私には、何もなかった。 好きなことも、やりたいことも、 ウイルスが流行ってる訳でもないのに年中マスクで学校へ通い、なにかと周りの子に合わせて、遊んで、ぼーっと生きて、大した思い出もなかった。 小学五年生のある日、同級生の多い公園へ向かった。 いつもは鬼ごっこしているけれど、今日は違った。 みんなは、スマホを持った子を囲んでいた。 私もその輪に入ると、その子は「ボカロ」を流してくれた。 私は聞いたことがなかった。音楽なんて、親がカラオケで歌ってるので知るくらいだっ
初詣。私は今年受験生。父に神社に連れて行ってもらい、だるまを買ってもらった。本物のだるまを見るのは初めてだった。家で白い箱を開けると、真っ赤なだるまがいた。机に置き、だるまをみた。 おかしい。私の知っているだるまではない。顔が福笑いのようだった。思わず「え。」と声を出すと、泣き声が聞こえてきた。聞こえるはずのないだるまから。縁起がいいというだるまが泣いていたのだ。だるまは、手足が腐って無くなったというのだ。私はそんな話を信じず、面白い顔につい笑ってしまった。気の強そうなだる
僕は今日も疲れて空を見上げた。 あぁ、なんでいつも空はこんなにも明るいんだ。 晴天の空、僕とは正反対。 「…え」 何かが… ポトッ 落ちた。 「ごめん。大丈夫？」 野球帽をかぶる少年。練習でもしてたのだろうか…。 「あ、大丈夫」 今日も僕は俯いて家に帰った。 （あの少年は楽しそうだったな…。） 僕は今日も疲れて空を見上げた。 特に今日は散々で、家に帰りたくない。 今日は今にも雨が降りそうだ。 「流石に家にかえ…」 誰かの泣き声。 昨日の少年だ
ブルーインパルス。僕が乗るはずだった。 僕は二十歳で結婚し、息子もできた。憧れのパイロットにもなり、夢のブルーインパルスまで少しのところだった。ブルーインパルスの訓練で僕は事故にあった。目指す青い空は一気に嵐となったのだ。 命が助かっただけでも奇跡だったらしい。しかし、僕にとって体が自由に動かないことは死と同じだった。僕は絶望した。部屋にこもる日々。息子が学校の話をしていても、聞く気にはなれなかった。 僕は月に一度だけ、妻に車いすを押されて病院に行く。 久しぶりに見る
ジュリエットが仮死状態から目覚めたとき、ロミオは死んでいた。 ジュリエットはロミオが生き返ることだけを望んだ。有名な医師に手あたり次第お願いに行った。 「お金ならいくらでもある。ロミオを生き返らせて」 何人に言っても何日かけても帰ってくるのは同じ言葉。 「お嬢様、それは不可能だ」 しかし、ジュリエットは諦めなかった。 数か月後、マーネーという男から「私に不可能はない」と手紙が来た。 ジュリエットはその男を信じて会いに行った。 マーネーは背も鼻も高く、the理想
