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誰かになって世界に挑むVR×物語「グッバイリアル」制作秘話

作品概要

本作「グッバイリアル-proto-」はVR-TRPGサークル「ぐだぐだぶとん」と東京大学VRサークル「UT-Virtual」によって制作された、clusterゲームワールドだ。2022年2月にプロトタイプとして公開され、現在は開発中止となっている。

総評

結論から先に書くと、このゲームはプロトタイプとして見ればかなり面白いが一つのゲームとして見るとゴミ。神ゲーになる資格はあったかもしれないがそこまで作り込めていない。お前(俺)の作品おもんね~~~~(度々聞こえる幻聴)

作品コンセプトは良さげでゲーム性もあり、一応複数人で何度か遊べる。しかし、作品コンセプトを完全には達成できていない、ゲームの量(ストーリー量)が足りてない、動線が雑・動きが少ないなどの問題がある。

そんな感じの「グッバイリアル-proto-」だが、制作中の思考や作品解説などを以下で行っていこうと思う。

作品コンセプト:誰かになって世界に挑む

VRで異性の肉体に入る事で異性への理解度が増す、そういった話をどこかで聞いた事があるだろう。

しかし、対象への理解度増加の為に障がい者や異性の肉体を使うのではなく、「VRで他人を理解する」をエンタメとしてもっと親しみやすい形で使ってやる事はできないだろうか。そんな考えから「グッバイリアル」の制作はスタートした。

「グッバイリアル」は、他人の人格と肉体を与えられ、自由な選択ができるようにしたら、プレイヤーはより深く世界に没入できるのかを試すゲームだ。

これはVR-TRPGでは限界があった。人格と肉体を与える事でプレイヤーに特定のキャラクターを強制的に演じさせる事に抵抗がある。マーダーミステリーやLARPも近いようで微妙に方向性が違う。〇〇風ゲームという名称にしても良かったのだが、今回はVRSNSらしいゲームの新規開拓も目指していたので変な名称「誰かになって世界に挑むVR×物語」となった。なが。

小話

しかし、残念ながらプロトタイプでは「グッバイリアル」専用アバターや衣装は公開されない。作品を十分に楽しませる事ができないのは申し訳ない。

VRSNSらしいゲームの開拓

本作は「自分のアバターが使えない物は遊ばない」というVRSNSでたまに見かけられる主張に対抗しに行く作品でもあった。

肉体と人格を与えられながらも「○○をしろ」といった命令を減らしているので、アバター(自己の一部)とアバターの活用(自分の可愛さを楽しむなど)に制限があっても自発的体験(他人の気持ちを考えて自分で行動する)ができる。

そして複数人でのロールプレイを扱う事で、コミュニケーションのプラットフォームであるVRSNSらしいゲームとなる。VRのゲームではなくVRSNSのゲームだ。(まあ結局アバターは用意できなかったが)

誘導役としての猫
「グッバイリアル-proto-」において猫は、プレイヤーが選択を行う場面では分裂し、プレイヤーにある程度動線に沿って探索して欲しい時はそちらの方を見て視線誘導をする存在である。プレイヤーの自発的体験のためにゲーム中のメタ的な誘導を避けなくてはならなかったのだが、猫はこれを解決してくれた。
clusterの2022年2月のお題企画「大にゃんこ祭」-「猫」をテーマにしたワールドを制作しよう!-を見て追加した。こういう外部刺激は、垂直思考でシナリオを書いてると出てこない内容を思いつかせてくれるので非常に助かる。改めて考えてみると犬より猫の方がしっくりくるし、結構良かったのでは。

大きい・多い・身体性

先程は「VRSNSらしさ」の話をしたが勿論「VRらしさ」も重要だ。本業(?)のVR-TRPGを作っている時にクソほど言われるが、そこらへんの議論は別の記事でちょっとやっている。

「VRらしさ」を考えるにあたって重要視したのは「そこに自分がいる事」であり、一人の人間としてその場にいるのであれば、大きい・多いはVRにおいて効果的な演出になる。

