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祖母孝行ってなんだ?

先月、私は祖母と一緒にバリ旅行に行った。

旅行好きな祖母は、昔から自分の孫を連れて海外旅行に行きたがっていた。しかし私は祖母の癖のある性格を知っていたから、一緒に海外に旅行に行くなんて無謀だと思って、ずっと適当な理由をつけて断ってきた。

でもひょんなきっかけで私は、祖母とバリ島旅行に行くことを決めた。元気で衰えを全く感じない祖母も78歳。あと何回一緒に旅行に行けるかわからない。そう思って、「祖母孝行」という理由をつけて自分を納得させ、飛行機のチケットを予約した。

バリ島旅行は案の定、大変だった。

お節介な祖母は私が寝るベットから着る服、食べるものまですべて勝手に決めてしまう。

私が関心を持って現地の人と話していると手を引っ張って、早く次の場所に行こうと急かす。

喧嘩こそしなかったものの、私は祖母に対してずっと苛立ちを抑えることで必死になっていた。

祖母孝行のつもりだったバリ島旅行は、「祖母孝行」にはならなかった。お互いの自我がぶつかりっぱなしだった。

疲れた私は、旅行の途中で海外の友人に電話をして愚痴をこぼしていた。その時に友人が私に言った言葉が私には重く響いた。

「サキは間違っているよ。おばあちゃんのことを悪く言わないでくれ。この世の中にいる人で「おばあちゃん」と呼べる人は何人いる?おばあちゃんが存在しなければサキはこの世の中にいないよ。そんな大事な人との時間をどうして大切にできないの?」

「子どもはできないことがたくさんあるから親や周りの大人が助ける。サキだってお母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんにできないことをたくさん助けてもらって大人になったんだよ。お年寄りは年を取ると子どもみたいになるんだ。できないことが増える。その時に誰が助けるかなんて言わなくてもわかるでしょ。」

祖母孝行ってなんだろう…
私はバリ島旅行中ずっと考えていた。
「孝行」って聞こえは良いけど、ただの自己満足じゃないか。
「恩返し」という言葉の方がしっくり来る気がする。

疲弊してバリから帰ってきた私だが、祖母との関係に変化があった。

私は祖母に頻繁に電話をするようになった。

祖母は山形に住んでおり、1年に1度会うか会わないくらいの関係でいる。これまでは、電話も2・3ヶ月に1度くらいしかしなかったから、声を聞くことさえ稀であった。

私が小さかった頃、祖母が私を心配して電話してきたり、お菓子がつまった段ボール箱を私に送って喜ばせてくれたことを思い出す。

私も祖母を想う気持ちを日常の中で持っていたい。

3日に1回の祖母への電話はお互いを幸せな気持ちにする。

今日は何を食べたの?
今は何をしているの?
山形の天気はどう?

って、何でもない日々を私たちは電話で共有する。
電話を切るとき「サキちゃん忙しいんだからこんなに電話しなくてもいいのよ。でもおばあちゃん嬉しいよありがとう」って頑固者の祖母が素直に私に感謝している。それが私にはくすぐったいと同時に私を幸せにする。

たくさんのお金を時間をかけて行った祖母とのバリ旅行は失敗に終わった。
でも気付かされた素朴な祖母との関係は私たち2人の時間をこれからもより豊かにするだろう。

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