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焦燥感という名の闇の中でその男が踏み出したのは先の見えない階段-弱虫ペダルSPARE BIKE 荒北靖友 1 読後感想-

原付バイクで福富寿一のロードバイクのスピードに挑み敗北した荒北靖友はリーゼントを切り落とした。
勝負のあと福富は荒北にロードバイクを貸す。満足していないならこれを持って部室に来い、と。
福富のロードバイクに乗る荒北。湧き上がる自分の限界はこれじゃないという気持ちを押さえられず自転車競技部の部室を訪れる。
速くなりたい、という荒北にどこまで行きたい?と問う福富。荒北は迷わすてっぺん、インターハイだと答える。


箱根学園随一のエースアシスト荒北靖友の物語です。本編でも語られていた荒北靖友の過去。本編では再起不能の故障で野球をやめ、荒れていた荒北がロードバイクの福富に原付バイクで勝負を挑み敗れたことが描写されています。(弱虫ペダル 21巻)ここではその後の話、自転車競技部に入部したての頃が描かれています。

自分が何者でもない焦燥感、苛立ち。それを周りにぶつけリーゼントで武装していたのが福富寿一と出会う前の荒北でした。
リーゼントをバッサリ切り落とすところから話しがはじまります。

荒北に眠る力に気づいていた福富。福富の人を見る目は確かという以上に神がかってます。出会って間もない荒北の目にともる何かを感じ取り、なんの躊躇もなくロードバイクを貸す。大切な物を貸すという行為は相手を信じ、貸した自分を信じないと出来ない事だと思います。人を信じる強さが福富の魅力だと思います。

荒北はロードバイクに乗って前に進むようになって気づきます。自分の限界はここではない、もっと先にあるはずだ、と。
自分の限界の先を見るため、てっぺんを取るために荒北はロードバイクに乗ることを決めます。そんな荒北にできるわけがない、と”現実”を説く自転車競技部の先輩。その”現実”をひっくり返す、と荒北は応じます。
”現実”をひっくり返すため、てっぺんに登るためひたすらローラーを回す日々がはじまります。

荒北は焦燥感でいっぱいの自分がそこから抜け出す一歩を”階段に足をかけた”という表現をしています。それを見てあるゲームを思い出しました。
ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々~です。
終盤ロンダルキアへ続く洞窟。何度全滅しても抜け出す方法が分からない無限ループの部屋。迷う中でじりじりへるHPとMP。自分のHPとMPも0になりそう。もうダメかも、今回も全滅する…そんな中で階段を見つけた時とてもほっとしたのを今でも思い出します。

出口かは分からない。この先も無限ループに陥るかもしれない。でも今のループから抜け出すにはこの階段を登るしかない。荒北はその一歩を踏み出します。

荒北靖友 2へ続く。

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