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1年半かけて作ったオンラインFPSゲーム「QUICAL」が失敗した話

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自己紹介

どうも皆さんこんにちは、普段ゲーム開発をしている大学生の坂すたじおです。最近は専らオープンソースの工業ゲーム「moorestech」の開発をしています。リポジトリにいいねしてくれたらうれしいです。ついでにDiscordサーバーに入ってくれると嬉しいです。

なぜこの記事を書くのか

私はFPSゲーム開発の過程をゆっくり実況にして投稿しているのですが、その影響か私と同じようにFPSゲームを開発し始める方が散見されました。

人の人生にワンチャン影響できるレベルのことができたのだなぁーと思いつつ、作られている方の中にはテスターが集まらなかったりして悩んでいる方がいるのを知りました。

そのため、私がどんな過程でQUICALを開発してきたかをつらつらと書いていこうと思った次第です。なにかの参考になれば幸いです。

QUICALの概要

QUICALは2021年2月23日にリリースしたオンラインバトロワFPSゲームです。2019年8月から開発を行なっていました。

ゲームシステム

1. 短時間、少人数バトルロイヤル

このゲームは8人の少人数で戦います。
8人にした理由は、人口が少なくてもプレイ出来ること、単純に優勝する確率が上がることなどがあります。

2.バトロワのルール

この他のバトロワのようにエリアが縮まる訳ではありません。前半と後半に別れており、前半はリスポーン可能でキルをするとポイントが増え、デスするとポイントが減ります。後半になるとリスポン不可でエリア収縮が始まります。前半に稼いだポイントはHPに還元されます。

3.ロードアウトシステム

このゲームは他のバトロワと違い、武器をその場で調達するのではなく、武器とパークを出撃前に設定し、試合中にそれを使うことができます。

QUICAL史概要

ここではQUICAL開発の中でいつ何が行われていたかを説明します。

2019年2月~2019年8月 The Core Royal時代

実はQUICALの前身となるゲームが存在します。このゲームは2019年8月頃から半年くらい開発を行っていました。ゲーム内容としてはHypixelのベッドウォーズみたいなFPSゲームを目指さしていました。

ベッドウォーズを簡単に説明すると、自分のベッドを守りながらアイテムを取って、相手のベッドを壊すPVPゲームです。

このゲームは半年ほどで開発をやめたのですが、主な理由は技術力不足とFPSとベッドウォーズはあまり合わないことがわかったためです。ただ、この時身に着けた技術はQUICALに生かされます。

2019年8月〜 QUICAL開発スタート

The Core Royalにも使用していた「MFPS」というアセットをベースに本格的に開発を始めました。

追記 この時選定したMFPSはコードの品質が低く、アセットそのものバグだらけで、ちゃんと使えるものではありませんでした。皆さんもアセットをベースにゲームを開発する際は、アセットの選定をよく考えてください。私はこのコードの品質の低さと元々存在するバグに大変苦しめられました。実際開発工数の1/5くらいはアセットに存在するバグの修正でした。

この頃のコンセプトは「HypixelのSkywarsみたいな戦略の自由度が高くてすぐに終わるFPSバトロワを作りたい!」という感じでした。

この頃はリリース時のようなシステムではなく、普通のバトロワのように武器を拾い、エリアが収縮し、最後のひとりになれば勝ち、といったものでした。パークなどのシステムは最初から導入しようと思っていたので、メニュー画面でパークの入れ替えはできるようにしていました。

2020年1月8日 ニュース掲載+バズった

バトロワのゲームシステムの開発に難航している中、一応Steamのページを作っておこうと思って割と適当に作ったストアページがなんとGameSparkさんに取り上げられました。

Discordに入っているコミュニティでニュース記事になってることを知り、当時はめっちゃ嬉しかった記憶があります。

そしてそのことをツイートしたら

5000RT 15000いいね

バズりました。

この影響で一気にDiscordサーバーの参加者やテストプレイヤーが増え、バグ報告などもたくさん来ました。おかげでテストプレイなども捗りました。

2020年5月 クラウドファンディング実施

マーケティングを兼ねたクラウドファンディングを実施しました。

結果は大成功。目標の4倍の額が集まり、ニュースサイトにも取り上げられ、Discordの参加者数も増え、知名度を伸ばすことができました。

2020年6月〜2021年1月 QUICAL迷走時代

クラウドファンディングも終わり、この間は目立ったイベントなどもなくコツコツゲームを作っていました。

しかし、そもそも当初のコンセプトが明確に定まっておらず、どのようなゲーム体験を提供するのか、どのようなグラフィックにするのか、何を追加し、何を削ぎ落とすのか、何にこだわるかなどを明確に決まっていませんでした。そのため、これを追加したらいいんじゃないか、あれを追加したらいいんじゃないか、なんて話を無限にしていました。