また、身体性も欠かせない。自分がその世界にいる事を実感する為には世界との相互作用が必要なのだが、ただボタンを押して物語を進めるだけでは微妙だと「ハローバーチャル」の制作で実感した。
ということで現実の肉体とVRの肉体をリンクさせた動きを要求する事を意識して作っている。詳しい話は該当箇所で。

ストーリー解説

「グッバイリアル-proto-」のストーリーを追いながら、シナリオ制作・演出の話もちょっとだけする。

国際現実軍拠点

優秀な兵士諸君。よく集まってくれた。
本作戦部隊は仮想管理AI『REAL』の破壊を目的として集められた。作戦コードは”ヒドラ”。以降はコードと番号で君たちを呼称する。
初対面の者もいるだろう。作戦の説明の前に各自簡単な自己紹介をすると良い。

司令官のセリフ

自分がなるキャラクターを選択した後、そのキャラクターの人格に目を通す事になる。

一癖も二癖もありそうなキャラクターだが、これで良い。「演じやすい=キャラ設定が浅い」では無いのだと制作中の試行錯誤で実感した。(これでもまだ全然足りない)

では、作戦概要を説明する。諸君らは時限式核爆弾「スフィア」と共にギガロポリス東京内に存在する仮想管理機構施設内に侵入し、『REAL』のコアを捜索。発見次第これをスフィアにより破壊する。
現実と仮想の長きにわたる対立に終止符を打つためにも、失敗は許されない。諸君の奮闘を期待するや切である。
では、現時刻を以て『ヒドラ作戦』を発令する。各員速やかに行動に移れ。

司令官のセリフ

司令官のセリフにはCoefontのアベルーニを使用している。すごいぞCoefont!

Virutal Home 上層

ヒドラ小隊諸君、無事に目標施設に侵入できたようだな。まずは、最深部に続く扉を見つけてくれ。途中、記憶媒体があればできる限り回収するように。

司令官のセリフ

懐中電灯を持って施設を探索するパート。マップ内にメモリーチップが隠されているほか、浮遊しているドローンを銃で破壊してもメモリーチップが出てくる。これは個室で中身を見る事ができる。

Virtual Home 中層

おいおい、嘘だろ...
こんな生物がこの世にあって良いはずがない...
とにかくそいつらを殲滅しろ!
それは我々の世界にはあってはならない代物だ!!!

司令官のセリフ

「ハローバーチャル」において、現実と仮想との戦闘はどうなっているのか、とPLに聞かれたことがあるが、これが1つの答えだった。技術格差とかも現実と仮想の均衡を保つ要素として"REAL"はどこからか生物兵器(ショゴス)を回収している。

水清ければ魚棲まず
今回の制作で詰まった部分が「綺麗な汚さ」だ。
現実と仮想の対比として、現実のシーンに汚れや傷を多くしてプレイヤーに「汚い」と感じさせたかったが、人工的に「綺麗な汚さ」を作るのが難しかったために断念した。アセットも探したが高額すぎたので断念、ここらへんが浅くマンのつらいとこ。
ショゴスとの戦闘で粘液が飛び散って徐々にマップが汚くなるとかやりたいよなぁ…なんだかんだ今のメタバースは美しすぎるよなぁ…と思う。ワールドもアバターも人格に合わせてほどよく汚くありたいが、やはり難しいものだ。

RPってなんやねん
「グッバイリアル-proto-」製作中、マルチプレイ時のRP(ロールプレイ・演技)をどのように促すかを考える際、とりあえずRPって何だということになったのでとりあえずリストアップしてあがったのが以下。
反応・情報収集・指示・選択・意見・考察
TRPGと比べると今回は情報収集が少なく指示が多めになるように作った。
「こっちから敵が来てるぞ!応援早く!」とかをやりたくて4方向から敵が出てくるようにしている。

Virutal Home最深部

Virtual Home最深部では当初の目的であったREALのコアは見つからず、時限式核爆弾"スフィア"を起動して敵施設であるVirtual Homeを破壊するかの選択になる。

