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【フリゲ感想】隠さなきゃ

この記事の文字数は約6,000字です!

フリゲ感想の3回目になります。
それにしてもTGF2020、本当に良作揃いですよね!
こちらで長文感想を書き残したい作品が次から次へと現れます。
(現れますというかこっちが順にプレイしているだけですが)
正直ゼンゼンこっちの対応が追い付かない感じです。

さて、私みたいな全作品プレイ派は当然どこかのタイミングで
(失礼な表現ですが)「埋もれた良作」に出会う運命ではありますが、
そうでもないプレーヤーからすると、
ダイア玉ブーストをきっかけにそういった作品に触れることも多そうです。
今回の作品は恐らくそんな作品の1つなのではないでしょうか。
ブーストにより思いがけず早めの出会いとなりました。


なお、こちらで取り上げよう!となる基準のようなものに一応触れておくと
全く厳密でなく、ある種気分のようなものだと思ってください。

・DL数の多少や評判を聞く聞かないは一切(どちらにせよ)気にせず、
・単純に「公式サイトの感想以上に勝手に語りたい!」と思ったもので、
・かといって100%面白いと思った順に取り上げているわけでもない

という良く分からないものになります。
必ずしも取り上げた作品>取り上げていない作品ということでもないし、
かといって取り上げた作品は全て個人的には超おススメという感じです。
取り上げていない中にも素晴らしい作品はたくさんありますよ!
(ノベコレサイトの様々な作品の感想欄を是非眺めてみてください)

ただここまでで1つ明確になったこととしては、
プレイ時間の長さと取り上げたいと思う気持ちには正の相関がありそう。
これは完全に個人の趣向だと思われます。やっぱり長編が好き。

記事としては前回前々回とちょっと長く書きすぎたんで、
自分の首を絞める前に今回からはなるべくスパッと行きます!多分!
(完全にウソエイトオーオーでした。。。)


1.「隠さなきゃ」

さて、今回紹介したいのは染居 衣奈さんの「隠さなきゃ」です!!

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ちょっと変わった雰囲気だなぁ。
紹介の文章を見た感じ結構システムは凝ってそうだなぁ。
ほとんどのエンドがハッピーエンドのハピゲーなのか、ふむふむ。
というような感じの印象で何の気なしにプレイしてみました。

結論、構成と心理描写が秀逸すぎる、唸ってしまう傑作でした。

いや、もう相当に良くできた作品で驚きました。
始めて制作された作品っぽい?のですが、
ノベルゲームの形式を非常に上手く生かした作品だな、と思いました。
なんていうか徐々に大きくなっていく閉塞感が半端じゃない。

ちょっとそういう部分も含めてフレッシュな気持ちでやりたい方は、
こんな駄文を読んでいても全くもって仕方がありませんので、
ちょっと上にスクロールして公式サイトからすぐDLしてください。
プレイ時間は1時間半くらいだった気がします。(定かじゃないです)
特にノベルゲームが好きな人、一般小説が好きな人は楽しめるはずです!!


2.ネタバレなし感想

以下、自分が公式サイトに投稿した感想を引用、補足しながら進めます。
こちらはプレイ前でもあまり問題はないと思われます。

非常に面白い作品でした。粗削りながら物凄く光る作品でした!!
正直なところプレイ前はそれほど期待していなかったのですが(すみません)、
主人公の性格や言動、周囲との関係性の描き方が見事すぎました!
「告白」で湊かなえさんの小説に初めて触れた時のような衝撃を受けました。ホントです。
ただただリアルだな、と思いました。圧巻です。

粗削りとかプレイ前はそれほど期待していなかったとか、
色々と失礼なことを書いており、大変申し訳ないです。
(本記事でも「埋もれた名作」とか言ってすみません!)
ただ、そういった感じの書き方をした方が
未プレイの方々が興味を持って遊んでくれるかな?という姑息な作戦です。

主人公の性格は本当にリアルだったと思います。
ネタバレになるのでこのあたりはネタバレの項に回します。

実在の作家さんの名前を出したのも軽率でした。
でも、なんていうか人間の描き方に近いものを感じたのです。
HNから作者は女性の方だと思われますが、
「このゲームを作ったのは男性です!」と言われたら信じられない。
そんな感性を凄く感じたのです。
(湊かなえさんの作品を男性が書けるとは思えませんよね?)