もちろん、必要な機能の実装やバグ修正も行なっていたので、この期間の作業が全て無駄、というわけではなかったですが、とはいえかなり多くの時間を無駄にしたなと思っています。

きちんとコンセプトを設定し、提供したいゲーム体験を考えておけば、無駄な工数を減らせたのかなぁと思っています。

2021年1月〜2021年2月 クローズドベータテスト

ここで、クラウドファンディングで支援していただいた方限定のクローズドベータテストを実施しました。

この段階でも「やっぱこのゲーム面白くないよなぁ」という話をしていました。しかし、FFAやチームデスマッチはそれなりに面白く、そのゲームプレイをバトロワに持って来れないか?なんてことを考えていました。

そこで考えついたのがポイントシステムです。QUICAL概要でもお話しした、前半のリスポーン可能でポイントを奪い合うフェーズがそれです。この段階でやっと現在のポイントシステムを導入したバトルロイヤルシステムができ、バトロワモードもそれなりに面白いゲームプレイができるようになりました。

開発終盤にゲーム性が確定するという、非常に致命的な状態となっています。迷走時代がなければもっと早く面白くなっていたのかなと思っています。

2021年2月 オープンベータテストの実施

誰でも参加できるオープンベータテストの実施を行いました。テスターの募集はリツイートキャンペーンで行いました。RT+フォローでPS5が当たる!的なアレです。

これでプロモーションにもなるし、フォロワーも増えるし、テスターも集まるし、いい方法だなぁと思っていましたし、実際4000RTぐらいされて大成功でした。

ただ、いっても500RTくらいかなーと思ってたので配布するためのキーが足足りない、一日のDM送信制限に引っかかりキーが送信できないなどの問題が発生しました。

DM送信制限については1日たてば戻りますが、キーはSteamに問い合わせて承認してもらわないと発行できないため、ツイートしてからキーが行き渡るまでかなり時間がかかってしまいました。

また、キーの発行数も2000個ぐらいまでしか発行できず、2000人くらいの人が参加できませでした。

2021年2月23日 リリース

とうとうリリース日です。ちなみに、オープンベータの日程はリリース日から逆算して、近い日に設定しました。

理由としてはオープンベータで知名度をあげ、その知名度を保ったままリリースできればいいなーと思ったからです。

2021年2月23日〜 

さて、満を辞してリリースされましたが、実際の売り上げ本数は300本程度でした。この程度の売り上げ本数ではオンラインゲームのプレイ人口を維持することができません。人がいないゲームは売り上げが伸びるはずもなく、かくしてこのゲームは失敗したわけです。

失敗した原因

さて、ここからは失敗した原因について、いくつか考えられることを挙げていこうと思います。

1.完成度が低かった

単純に完成度が低く、見た目のインパクトがあまりなかったために、「買いたい」と思わせることができなかったということが挙げられます。

ゲームシステムやルール、ゲームプレイは悪くなかったと思っています。ですが、モデルやエフェクトはチープで、視覚的にインパクトがありません。

モデリングができず、3Dモデルをアセットに頼っていたことで、マップ作成の幅が持たせられず、特別グラフィックがきれないわけでもない、どこかで見たことあるような感じのゲームになってしまいました。

また、使用したアセットの品質が低く、致命的なバグの修正に多大な時間がかかりました。具体的なバグとして、敵が透明になり一方的に撃たれるというバグがそこそこの頻度で発生しました。

これはFPSゲームとしてはかなり致命的な状態で、絶対に治さなければいけません。このようなバグの修正に1ヶ月ほどかかり、かなりの時間をロスしてしまいました。これはアセット本来のバグで、もっと品質の良いアセットにはこのような致命的なバグは少ないと思われます。