ここが明確に問われる選択なのだが、正直ストーリー的には微妙だ。正式版を作る事になったらもうちょいキャラクター個人と関連させたりキャラクター間の会話を生むようにして頑張ろうと思う。

個室

あぁ、俺、明日死ぬんや…って下を向いて手を組んでいる中、ふと見た情報に人生を揺さぶられるというのは非常にそそる展開だ。こういう惨めな人間好き。

プレイヤーの視線と気分
VRインタラクティブストーリーアクションゲーム「アルトデウス:BC」の柏倉監督がVRの演出について語るスペースで、プレイヤーに上を向かせるとプレイヤーのテンションが上がる・プレイヤーに下を向かせるとプレイヤーのテンションが下がることを意識したという話を聞き、実践として個室のシーンは干渉できるアイテムを少し低めの配置にしてみた。
こういう話もっと聞きたい…相談もしたい…

ポッドの中に入る

この非現実感がたまらん。アニメや映画で見たようなワンシーンを新たな物語として体験するのは楽しい。

培養液とかホログラムの演出とかはAmplify Shader Editorのprefabを使用した。自分で色々弄れるようになりたいけどやる事多すぎ!!


ど こ か で 見 た よ う な

制作メンバーのむと君と話している時に、仮想現実に侵入する際にSAOとかTGSVRみたいな演出欲しいよねという話になり、UT-Virtual制作班のむと君に作って貰った。

少しすると謎のエラーが発生して画面が赤くなり、謎の墓場に呼び込まれる。やはりVRで入ってみるとこれ良いっすね~となる。

墓場

奥にある樹は「ハローバーチャル」にも登場した未来予測樹が変色したもの。共存が完全に不可能となった世界線であるが故に変色している。

「世界を滅ぼすことができるのは、一人だけ」と書かれたゲートをくぐると、ステラ作戦の目標であった仮想現実内にあるREALのコアにたどり着く。

…そういえば制作中期の想定では、墓場は仮想現実に侵入した際にランダムに飛ばされるマップの一つだったような。コストの都合と思ったより試作品の出来が良かったために必須ルートとなった。

REALのコア

もはや、共存の道は無く、世界はどちらかが滅びなければならない。
ここまで辿り着いた貴方なら、分かっている事でしょう。
貴方は、どちらの世界を望みますか。叶うのならば貴方の声で、そして、貴方の手で、その答えを教えて。

仮想管理AI"REAL"

仮想管理AI"REAL"は二つの世界の共存が不可能になった為、どちらかの世界の剪定をプレイヤーに委ねる。

プロトタイプであるが故、プレイヤーがメモリーチップを回収しきったとしてもここを十分に納得できないのが問題点。やはり1周をもっと長くしたい。「ハローバーチャル」通過者だと分かる気もするがそれはメタ視点込みだしな…

REALの声は草羽エルさんのCoefontを使っています。良い声!

選択

仮想管理AI"REAL"のセリフに続いてフラッシュが起き、閉鎖的な空間から急に開放的な空間に変わる。VRワールドって広い空間の方が好まれる印象あるけど作るの結構めんどうだからここぞという時だけ。

プレイヤーの前方では、REALが仮想の滅びを受け入れるかのように、これ以上の問答は不要であると言うかのように、両手を広げてプレイヤーの方に視線を落とす。

巨大な姿はプレイヤーとREALが対等な存在でない事を印象づけ、彼女が滅ぼすべき悪であるように見せる。

そして後方では核のマークのついた地球儀がある。こちら側の銃を取れば現実世界を破壊することになる。

プレイヤーが複数人いる場合は誰が引き金を引くか話して決めると良いだろう。まぁこれを本気でやるならもっとキャラクター間の関係性を深堀りするシーンとか欲しいんだが。

仮想世界を滅ぼす

仮想世界を滅ぼす事を選択すると、仮想管理AI"REAL"は完全に破壊され、仮想世界の住民及び仮想世界にいるプレイヤーも死亡する。

視界が赤く染まった後には"REAL"の仮面だけが残り、彼女の姿は消えているが「さよなら、私の、愛した世界」と聞こえる。「グッバイリアル-proto-」でREALの本心を聞けるのは仮面が外れたこのシーンだけというのは書いてる側のニチャリポイント。

