「全国旅行支援キャンペーン」はだれのため?

Go toトラベルの時もそうだったけど、「全国旅行支援キャンペーン」が始まってからホテルの宿泊費が明確に上がった。

「キャンペーンに合わせた便乗値上げ」がだいぶん議論されている様子だが、その多くは「便乗値上げを糾弾する意見が多いがそれはナンセンス。需要に応じて価格が決まるのだから、価格が上がっても当たり前」という論旨を張っているように見える。それはそうなんだけど、それは「議論の論点が違う」のじゃないだろうか。

ダイナミックプライシングを導入していれば、「全国支援キャンペーンで旅行代金が安くなる」と思い込んだ人が殺到して需要が高まり、それに応じて価格が上がるのは、当たり前だ。旅行業者もホテルも、(資本主義の中では)悪いところはどこにもない。
キャンペーンによって誰が得しているか、といえば、明らかに旅行業界で、「キャンペーンの目的」は「コロナでたまった国民のストレス発散」ではなくて「コロナで疲弊した旅行業界の救済」なのだから、その目的にも完璧に沿っている。

問題なのはやり方だ。

旅行業界救済が目的なら、もっと直接的なやり方で「資金援助」なり「低金利融資」などを行えばいいと思う。複雑な制度設計を行い、利用者を巻き込むことによって、膨大な無駄が生まれてしまう。無駄、というのは言い方を変えると「(必ずしもコロナで被害を受けていない)誰かの懐に落ちている」ということでもある。原資は当然ながら「税金」。直接救済だとやり方によってはよくわかっていない人からの「非難」が大きくなるかもしれないけれど、それとこれとは別問題。政治、行政には大事な税金を最も効率の良いやり方で利用する義務が当然あるし、きちんとわかるように説明する義務もある。

Go toの時もそうだったが、今回もキャンペーンが始まったとたん感染者数が増加に転じてしまった。キャンペーンのせいなのかたまたまなのかはおいておいて、そうすると想像に難くないことだが「キャンペーンのせいだ」という非難にさらされてしまうことになる。ただ単に旅行業者をダイレクトに救済すれば、そんな非難とも無縁だ。

コロナで痛手を被っている業界は旅行業界だけではないし、無理な救済が大局的には経済を弱めることにつながると思うので、個人的には、「なんの手も打たない」のが一番いいと思っていますが。

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