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ネーミング。しぼりだすか、降ってくるか問題。

 結論。ネーミングは、突然、降ってきたときの方が、しっくりくることが多い。「YouTuberになった高校野球監督」。諸般の事情でお蔵入りになった著作のタイトルである。
 83歳まで現役高校野球監督を務めた、広島県立竹原高校・迫田穆成さんの野球人生を描いた著作である。時代に合わせた変幻自在のマネジメントの象徴がYouTubeだった。83歳の老将が、高校生とのコミュニケーションに駆使したのがYouTubeだ。選手たちはスマホ越しに、偉大な指揮官の考えを、繰り返しでも聞ければ、リラックスした状態でも耳にできる。
 最終的には「生涯野球監督迫田穆成 83歳、最後のマジック」で落ち着いたが、あのタイトルで書店に並べてみたかったものである。

「へやのみ」 このコンセプトは、コロナ禍に、屈してしまった

 番組名では「へやのみ」である。カープ田中広輔選手、福井優也投手と、ホテルの一室で飲みながら、話すだけ。そのコンセプトが4文字に凝縮でき、ひらがなにすることで親しみやすさも残すことができたと自負する。
 スタッフで集って、キーワードを書き出して、並べて、議論して。このパターンで記憶に残るタイトルを生み出せたことはない。
 方針にすり合わせよう。選ぼう。組みあわせよう。こうなった時点で、記憶に残るエッジはなくなってしまうのだろう。

新刊「轍学」の取材に応じる、広島ドラゴンフライズ朝山選手

 今回は、降ってきた。「轍学(てつがく)」だ。トークショーの最中に、降ってきた。強烈な信念を持つ、バスケットボール・広島ドラゴンフライズ・朝山正悟選手。彼の言葉力について、同僚の寺嶋良選手がトークショーで語った。
 「朝山さんの言葉は、ほんと、心に刺さって。僕たちに強烈な影響を与えます。書き留めるくらいです」
 そんな言葉に司会の私は「もう、釈迦、ブッダ、バイブルの域ですよね」と応じた。その時点で、頭には「哲学」ときた。しかし、少し捻りたい。漢字辞書を見ると「轍学」に決めた。崇高というよりも、ちょっと泥臭く、でも練られた朝山の言葉を象徴している気がした。
 放送番組などは、前任路線の引継ぎなどで、なかなか自分でタイトルを決めるチャンスは巡ってこない。一方で、著作。苦しみながら名前を付ける快感は、上品な例えが見当たらないほどである。


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