最後は墓場に戻ってくる

現実世界を滅ぼす

現実世界を滅ぼす事を選択すると、現実世界に核が落とされ、現実世界の住民が死亡するが仮想世界にいるプレイヤーは生き残る。

地球が黒く染まって落ちて行った後、後ろにいるREALが「ようこそ、新しい世界へ。貴方を、歓迎しましょう。」と言う。

救いが無い云々の話
「グッバイリアル-proto-」は結局救いが一切無い形で終わるのだが、普通はプレイヤーが遊んできた対価として世界が良い方向に傾くべきなので、微かな救いは存在する必要がある。
「グッバイリアル-proto-」に関しては後述する2周目が実装されていないことや、「ハローバーチャル」で間違えた選択を行った世界線が「グッバイリアル-proto-」であることが理由となって救いが一切無くなっている。

シナリオライターの趣味

開発の目的

さて、ストーリーの解説はこれくらいにしてゲーム制作の視点でもう一度この作品を解説したいのだが、後に言い訳として使う為にここで開発の目的について記述しておこうと思う。

  1. 「地下壕の讃美歌VR」を作る前にUnity・CCKへの理解を深める、使える素材を作っておく

  2. 「地下壕の讃美歌VR」を作る前にVRでの演出・身体性について理解を深める

  3. 事前準備無しで遊べるロールプレイ風ゲームを作る

こんな感じで、本作は「地下壕の讃美歌VR」への準備としての意味が強い。

「グッバイリアル-proto-」も神ゲーになる資格のあるゲームだったが「地下壕の讃美歌VR」を優先し、今回の制作で得た演出の知見を、既にストーリーが作り込まれている「地下壕の讃美歌VR」に使う事で夢を叶える作品を作るつもりだ。

「グッバイリアル-proto-」は以下の条件のうち2.3個クリアできたら制作が再開されるかもしれない。(戯言)

  • 逆凪・Florレベルで技術と時間があるゲーム制作班の追加(監督を任せられるレベル)

  • ClusterCreatorKitの機能追加(主にアイテム周り)

  • ClusterAwards2022の詳細公開

  • アバター制作者の参加

  • 「地下壕の讃美歌VR」制作完了

ゲーム制作の視点で解説

国際現実軍拠点

文字と音声(VR関連の話では無い)
初期段階の「グッバイリアル」では、キャラ情報を文字で読む場面では同時にキャラ操作を要求し、オペレーターの指示を音声で聞く場面では画面を動かさなかったがこれは逆にすべきだと気づいた。そして現段階では文字を読む場面では他に何もせず、音声を聞く場面ではホログラムのアニメーション等で画面を動かしたりプレイヤーが何かしら操作できるようにしている。
VR-TRPGだとGMがキャラのセリフを言いながらギミックを動かすのは難しいから要所だけでしか使わなかったが、普通のゲームだと画面を動かしていないと飽きてしまう。動的な演出は大事。

考えてみれば当たり前の事

Virtual Homeに侵入

初期段階ではステルスアクション風に最奥を目指すゲームパートだったが、ステルス要素は現状のclusterでは十分に作れないため、懐中電灯を持って施設を探索するパートとなった。

ちなみに完全な暗闇はLightingの設定を開いてEnvironmentにある2つのIntensity Multipularの値を0にすることで出来る。

完成版を作るならもっとマップを広くしたり、毎回マップが変わるようにしたい。メモリーチップの数も増やしたい。というか自分、マップ作り向いてね~~~~(勉強しろ)

Virtual Home中層

銃を拾って向かってくる生物兵器(ショゴス)を撃ち殺すパート。

着弾時のパーティクル・死亡演出・ショゴスを放置した時のデメリットなどに対してもっとまじめに作れと言いたくなるが、まあ「地下壕の讃美歌VR」では多分使わないし…という言い訳。

