BTSの「Whalien 52」と稲葉浩志の「透明人間」の類似性について
類似する2つの曲
最近韓国のアイドルグループBTSの勉強をしてたのだけど、その中で『Whalien 52』という曲に出会った。この胸が締め付けられる感じ、なにか身に覚えがあるなと感じて思考を巡らせていたら、とある曲に行き当たった。稲葉浩志の『透明人間』という曲だ。
今回は私の感じたBTSの『Whalien 52』と稲葉浩志の『透明人間』の類似性について書く。
「Whalien 52」のモチーフは”52ヘルツのクジラ”
世界で一番孤独なクジラ
“「Whalien 52」のモチーフとなっているのが、52ヘルツの周波数で鳴く一頭のクジラ。クジラは歌を歌うことで仲間とコミュニケーションをとることで知られていますが、このクジラは他のクジラより高い周波数で鳴く唯一の個体とされています。
そのためこのクジラの鳴き声はおそらくほかのクジラには聞き取れず、「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれています。
「Whalien 52」の歌詞では歌っているのに誰にも届かない孤独な、52ヘルツのクジラと、BTSメンバーがこれまでに感じてきたであろう孤独や自分たちの音楽を認めてもらえない悔しさが重ねて歌われています。”
ー『BTS「Whalien 52」読み方と歌詞の日本語意味|テテの涙の理由は?』〈https://ami-atsume.com/bts_whalien52/〉より引用
BTSの楽曲『Whalien 52』は52ヘルツの周波数で鳴く珍しいクジラをモチーフにしている。彼らは他のクジラより高い周波数で鳴くため、他のクジラには鳴き声が聞き取れないという。そんな少し変わったクジラと、「誰にも声が届かない」人間の感じる孤独を重ね合わせて歌ったのがこの曲。
上に引用したのは、ナムジュン(RM)のラップパート。母親には「遠くまで声を張りなさい」と言われた「僕」。しかし「僕」のまわりには言葉の通じないクジラばかりだという。集団の中で自分だけが異質な存在(alien)であり、同じ種族なのに言葉が通じない、声が届かないというコミュニケーションの障害がここでは書かれている。
母親は「海は青いのよ」と外の世界の希望を話す。しかしいざ外の世界に出た「僕」に待っていたのは、じめじめと暗く、ひとりぼっちの世界だった。ここの部分と『透明人間』の詞は非常に類似してることを後に書く。
言葉が通じず、周りから完全に孤立してしまっても、“「愛してる」”と伝えたいというのが切なく、もどかしい気持ちにさせる。
「透明人間」のモデルは幼児誘拐殺害事件?
孤独な少年の心情を描く
“透明人間みたいにどこでもゆける”。「ぼく」は、教室で「透明人間」のように、まるで「居ないもの」として扱われている。冒頭では“うらやましいだろ”と虚勢を張っているが、サビでは“だれかぼくの名前を呼んで だれでもかまわないよ早く”と、孤独と寂しさを抱える少年の心情が描かれている。
この曲で描かれている少年だって、他の子達のように一緒に登校したり休み時間に遊んだりしたかったはずだ。そういう「普通」を享受できず、集団の中で孤立してしまう「ぼく」。
歌の終盤では“おかあさん”と母親に呼びかけ、悲痛な思いの丈をぶつける。「ぼく」は“最高の世界を夢に見ながら”精一杯に海(母親の胎内)を泳いだが、実際にこの世界に産み落とされた先にあったのは、自分のことを「異質」なものとして排除しようとする世界だった。自分と世界とのズレ、孤独や葛藤を繰り返したのち口を出たのは“そしてもうどこかに行きたい”という全てを諦めたかのような言葉だった。
ここの歌詞と先に引用した『Whalien 52』のラップパートは類似している。希望を抱いて生まれた1人の少年、その後の人生に生じた葛藤や孤立を両者とも描いている。『Whalien 52』の方は「それでも誰かに届くように歌い続ける」と希望が描かれているところが『透明人間』とは異なるが…『透明人間』に救いはなく、やるせない気持ちになる。
この曲は、公表されているわけではないがネット上ではある少年が起こした事件がモデルになっているのではないかと噂されている。その事件の犯人の少年は精神鑑定の結果「アスペルガー症候群」であることが発覚したと、当時の新聞で大きく取り上げられたという。
アスペルガー症候群を持っていると、学校など集団生活での奇妙な行動や言動から「宇宙人」のようだと気味悪がられ、いじめられるケースが多いという。“ズボンのポケットのナイフは少しひんやり”という詞があるが、人とのコミュニケーションがうまくできないアスペルガー症候群の人間は、その「伝えたいことが伝えられない」「普通のことを普通にできない」もどかしさから、人を傷つけしまう場合もあるだろう。本当は「愛してる」と言いたいのかもしれないのに。
神聖かまってちゃんの楽曲『Os-宇宙人』は、ボーカルであり作詞者の「の子」の実体験が歌詞に反映されている。曲名の「Os」とはの子の本名「大島」のことであり、『Os-宇宙人』とは、の子が子供の頃つけられたあだ名「大島宇宙人」から来ている。の子は子供の頃、行動や言動が周りと違うことで同級生からいじめに遭っており、その経験をもとに作詞を行なっている。この『Os-宇宙人』でも“地球で宇宙人なんてあだ名でも”という詞がある。避けられる中で1人だけ、自分のことを否定しない「あなた」がいた。たとえ電波が違くても何か掴んでくれている“あなたの事が 好き”。周りに馴染めず孤立していても「愛してる」と言いたいのだ。
深い海の底
周りと違うため孤立する少年の姿を描いた2作。ありきたりな励ましの言葉やポジティブな詞が使われた曲よりも、一緒に海の底での出来事を語り合うような、頼りなく揺れる心に寄り添ってくれる曲の方が特に落ち込んでいる時の心に響く。光の届かない、声も届かない深い深い海の底に居るときでも、手を差し伸べ、掬い上げてくれる様な曲たちに、これからも救われることだろう。
参考にしたサイト
▶︎『BTS「Whalien 52」読み方と歌詞の日本語意味|テテの涙の理由は?』
〈https://ami-atsume.com/bts_whalien52/〉(2022.09.16)
▶︎【BTS 日本語字幕】Whalien 52(花様年華 Live on Stage Epilogue)
〈https://youtu.be/45WuXba8X30〉(日本語訳詞引用)
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