という感じです。モヤッと感はどうでしょうか?(笑) 以下はちょっとした解説などを入れておきます。ご自分で考察したいかたは読まなくても大丈夫です!


 もしかしたら、一読して意味がわからなかったかたもいらっしゃるかも……と思いましたので、一応説明しておくと、この漫画においてのライラは最初から最後まで歌など歌っていないということです。

 舞台のシーン(素材がなかったため体育館ですが・笑)をよく見ていただくとわかりますが、中央に置いてあるのは常にピアノで、ライラは脇に立っています。つまり、聴衆が聴いているのはジェイのピアノであり、ライラの歌ではないのです。ライラはただ歌っているふりをしているだけ。聴衆はライラが歌えなくなったのを知っているので、かわいそうに思ってつきあってあげているのでした。

 しかし、耳の聞こえないカインにはそれがわかりません。あの場にいるただひとりだけ、ライラは本当に歌っていると思っていて、しかも頭のなかで母の歌声に変換し、その歌に癒されています。ライラの歌声は確かにあると思いこんでいるカインの存在が、歌を失い精神的に不安定になっていたライラの唯一の支えでした。

 ここがこの話のキモで、カインに聞こえていないものは他の人には聞こえているだろうと考える読者の先入観を利用したどんでん返しになっています。カインに聞こえないものが、実際にはカイン以外にも聞こえていなかったら面白いんじゃないかな?と最初に考えたのがきっかけでしたが、これを思いついたことによって、ライラがカインに固執する理由も生まれました。

 カインはカインで、ライラに母を重ねていて、ライラの歌があればそれでいいと思ってしまっているところがあり、まだ耳が聞こえないところからも実は母の死から立ち直れていないことがわかります。聴覚を取り戻すことをとっくに諦めてしまっているのですね。

 で、ふたりを見守る立場のジェイは、そんな状態を見ていられなくなり、このままではふたりとも前を見ないまま成長をとめてしまうと思ったので、断腸の思いでふたりを引き離す決意をしました。

 そこでカインを誘拐する振りをし、そのまま姿をくらますように頼んだのです。(ちなみに実行犯はジェイの部下でした)どうしてわざわざ誘拐の真似をしたかというと、そうすることによってカインにジェイの本気度が伝わると思ったのと、カインが自分の意思で姿を消すよりも、本人の意思でなく消えてしまったとしたほうが、ライラのダメージが少ないと思ったからでした。(誘拐であれば、少なくともライラは自分のせいだとは思わない)

 このあたりの事情も漫画に入れ込めればよかったのですが、どうしても台詞が長くなってしまうので、各自で考えてもらえればよいと思ってばっさりカットしました(笑)。とにかく誘拐ネタは入れたかったので、いい落としどころが見つかってよかったです。

 最後にヘッドフォンについてですが、これは当初主人公が台詞を把握できているかどうかを示すアイテムとして考えました。ゲームでは、主人公がどの台詞を理解できているのかがわからないシーンが多く、そこもモヤッとポイントでしたので。ただ、漫画にするにあたっては、それをはっきりと画面上で表現できるため、別の意味を持たせることにしました。

 耳の聞こえないカインにとって、ヘッドフォンはしてもしなくても変わりのない存在です。ただ、自分以外の人に「台詞の理解」の有無を知らせるために、つけたり外したりしています。が、基本的にはヘッドフォンをして生活しています。その状態を耳の聞こえる人に置き換えると、常に耳を塞いで生活しているのと同じです。そう考えると、彼がいかに自分の殻に閉じこもっていたかがわかるかと思います。

 ヘッドフォンは、カインにとって「あなたたちの言葉など聞く気はない」と自分以外の世界を否定するアイテムだったわけです。そこから外れていたのが、唯一ライラの歌で、それさえあれば他はもういいやって思っていたのですね。

 しかし、ジェイによってそれではいけないと指摘され、ライラが抱えていた秘密も知り、カインはようやく周囲の世界をもっと知りたい、みんなの声を聞けるようになりたいと思えるようになり、世界と自分を隔てる象徴だったヘッドフォンを置いた――という流れになります。ライラにとってはそれがマイクだったので、最後のコマではマイクも配置してみました。

 以上になります。ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました! この話をつくったことによって、自分的にはとてもスッキリしました(笑)。また、THE QUIET MANをプレイしていろいろ得るものがあったので、改めてやってみてよかったと思ったしだいです。また挑戦的なソフトがあれば突撃したいですね!

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