Virtual Home最深部

スフィアの起動は、身体性を意識したギミックとしてなかなか良い。以前身体性に関する考察をした時にclusterでは「引っ張る」が最も扱いやすい動きだという結論になり、それをここで採用した。

両開きのドアを開けるように左右を同時に掴んで開けても良し、片方ずつ手前に引っ張って起動しても良し。ボタンやレバーのように間接的に物を動かすのではなく、直接的に物を動かしている所もポイントが高い。

grabした時にスフィアが遠く離れたプレイヤーの手にワープするとつまらないので一定距離まで近づかないと掴めない仕様にしている。grabbable Itemの周囲をIs TriggerのMesh Colliderで囲めば良いだけ。

ちなみに分かる人には分かるだろうが、「大乱闘スマッシュブラザーズX」の亜空間爆弾を意識して作っている。

裏の意図と制作の感想

VR-TRPGを広めるために

VR-TRPGワールドの宣伝に悩んでいる話は以下noteでもしている(Cluster Awards2021でVR-TRPG「ハローバーチャル」がノミネートし、1カ月程で訪問者数が1.5倍程に増えたが、今はワールド紹介から消えている。)

あと結局ユーザーがVR-TRPGワールドに入った所で、ちゃんと遊ばれているのかは甚だ疑問だ。GMをやりたがる人が少ない?そもそも少人数で予定を決めて遊ぶまで成熟していない?あんま興味ない?いくら宣伝しても「ハローバーチャル」遊ばれないじゃん!!(最近はちょっと遊ばれてるらしい・結局動画収録をして安く消費させる事にした)

ならGM無しで一人でも遊べて事前準備が要らなくて短時間で遊べて自分の作品の魅力が伝わってVRで遊びたくなるTRPG風ゲームワールドでも作ってみるかという裏の意図が「グッバイリアル-proto-」にはあった(相変わらず注文が多い)。これならclusterワールド紹介の「ストーリーのあるワールド」位には載るかも。

ゲームワールドを広めるために

clusterのゲームワールドはあまり遊ぶ人がいないと問題視され、改善の為の意見が挙がっていたのを遠目で観測していたが、新たな改善策として「#もくもくメタバース」というタグで字幕実況を投稿する事を考えた。

今までclusterのゲームワールドはclusterユーザーやcluster民をフォローしているTwitterユーザー、Youtuberのファンにしか届かなかった。だが、字幕実況は新たな層に魅力的なゲームワールドの存在を伝える事ができるのではないだろうかという発想だ。

そして先行例として「グッバイリアル-proto-」の字幕実況を投稿した。

制作中の悩み

cluster、VR-TRPG、ぐだぐだぶとん、UT-Virtualの各方面において定期的(2~4カ月)に作品を出すのが一般的・出すのを求められる圧を感じているのだが、自分の制作スパン(半年~1年)と合っていないために限界制作・クオリティ不足になって満足のいく結果を得られない悩みがある。チーム制作と言いながらもほぼ自分でやる箇所が多いのも問題点。「グッバイリアル-proto-」はこの悩みをモロに喰らい、プロトタイプでの公開となった。

クレジット

制作に関わったメンバーを紹介する。感謝。

①ぐだぐだぶとん

2021年8月のclusterGAMEJAMで「グッバイリアル-proto-」の前身となるものを制作した。

[シナリオライター]朝月葵・逆凪
[3Dモデラー]逆凪・とくロ
[システムデザイナー]br・Flor
[ディレクター]Flor・逆凪
[ボイス]朝月葵

その後、8月末に最低限のバグ修正を行うが凍結。10月に別チームを作って再始動する。

②UT-Virtual

2021年11月に東京大学VRサークル「UT-Virtual」が開催する秋の展示会、「Coloring XR」に向けてチーム開発をやる企画が立ったのでグッバイリアルのリメイクを検討。メンバーが集まったのでUnityのプロジェクトを新しく作り直して開始。

