きみに呪いをかけたい

きみのことが、本当に大好きだった。

きみにその気持ちが届いていたのか、届いていなかったのかは分からないけれど、直接はもう届けることができなくなってしまったので、いつか、気付いてくれたらいいなと思いを込めて、どれだけきみのことを好きだったのかを書き溜めて呪いをかけたい。


きみと食べるごはんが好きだった。

ご飯の約束をするときは大抵、何が食べたい?と聞いてくれたね。きみは何がいいのと聞き返して、答えが返ってくるのは10回に1回くらいだったかな。わたしが食べたいものを決めるまで、適当に車を走らせてくれて、決めたお店がそこから更に向こうでも、通り過ぎた道でも、嫌な顔しないで連れて行ってくれるきみがだいすきでした。一緒にいた時間の中で、運転している姿を見ている時間はかなり長い方だったかなと思います。きみがハンドルを握る姿がすきでした。駐車が上手なところも、運転しながら握ってくれる手も、赤信号になるとキスしてくるところも。そのせいか、きみは右側、わたしは左側が定位置だったね。

ごはんを食べに行くと、いつも似たようなメニューを選んじゃうところもすきでした。お互いにメニューを隠して、せーので食べたいものを発表したこともあったね。辛さの感じ方も似てて、美味しいなと思う味も似てて、そう感じるたびに胸のあたりがくすぐったかった。いくつかのメニューで迷っていると、わたしが選ばなかった方を選んで、半分こしてくれたね。いつからだろう、食べさせてもらったり、食べさせたりすることが自然になったのは。当たり前のように、相手にスプーンを差し出すようになっていたけれど、実はずっと嬉し恥ずかしで、照くさかった。それも忘れたくない思い出のひとつだな。

お好み焼きを作るのも、しゃぶしゃぶを仕切るのも、焼肉を焼くのも、みんなきみの役目だった。楽して美味しみたいわたしのわがままを笑顔で聞いてくれたね。めんどくさがりなわたしの面倒をとことん見てくれるときに、呆れたように笑ってたけど、目が優しくて、はいはいって言われるたびにすきになってた。

外に飲みに行くのもだいすきだった。焼き鳥屋さんに行くことが多かったね。焼き鳥、昔は好きじゃなかったけど、きみのおかげで好きになったし、食べられる種類も増えた。お酒を飲みながら、真剣に仕事の話をするきみもすき。こんなに一生懸命に働いてる人がいるんだから、負けていられないなと思ってた。きみに見合う人になりたくて、負けないくらい一生懸命仕事をしたいと思って頑張ってきた。おかげで、仕事も前よりすきになったんだよ。

たくさんのものを一緒に食べたね。なにを食べてもきみを思い出すから、びっくりしちゃう。一緒に行ったお店もたくさん。どこに行っても、きみのかけらが落ちてる。思い出すたびに、見つけるたびに、きみの笑顔が浮かんでくる。

ほんとうに、きみと食べるご飯はいつもおいしかった。だから、だいすきだった。(実はまずい時もあったよね、あの時のラーメンの美味しくなさはきっときみも同じだったはず)

またご飯くらい行こうと、最後の手紙に書いてあったね。もしかしたらきみも、わたしと食べるご飯がすきだったのかなと、わたしはまたきみを好きになりました。

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