2023年3月12日のLa dolce vita/甘い生活

親愛なる読者の皆さまへ、ブログ2日目。

これを書いている伊勢佐木町のカフェでは赤子を連れた年若い女性たちの闊達な中国語が組み交わされている。横浜はほんとうによいところ。古本屋でアナイス・ニンの初の出版物である『私のD.H.ロレンス論（鳥影社/木村淳子訳）』を見つけたので一気に読んだ。あらためて『チャタレイ夫人の恋人』を手に入れ読まなくてはならない。『私のD.H.ロレンス論』の原題は ”D.H. Lawrence: An Unprofessional Study” （素人によるD.H.ロレンスの研究）で、ニンの慎ましやかさとアイロニーが可愛らしい。『アナイス・ニンの日記』が私を勇気づけたように、D.H.ロレンスはニンを執筆に向かわせた。文脈から切り離されているものなどひとつもなくて、全ては繋がっている。

やっと顧問税理士氏に個人名義の確定申告に必要であろうと思われる全ての資料を渡せたのでほっとしている。氏はとても頭がよく仕事が異様に早くかつ心の優しい方なので、私のようなずぼらでぎりぎりまで資料を渡すこともできないどうしようもないクライアントに対しても嫌な顔ひとつせずに、なんとか私から必要な情報を引き出して、淡々とやるべきことを進めてくれる。私は会計事務が苦手なのでほんとうにありがたい。まだ父の死にまつわる事務手続きは多く残っているけれど、喪主や施主であるような事柄からはしばらく離れていられるので、いくぶんか楽である。この1ヶ月半私を苛めていたのは、もちろん喪のかなしみに加えて、何ら自分自身の生業に関する行為がほとんどできていない（単純に、物理的に時間が取れなかったので）という状況そのものだった。あらためて自分が何者であるかを知った。職業でなくて、性質のことだ。そこでその状況を打開するべく、ブログを始めることにした。これでいつでも準備はオーケー。言葉が溢れては掬えずに消えてゆく、あのような苦しみはもう二度と味わわないで済む。

昨晩記念すべき第一稿を投稿した直後、私は自分が震えていることに気づいた。父の死以降、睡眠障害とパニック発作のようなものを併発しているので、またパニックのようなものかと一瞬思ったけれど、通常のパニックとは（通常のパニックって 笑）とは微妙に違う体感ではあったので、あえて頓服薬のロラゼパムを飲まずに体の状態を観察する。低血糖発作に近いような感覚だった。食事を忘れていたことに気づき、急いでビオ・セボンでライ麦でできたパウンドケーキのようなものを買い、DEAN & DELUCAのチャイティーラテで流し込むと、動悸がしていたのが半分くらいは治まった。でもそれでも半分だ。これはただの低血糖発作ではない。私は、興奮しているのだ。私の日記の始まりとカムアウトに。その後家に着いても私の小さな心臓はまだ半分どきどきしたままで、でもロラゼパムを飲んで強制的に静めてしまうのが勿体ないような気がした。結局濃度40%CBDオイルを4滴摂取すると、異常な鼓動と頭痛はだいたい治まり、夕飯に鮭とほうれん草のシチューを作ることができたのである（早く医療大麻が日本でも認められますように。犯罪か、激高CBDオイルしか選択肢がないなんて馬鹿げている）。

アナイス・ニンは、自らの日記をこう描写した。

“This diary is my kief, hashish, and opium pipe. This is my drug and my vice.”
これは私のマリファナで、ハシシで、阿片である。これは私のドラッグであり、悪徳だ。

うーん、依存対象として申し分ない。私は音楽にも大いに依存しているけれど、今のところ私の音楽性は自立していないので（共演者や共作者を必要とする）、たったひとりでできること、書く行為が必要だ。もちろん私のこの依存行為も音楽あってのこと。言語そのものが成り立ちからして破綻しているのだから、言葉だけの世界はまた次元の違う危険な世界。だから村上春樹はあんなに走っているに違いない。

文字どおり堰を切ったように、ここから私の活動は再開する。なぜだか全ては繋がっていて、文脈から切り離されているものなどひとつもない。数ヶ月前から既に新たな試みがいくつか準備されていた。今後の出演予定を羅列してみる。

2023年

3/14（火）関内Ben Tenuto 初出演
https://ben-tenuto.owst.jp/
浅川太平(Pf.)

3/27（月）関内Venus
https://www.venus-hk-j.com/
田村博(Pf.) 初共演

4/3（月）渋谷Contrail 初出演
https://contrail-shibuya.com/
Claire Natirbov(Vo.)
浅川太平(Pf.)
N.Y./L.A.出身のアーティストClaireとのジャズコーラスデュオ、活動再開

4/14（金）大塚 地底 初出演
https://chitei.jp/
歌手ではなくて、DJとしての出演（！）
DJデビュー！

ええー！？初めての試みしかないじゃないか…。自分でも書いていてくらくらしてくるけれど、やっぱり崩壊は構築のチャンスなのか、これから音楽活動も充実してくると思うと心地よい興奮がある（全然パニックでないやつ）。ところでLilla Flicka『通過儀礼/Initiation』のプロモーションはどこに行ったのかしら？