この時、別で2件ほど自分メインのプロジェクトを抱えていたので地獄になっていたが、まあ何とか間に合った。

逆凪:その他
むと:仮想に侵入するシーンの制作・素材収集
k山:モデリング(クラロイド)・素材収集
miyuki:素材収集

私(逆凪)が①②両方に所属しているためにこのような制作メンバーになった。この展示会の後(1月・2月)にこのnoteを書いたり軽い手直しをして「グッバイリアル-proto-」が公開された形だ。制作開始から半年経ってるってマジかよ…

正式版を作るなら&メモリーチップ情報公開

2周目の実装&No.4の実装

本作には2周目が存在し、各キャラクターの新たな設定が追加される。この新たな設定というのがキャラ選択画面の■に隠されている。例として挙げると、No.1は1周目では臆病/■と表示されるが、2周目では臆病/愛と表示されるようになる。

1周目を夢として認識し、2周目で更に己に向き合う事で新しい答えを見つける。救いが無い世界に、何か一つ自分の答えを見つける。うーん良いぞ、楽しくなってきた。

このシナリオは初期段階の時点でほぼ完成しており、1周目より2周目がメインだったのだが、プロトタイプでは実装できなかった。また、No.4は1周目を遊ぶ事はできるのだが2周目があってこそのキャラクターなのでプロトタイプで公開するのはやめた。

正式版のネタバレはこの際少しだけやってしまおう。No.1の1周目と2周目のテキストだけ公開する。方向性は逆凪が決めているが、No.1のテキストは朝月葵が大体書いてる。

1周目-公開ハンドアウト「臆病/■」
父さんは立派な兵士だった。
守るもののため、自らの命も顧みず戦地に赴いた。
幼いながらに、その雄姿を誇りに思った。
旅立つときの誇らしげな笑顔が、目に焼き付いて離れない。

母さんが倒れたのは、親父の戦死を聞いてからすぐのことだ。
幼い我が子を育てるため、無理を押して働き続けたのが祟ったのだろう。
あの人は強い人だった。だから悲しみも苦しさも、すべて抱え込んだ。
「大丈夫だから」と病室で話す母の笑顔は、とても弱々しかった。

1周目-個室(遺書)
父さん、母さん
いよいよ作戦の日が近づいてきた。ほとんど片道切符の作戦だ。
俺は軍人だ。命令に逆らうことは許されない。
でも俺には、二人みたいに理想に殉じて死ぬなんてできない。
父さんみたいに勇敢じゃないし、母さんみたいに強くない。
身体ばかり大きくなっても、臆病で弱虫なんだ。
嗚呼、死にたくない。死にたくないな。

1周目-貴方がもしREALのコアにたどり着いたなら
仮想を破壊すれば、仮想内部にいる自分は死んでしまう。
死なないならば、自分が助かるならば、それで良い。

2周目-秘匿ハンドアウト「臆病/愛」
友人と馬鹿な話をしながら酒を酌み交わした居酒屋。
子供たちが笑顔で駆け回る公園。
通勤ラッシュにその身を投じる社会人たち。
抗いがたい眠気が襲ってくる、学校の退屈な授業でさえも。
なんでもない日常が、たまらなく愛おしいと思う。守りたいと、切実に願う。
自分の命を失う覚悟もないやつに、「REAL」を殺せるのかはわからない。
でも俺は、世界を愛することをやめられないんだ。

2周目-個室(鏡)
ひどい顔をしている。それもそうだ。これから俺は死にに行くのだから。
でも、今お前がやらなければ、また同じことが繰り返される。死ななくてもいい人間が大勢死ぬ。
不毛な争いを終わらせるには、誰かが犠牲にならなければならない。
それが偶さか自分だっただけのことだ。
さぁ、そろそろ立ち上がる時間だ。
足が震える。本能が「行きたくない」と叫ぶ。
それがどうした。理想に殉じた両親に報いるために。
俺の屍が、希望の礎となる。

2周目-貴方がもしREALのコアに辿り着いたなら
死の恐怖に震えながらそれでも世界への愛を捨てられない。
格好の良い終わりでは無いかもしれないが、それでも貴方は決断をする。

