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構造の奥で鯰退治③

 鯰退治で一番知られているのが、鹿島神宮の武甕槌の要石ですが、武甕槌の名前の中には甕(ミカ)という字がある。甕は以前にも話した通り、お酒を入れる器であり、雷(イカ)と甕(ミカ)が同義語であることから、鯰退治に於いて甕(お酒)は剣でもある。この甕というキーワードから、鹿島神宮からほど近い、日立にある大甕神社を調べてみると、甕星という星の物語と国譲り神話の話しが見えてくる。

「日本書紀にある神代に、下総国一宮である香取神宮の祭神と常陸国一宮である鹿島神宮の祭神の二柱が邪神をことごとく平定しましたが、甕星香香背男(みかぼしかがせお)だけは従わず、そこで倭文神武葉槌命(しとりがみたけはづちのみこと)が遣わされ、香香背男の霊力をこの宿魂石に封じ込めた」と伝えられています。

日立市公式サイトより

大甕神社の御祭神である、この二神の関係は、

織物の中に星を織り込み、
星の神を織物の中に封印した

と記され、倭文神健葉槌命は織物の神として、甕星香々背男は星の神として、この物語には描かれている。

石と化した甕星香々背男
大甕神社

この物語は、国譲り神話として語られているが、神々の名にあるように、星の物語や要石の物語としても見ることができる。

そして国譲り神話の冒頭には、天稚彦と下照姫の物語があるが、下照姫を祀る一宮が倭人神社であることから、倭文神健葉槌命への流れを国譲り神話の中で引き継いでいることが分かる。このことから、国譲りの一連の物語には、天と地を繋ぐ星の物語が描かれているのではないかと考えることができる。

倭人神社・倭人(しずり)については後々「機織=反物」をテーマで書きたい。

 国譲りといえば、建御名方命(タケミナカタ)と武甕槌(タケミカヅチ)の戦いとなるが、この一連のお話しも、建御名方命が諏訪から出ないことを条件として、諏訪大明神となり、諏訪の神となるが、このお話しも建御名方命という存在を星・要石として、諏訪の地に止らせたということではないかと考えることができる。建御名方命は最後まで抵抗した神として、大甕神社の甕星香々背男と同一視もされており、神仏習合では、北極星を神格化させた妙見菩薩の化身ともされている。

 諏訪明神とは、憑き神であるミシャグチ神であり、蛇神であり、星の神である。諏訪大社の神事である御頭祭では、七・八歳の男の子が要石の上に惹かれた葦のござに鎮座し、この要石に宿ったミシャグチ神を、少年に憑かせるという神事を行なっている。その少年が頭に被っているのが倭人(しずり)の布であることも驚きである。この倭人(しずり)の布はカジの木の皮から製造されるが、カジの葉は七夕の飾りとして使用される植物でもあることから星と関係が深いことが分かる。

諏訪大社・御頭祭

倭人神社・諏訪大社・鹿島神宮・大甕神社という星の物語を追いかけてみると、そこには国譲り神話という共通性の中で、星の物語を見ることができる。この共通性を結びつける構造として「甕=酒」「星=蛇」「要石=磐座」「機織=反物」が存在し、これらは神事を行う際に必要な「神具」であり「神」なのだと考えて良い。

似たような構造を持つ物語で、頭の中の整理が必要になりそうだが、「甕=酒」「星=蛇」「要石=磐座」「機織=反物」という共通性を拾いながら、引き続き構造の奥で鯰退治を進めて行きたいと思う。


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