見出し画像

人生で初めて「DLsite」を利用して泣いた

 一つ前の記事で「書を捨てよ、町に出よう」と言ったそばからダウンロードコンテンツサイトの話ですか。意志が弱いんですね。

 冗談はさておき、

 この前、あるきっかけがあって初めて「DLsite」というサイトを利用しました。今回はこのサイトを利用した感想を書いていこうと思います。

DLsiteとは何ぞ、利用したきっかけ

DLsite(ディーエルサイト)は、日本の企業・株式会社エイシスが運営する同人(同人誌・同人ゲーム)、PCソフト(パソコンゲーム・アダルトゲーム)、電子書籍等のダウンロード販売サイト。
出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」

 きっかけはある声優さんにハマったことで、普段アニメを見ない私ですが、声に癒されるってこういうことなんだな〜、と今更ながら知り、更なる癒しを求めたいという欲求がおさまらず、そういえば以前あるVtuberの方が「DLsite」なるサイトを利用しているという話を切り抜きで見たことを思い出し、さっそく検索。こういう、いわゆる「同人作品」的なコンテンツを利用することがない人生だったのでどぎまぎしながらサイトを閲覧し、その中で「ボイス・ASMR」というカテゴリーを発見し、いろいろ見てみた。

 親切なことに、有料作品には「サンプル」があって、試し聴きができるようになっていた。初めて利用する人にも親切なサイトだわ、とか思いながら気になる作品のサンプルを聴いたり無料でダウンロードできるものを視聴したりしてみた。

 私がサイト内で閲覧していた作品は、大体が成人向け、エロ系の作品だった。 私がハマった声優さんというのが渋くてセクシーな声の方だったので、包み隠さず言うと少しエッチな音声を欲していた。なのでそういうちょっとエッチ系で気になったのをとりあえずポチポチカートに入れて、その中から買ってみようと決めた。

 そしていざ、購入したのが、一つは成人向けのアレなやつで、もう一つは全年齢向けのものだった(いずれもボイス作品)。今回この記事を書こうと思ったのは、後者の全年齢向けの作品について、書きたいと思ったからだ。この、500円もしない作品が凄かった。

(※成人向けのアレなやつはちょっとここでは書けない、ムフフ、いや凄かったんですけど書けないです)

実際に聴いてみた

 コンビニ支払いにしたら思いっきり会社名(?)のところに「DLsite」と書いてあって、これ店員さんに会計してもらう時社名が見えてるんじゃないかと気が気じゃなかった。お客さまのプライバシーに反するのでは?

 購入してから数日、少し疲れて帰ってきた夜に、(そういえば)と思い、購入した音声を聴いてみることにした。なんとなく作品名とかは伏せようかな、って感じなんですけど、なんの作品か分かった方は「あぁ、あれね」と思ってください。(レビューがかなり多い作品なのでわかる人にはわかるかも)

 いよいよ視聴開始。導入から、男性が優しい声で語りかけてくる。どうやら聴き手(私)の女性は仕事で疲れて落ち込んでいるらしく、そんな彼女にパートナーである男性が様々な施しをして癒してあげるというもの。彼の声は暖かくて優しく、誰が聴いても不快感を与えることのない甘すぎない良い声だ。優しい声に導かれるように、私はすっかりリラックスしてしまう。

 そうして聴いているうちに、だんだんと心と身体がほぐれていき、彼の声が、言葉が、心の柔らかいところにそっと触れてきて、気付けば涙を流していた。内心驚きながら、目をこぶしでごしごしと拭きながら視聴を続けるが、彼の優しさに思わず目をぎゅっと瞑り、瞳の表面にたまった涙がちぎれた。

 彼の声をやっている声優さんももちろん素晴らしいのだが、特に脚本を書いている人の「言葉選び」が凄いと思った。ただ甘いだけの、優しいだけの言葉ではない、疲れている彼女(聴き手)が本当に心から安らげるような言葉をかけてくれる。二人のバックグラウンドもチャプターが進むにつれて明らかになってきて、その背景を知ることでより彼の使う言葉のニュアンスとか含んでる意味みたいなものが徐々に心に浸透してきて、没入感が得られるようになっている。私は只野菜摘さんという作詞家を尊敬していてその人の書く詞の言葉選びや細かなニュアンスを表現するセンスが好きなのだが、この作品の脚本を書いた人にも同じような、きらきらと惹かれるものを感じた。

 なぜ彼がこんなにも彼女に対してしてあげられるのかというのも、彼自身が彼女に救われた経験に理由があった。二人はそれぞれ社会生活を営む中で何かしらの心の傷を負っていて、ある時出会い、相手の中にある「生きづらさ」に苦しみながらも懸命に生きる姿に惹かれ合う。ここが凄いと思った。ただ優しい言葉をかけてくれる訳ではなく、彼女(聴き手)の苦しみや、やってきたことその“ありのまま”を肯定し、「そういう君だから惹かれたんだ」と彼は伝える。話している相手は架空の女性だが、聴いてる自分自身に語りかけてくれている気分になる。(そもそもそういう目的の作品ではあるのだが)
 自分なりに頑張ってはいるけれどなかなか報われない日々をまるまる肯定してくれ、彼の優しい暖かい声で「君の頑張っている姿はちゃんと見えているよ。」と言ってもらえた様な気がして、心に優しく触れられたような気がして、自然と涙が出た。今までにない体験だった。

*

しんどい日々を生きる人達へ

 この素晴らしい作品に触れて、こうも思った。
 「あぁ、みんな頑張ってるんだな。」と。

 作品の中で描かれている彼/彼女らの存在ももちろんだが、これを購入して聴いている、おそらく私と一緒で普段こんな風に甘えさせてくれる様なパートナー的存在が現在近くにいない人が多いと思うのだけれど、そんな人たちが、日々仕事や私生活で疲れてくたくたになって帰ってきてこれを聴いてるのだと思うと、孤独を抱えてるのは私だけじゃないんだと思えたし、頑張っている人達にエールを送りたい気持ちにもなった。

 人生で初めて触れたコンテンツで、まさか泣いてしまうとは。でもこの作品に出会えてよかったと思う。癒しと共に、地味で日の目を見ることのない人生でもがんばろうと思える活力をもらった。同時に、何かにすがりたくても出来なくて、不器用ながらもただ懸命に今を生きている、そんな人たちの存在にも気づかせてもらえる作品だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?