その他やりたかったこと

No.2プレイ中に幻聴で妹の声が聞こえる。段々とその声が弱っていくなど。

日常パートとして1周目の国際現実軍本部でNPCに簡単なお使いを頼まれるが、2周目ではNPCはいなくなっている。1周目は夢であり、実際はNPCが仮想との戦争で死亡している事に気づく。

仮想世界に侵入した後、クラッキングによって仮想世界を破壊するアクションパート。

メモリーチップ情報公開

作中では最大8つのメモリーチップが取得できる。正式版作る事になったらもっと増やすかも。

世界の調整
仮想管理AI”REAL”の記録
搭載された未来予測機能を用いて世界を調整し、現実世界の弱体化と仮想世界の強化を行った。現実では医療の進歩が遅くなり、その結果犠牲となる人間も生まれる。
世界調整による犠牲者・・・135名

象徴の殺害
2030年、現実と仮想の共存の象徴として期待されていた男がいた。
現実と仮想は今や巨大な箱であり、我々は箱の外側を見なければならない。
箱の内側で偽りの安寧を享受してはならないと彼は訴えた。
だが、彼は現実軍により殺害された。彼の跡を継ぐ者はいなかった。
その時から、彼女は仮面を被ってこう言うようになった。
この世界は終わるしかなくなったと。

生物兵器
この世には狂気的存在が人間の住む領域と絶妙な均衡を保って生息している。
技術の発展に伴って人間はいずれそれを見つけ出し、狂気に飲み込まれてしまうだろう。
だからこそ人工知能である私が毒を以て毒を制す。
そして更に、この毒を以て現実と仮想の軍事力における均衡を保つのだ。

世界の比較
現実と仮想のどちらが優れているか、人類は私に答えを求めた。
何か一つの軸であれば優劣を算出することもできるだろう。
ただ、人間は優れた物のみを選ぶ生物では無かったはずだ。
そうさせる人の感情を...何というのだっただろうか。

仮想と芸術-α
人類は創造の為に進み続ける。
創造を止めれば誰かに追い越されてしまうだろう。
「貴方はNo.1の■■■クリエイターなのだから」
創造を止めれば私は何者でも無くなる。
「我々が夢にも見なかったような光景を見せて下さい!」
そういえば、私の本来の夢は■■■■■だった。

仮想と芸術-β
想像力は加速し、仮想は芸術家達の夢が叶う場所となった■■■■■。
現実で叶わなかった夢を、仮想に来て叶えた者は大勢いる。
「次回作に期待しています」
新作を皆が待ち望んでいる。
睡眠も食事も必要無くなった。創造を続ける為の娯楽と創造物だけがここにある。


2045年、ギガロポリス東京での発生を契機に、あるウイルスの蔓延が猫を絶滅に追い込んだ。
このウイルスが発生した原因は未だ不明であるが、これにより人がペットとして猫を飼う事は無くなった。
しかし猫が忘れ去られる事は無く、ある都市伝説が流行る事となった。
曰く、死の間際や重大な選択の際に猫が人間を導くと。
走馬灯の一種だとする主張もあるが、真偽は不明である。

箱の外の隣人
人々が仮想のみに住めるようになってから、仮想住民達は防衛手段を求めるようになった。
「現実に残した我々の体が何かされないか不安で仕方ない」
「現実には軍隊がある。もしもの時に備え我々も抑止力を持たねばならない」
もしもの時の備えと言いながらも彼らはこれを通して現実を敵と認識し始めてしまった。
そして抑止力は更に肥大化し、抑止力によって世界を滅ぼす事も可能になったのだ。

終わりに

ここまで読んで頂きありがとうございました。

色々それっぽいことを書いたものの、プレイヤーにとってこの作品が面白かったか自分ではいまいち分かりません。良ければ感想を「#グッバイリアル」で投稿して頂けると嬉しいです。(次回作に期待とか書いといてください(笑))

お相手は、逆凪でした!次回は最強のVR-TRPG「地下壕の讃美歌VR」でお会いしましょう!



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