読書感想 蛍川 宮本輝


どんなタイプの小説でも選り好みせず読むほうですが、「(やや)古典」の「純文学」の作品は、久しぶりに読みました。1977年の作品。

最近は「破門」「黒牢白」や「テスカトリポカ」「さくら」といった、やや読みやすい小説を読み続けていたのでどうだろうな、と思いながら読み始めましたが、「最も引き込まれた」し、「最も読みやすかった」といっても過言ではない。まあ、宮本輝の作品自体純文学、とはいえ随分読みやすい作品が多いわけではありますが。

何よりも改めて感じ入ったのが、昨今の、それなりに評価されているエンターテイメント作品に比べても、圧倒的に「構成」がしっかりしていて「リアリティ」が素直に体に入ってくる、という点。まあ、奇想天外な展開が必須なエンターテイメント作品ではどうしてもリアリティーラインはぐっと下がるのですが、とはいえそのラインが「グラグラ揺れている」感じがしてどうしても若干のノイズになってしまってやや読みにくい。そういうことが全然感じられなかった。

一言でいえば「きちんと書かれている」。そういう感じがしてとても好感を持ちました。

昭和30年代の富山が舞台なので、僕が生まれる前(43年生まれ)のお話。その当時の情景が、華麗な表現でありながら、しみじみとリアルに思い起こされる筆力も素晴らしく、「原作映画でどのように表現されるか見てみたい!」と強烈に思いました。

「人生の時間は限りがあるのだから、やっぱりきちんと書かれた小説や、きちんと撮られた映画を見ていきたいものだよなー」としみじみ思ったのでした。

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