小説:初恋×初恋(その4)
「相川さんはずっと福岡なんですか?」
返事は無かった。前方の一点を凝視し、意識の奥で何か他の事を考えている。でも私はそんな沈黙には耐えられなかった。元来、喋り好きなのだ。だからシェアハウスもやっていけた。色んな人達と話しをした。色んな人生を知った。私の人生以外の他の人生だ。私はそんな話しを聞くたびに、強い関心を持った。他人ではいられなくなった。やがて同化し自分がその人生を生きた気になった。豊かな人生を歩んで来たかの如く勘違いをした。しばらくするとそれが勘違いである事に気が付く