アセットの選定をもっときちんとしておけば、余計な部分に工数を割かずにすみ、より完成度が上がっていたのかなと思います。皆さんもアセットを使う際はコードを軽く読んでみて、使って良さそうかを判断すると良いと思います。

2.オンラインゲームの割にはリリース前の知名度がなかった

オンラインゲームを運営していくには、それなりにユーザー数を獲得する必要があります。同時接続数で常に1人のユーザーが欲しければ、DAUだとその20人、MAUだと400人が必要だと言われています。(出典 Photon)

8人のゲームを安定的にマッチングさせたければ、同時接続数で5倍の40人くらいは欲しいものです。そうなると、DAUで800人、MAUだと8,000人が必要です。また、様々なゲームをSteam chartで見たところ、アクティブユーザーは購入ユーザーの10%程度でした。そのため、売り上げ本数で言うと80,000本が必要になります。

残念ながら、80,000本も売り上げられるだけの知名度はありませんでした。

これだけ売れるだけの知名度で言うと、相当な知名度になります。

Steamでの初年度の平均売り上げ本数が1500本であること(出典 Mike Rose)を考えると、80,000本売ることがどれくらい厳しいことかわかります。

3.ストアページを凝らなかった

Steamでゲームを探して初めて見るのがバナーです。このバナーで「面白そう」と思ってもらわないとまずストアページを開いてもらうこともできません。

ストアページを開いてもらっても、PVやスクリーンショットが面白そうでなければすぐにストアページから離れてしまいます。特に、PVはストアページを開いてから一番最初に流れるものです。

PVを開いてから最初の10秒で「面白い」と思わせることができなければ、そのユーザーがゲームを買うことはありません。(出典 ひろはす ゲームクリエイター養成所

このPVはストアページを作る上でもかなり重要な位置にいますが、これをきちんと作りませんでした。その結果、ページを開いた人に面白そうと思ってもらえず、売り上げを伸ばすことができませんでした。

4.有名タイトルのリリースと被った

Steamでインプレッションを得る方法の一つとして、「話題の新作」に食い込むという方法があります。話題の新作は、Steamのトップページに表示されるランキングのようなもので、ここに入るとインプレッションが増え、売り上げが増える可能性が上がります。

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QUICALもリリース日は話題の新作の一番上に来ていました。しかし、次の日に多くの人が知っている有名タイトル(名前は忘れました)がリリースされ、話題の新作2位に、3日目にはもう出ていませんでした。

これ以降、インプレッションが増えることはほとんどなく、当然売り上げも上がりませんでした。

じゃあ有名タイトルと被らなければ成功していたかといえば、そんなこともなかったと思います。失敗した要因ではあったと思いますが、割合で言えば10%程度だと思います。そもそもリリース時点の知名度がなかったので。

5.値段が高かった

発売時の値段は1700円でした。この完成度の低さにしては高かったと思います。適正価格は500円くらいですかね。

じゃあ500円で成功していたかといえば、そんなこともなかったと思います。失敗した要因ではあったと思いますが、割合で言えば10%程度だと思います。そもそもリリース時点の知名度がなかったので。

まとめ

ここまで読んでいただいてありがとうございます。何かの参考になれば幸いです。

クラウドファンディングの成功や、ニュースサイトに取り上げられるなど、一見成功してそうなゲームですが、裏では紆余曲折しながらリリース間際までゲームが面白くなかったり、マップをめっちゃ1ヶ月かけて頑張って作ったけど結局ボツになったり、ゲーム自体が失敗したり、色々ありました。

皆さんが開発しているゲームでも、ゲームが面白くない、バグがたくさん出る、なかなか完成しないなどの悩みがあるかと思います。

しかし、そういったことはゲーム開発にはつきものです。これらを乗り越えて、ゲームはできています。私も大小200個近くのバグを修正してきました。

皆さんのゲーム開発に対する悩みは、私も経験していますし、他のゲーム開発者さんもきっと経験しています。なので、そのようなものだと諦めて、悩まずひたすらゲーム開発を続けることが重要なのかなーと思います。

それでは

有料部分には私が一番好きなラーメン屋を書いておきます。
札幌にあるので現地民の方や旅行に来た際はぜひ

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