また、深く触れませんがゲームとしてのデザインが素晴らしかったです。
個人的には初めてのパターンだったので感動しました。
しかもそれがストーリーの本質と深く結びついているという。。。
それと、演出も凄く良かったです。
4章開始とか「訪問するところ」とかがとても印象的でした。

システムは凄いですね。
ストーリーと合致したゲーム全体の構造は美しさを覚えるレベル。
褒めすぎかもしれませんがYU-NOの宝玉システムの時のような感動です。
演出も含めて詳しくはネタバレの方で記載します。


褒めちぎりすぎてもアレなんで改善を望む点を挙げますと、
文章や演出を繰り返し見ることが多かったので、
既読文章(できれば演出も)スキップできるようにしてほしかったです。
(選択肢の少し前から再開できるようになっているので、それほどタイムロスはないです)
あと、せっかちなので表示速度は変えたかったです。
どちらもゲームの雰囲気を壊すことにはならないと思いましたので、
今からでもアプデをご検討いただけますと幸いです。
あと、他の方も仰っておりますが、バッチの入手の方法が分からなかったです。

このあたり、余計なことを書いてしまったようで反省しています。
「プラスマイナスのバランスを取ったほうが記載内容の信憑性が増す」
という考えがたまに発動してしまうのです。
普段褒めてばっかなのにおかしいやろ!と言われるとぐぅの音も出ません。
このnoteの記事も改善点とか書くつもりもないのにすみません。

「人の良いところを見ろ!」をリアルで実践・習得しすぎたせいなのか、
フリゲに対しては基本的に良いところしか印象に残らないんですよね。
商業作だと面白い!というもの以外はそうでもないのに自分でも謎です。
多少忖度的な意識が働いているのかもしれません。どうなんでしょう。
また、「ここだけこうだったら!」「惜しい!」みたいな感じで、
むしろ良いと思った作品の方が改善してほしい部分が気になったりも。
(「あるある」だったりしませんか???)

話が逸れましたので本作に話を戻します。
スキップは元々既読スキップはあったようで勘違い?だったようです。
再読の時はctrl押したと思ったんですが、大変失礼いたしました。
バッジについてはDLのタイミングが悪かっただけでした。
こんなとこで謝ってもノベコレでは見られないので申し訳ない限りです。


もっとプレイされるべき良作であることは疑いようがありません。
ノベルゲームが好きな方なら楽しめることウケアイです。

これは本当にそう思います。
ノベゲ―好きの人にこそ遊んでほしいと思う作品でした!


3.ネタバレあり感想

ここからは容赦なくネタバレします。
作品全体の結末などにも言及しますので、
プレイする前に読んだら面白さが半減します。

こんな駄文読んでプレイした気になっては絶対にダメですので、
未プレイの方は必ず上に戻って公式サイトからDL・プレイし、
ノベコレ公式サイトに感想を残してからまたおとといきやがれください。

↓ネタバレ記事開始カウントダウン5

↓ネタバレ記事開始カウントダウン4

↓ネタバレ記事開始カウントダウン3

↓ネタバレ記事開始カウントダウン2

↓ネタバレ記事開始カウントダウン1

■システム
まず、ゲームのシステムですが、
分岐ルートを見ることで選択肢が開放されるタイプとなっています。
良くあるパターンではあるものの、
これを「本文中に色付きのキーワード回収」という形にすることで、
突然キャッチ―さが増したような感じがしました。
また、「次の章に進むためのキーワード」とは別に、
「TRUE用のキーワード」を配置することにより、
このシステムの意味合いが強まったように感じました。
そもそもこのアイデアが素晴らしいと思いました!


■構成
次に構成ですが、これが最も素晴らしいと感じた部分かもしれません。
普通のノベル・ADVでは選択肢を間違えるとBADルートに直行し、
BADを回避して進めることでHAPPYやTRUEへと向かっていきます。
でもこのゲームはそこが逆です。私は初めて見ました。
いや、今までもプレイしたことはあったのでしょうが、
こんなに陰湿に、真綿で首を絞めるようにやられるのは初めてです。
当然ですが最上級に褒めてます!

選択肢を「間違える」と主人公は「更生」し、
あっという間にHAPPYな結末を迎えてゲーム終了
です。
ゲームを進めるためにはそれではダメで、
「更生」しないような選択肢を選んでいく必要があります。
また、その選択肢は初めから選べるものではなく、
様々なパターンで「更生」してしまう可能性を避け、
試行錯誤の結果としてなんとか見つけた選択肢なのです。

いつでも、ちょっとしたことで「更生」してしまう主人公の人生。
でも、針穴に糸を通すような狭い人生の選択を行うことで、
「更生」するチャンスを失って悲劇へと向かっていくわけです。

この「更生」の機会となる人生のターニングポイントは複数回あります。
小学生から社会人まで人生のフェーズごとにあるわけです。
いずれのフェーズにおいても「更生」できれば、
そこで普通に幸福な人生を送るようなルートに突入してゲームエンド。
但し、それは決してTRUEエンドではないわけです。
TRUEエンドはあくまでも、いつまでも「更生」できず、
袋小路のように悲劇へと突き進んでいくルート
なわけです。

