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僕の神様はカレー好き

たまに、noteのお題を眺めては、このテーマで昔何か書いたなというのを引っ張り出してくる、ブログ記事のSDGs的な試みをやっているのだけれど、かつては、こんな記事を安眠妨害水族館に投稿していたのかと思うと、ちょっと背筋が冷たくなる。

今回選んだテーマは「はじめての仕事」。
新入社員だった頃など、もう何年前だろうか……というレベルなのだが、伊達にブログを18年もやっていない。
リアル新入社員だった頃に、しっかり書き残しているのである。


はじめて仕事上で名刺をもらった。
普段、OJTとは名ばかりの雑用ばかりやっていると、オフィスから外に出て面談をするだけでも仕事をしたな、という気になる。
「顧客と接することでモチベーションも上がりますね」と上司に伝えたところ、「今まではなかった、って言ってるようなもんだ。」と返されたのだが、図星だったのでそこからは帰社するまで無言を通すことにした。

お客様は神様です、なんて言葉がある。
それが本当だとすると、一般的な会社員は、多神教にならざるを得ない。
そうなってくると、神様の中にも優先順位が出てくるはずだ。
悪い言い方をすれば、お金をたくさん落としてくれるのが良い神様で、文句ばかり言ってくるのは貧乏神。
世の中には、神様が多すぎる。

しかしながら、それでもお客様は神様だと思う出来事があった。
新入社員の登竜門である、呼び込みセールスをすることになった僕。
そもそも人見知りに魅力的な呼び込みが出来るわけでもないし、なんなら特設売り場の場所も悪い。
一番悪いのは、その商品を売るには、印鑑が必要だということだ。
仮に興味を持ってもらえて、成約しそうな流れになっても、「印鑑はお持ちだったりしますか?」の一言で、あっという間に形勢逆転。
普通の人は、まず印鑑なんて持ち歩かない。
せめてサインでも許容される手続きだったら、ここまでボコボコにはされなかったのではないか。
この絶望的な状況を救ってくれるお客様がいるならば、きっと僕は神様とあがめることになるだろう。

そして、降臨の瞬間は訪れる。
このまま成果ゼロでの時間切れが迫ってきたとき、商品に興味を持ってくれたうえに、印鑑を携行している神様が登場したのだ。

インド人の。

そうだよな、一応は仏教徒だしな。
神様というか仏様だけど、突き詰めて解像度を上げていったら、そりゃインド人になるよな。
カタカナで自分の名前を彫った印鑑を持ち歩いているインド人。
仕込みかってぐらい都合が良すぎてドッキリを疑ってしまうが、良いだろう、この人こそが僕の神様だ。
ちなみに、日本語は書けないらしく、申込書は全部ローマ字。
登録が面倒臭いが仕方ない。
職業欄に"Curry"って書いてある。
おそらくカレー屋なのだと思うが、突っ込むべきか?
生粋のインド人は、もはやカレーそのものなのか?

想定外のことはいくつかあったものの、神様であることには違いないわけで。
二人三脚でなんとか仕上げた申込書、早速システムに登録して、ミッション達成を喜ぶとしよう。



"既に登録されています。"



既に登録しているサービスの申込書を必死で作った新入社員とインド人。
それだけだ。
そこにいるのはそれだけだった。

結局、そのインド人は神様になり損ねたわけだが、僕の記憶には鮮明に残り続けるだろう。
事情を説明した後、彼が放った「インド人もびっくり。」という一言とともに。


#はじめての仕事

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