プレーヤーは敢えて自分の手でHAPPYを避ける選択肢を見つけ出し、
先へ先へと話を読み進めていなければならないわけなんですよ。
もうこの作りには感動しかありませんね。
どこからどう見ても能動的に文章を読んでいるわけで、
まさにノベル「ゲーム」という名称にふさわしい作品です。
これこそが、ノベゲ―好きの人にこそ遊んでほしいという理由です。

さて、突然ですがここで作者記載のゲームの紹介文を勝手に引用します。

18のうち1つが最終章まで辿りつくトゥルーエンド、他はサブエンドとなります。
2つだけ死亡エンドがありますので苦手な方は注意してください。
それ以外の15のサブエンドは全てハッピーエンドまたはグッドエンドですのでハピエン率8割超えのハピエンゲーです。

いかがでしょうか。「ハピエンゲー」と言い切るそのセンス。
個人的にはこのセンスは愛おしいと言えるくらいに好きです。最高すぎる。

厳密に他の作品と見比べたわけではありませんが、
本作の紹介文は記憶に残っている中では最も秀逸じゃないかと思います。
これは是非プレイの前後にじっくり堪能してほしいところです。
はじめからおわりまで素晴らしいな、と。


■「隠さなきゃ
本項は多少作者の意図や考えと異なる部分があるかもしれません。
あくまでもいちプレーヤーの受け止め方ということでご了承下さい。

本作の選択肢のお題は常に「隠さなきゃ」です。
この発明&ワードセンスは「構成」と並んで最も素晴らしい部分だな、と。

作者の中でどちらが先に着想されたものかはとても気になりました。
どちらが先だとしても、本作の根幹部分として一体になっています。

ちょっと野暮なネタバレ話になってしまいますが、
始めは「テストの答案」を「隠さなきゃ」という程度の可愛い話が、
「希薄な友人関係」や「性的被害」など隠す対象がエスカレートします。
「隠さなきゃ」という主人公の感情や言動の結果が露見することなく、
上手に隠し続けるうちにどんどん深みにはまっていくわけです。
また、悲しいことに主人公は隠すことがどんどん上手になっていきます。
始めはテストの答案を隠すことすらままならずなかなか上手くいきません。
しかし、隠す対象がどんどん大きな事象に変わっているにも関わらず、
最後の章ではいとも簡単に隠せるまでに成長しています。

この点は選択肢が出現するまでの描写からも見て取れますが、
それ以上に正解選択肢を選び取れる確率の高さ≒「更生」選択肢の少なさに
より如実に、明確に現れています。もう鳥肌が立ちますね。

さて、「隠さなきゃ」という強迫観念ともいえる感情を発動させているのは
主人公の「正しくなければならない」という感情だと私は読み取りました。
そして、主人公の中で正しい正しくないの基準はあくまでも母親なのです。
母親から見て正しい行動を取ろうという気持ちは傍から見て異常なほど。
ここは本当に素晴らしいしリアルだなと思いました。

それなりに人生経験を積んで様々な人の人生に触れて感じたことですが、
程度の差こそあれ特に母娘の関係においては非常にありがちです。
これはなんていうか呪縛のような形で普遍的に存在しているものです。
そして、この母親およびその関係性の描き方がまたリアルすぎるな、と。
(そう考えると例えば「若い男性」にはこの作品の良さは味わえないかも)

最初の章で早くも明らかになりますが、
主人公の母親の性格や言動は割と一般的なように見えます。
冒頭からの地の文を読んで感じた印象は肩透かしのように思えるほどです。
また、最終章では母親とその母に対する意外な関係性も見えます。
(ああ、ここも語りたいけど既に長すぎるから割愛しよう)

一方で、主人公の母親に対する意識の強さは異常ともいえます。
このゲームがスタートする8歳以前に何かあったのかもしれませんし、
両親の関係性を見る中で生まれた感情なのかもしれません。
このあたりは直接的な描写をしていた印象はありませんが、
2周目のプレイをするなら考察の余地がありそうなところです。

おおう!! 主人公の兄や父にも触れたかったのですが、
残念ながら文字数が既に5,000字を大きく超える非常事態。
気が付いたら3時間ノンストップで書きまくってました。
(もはやプレイ時間の倍じゃねぇか!という異常事態)

短くしますとか言ってたのはどこのどの口だ!と。
余計な話もしたせいで前回や前々回よりも長くなってしまいましたので、
そろそろこの辺でお開きとさせて頂きます。
次回こそリベンジで3,000字くらいでスパッといきます。スパッと!


ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

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4.おわりに

というわけで「隠さなきゃ」の感想はこれでおしまいです。
しつこいですが元々noteに記事として上げるつもりで遊んでいないので、
あくまでもプレイ「後」の感想となります。
事実誤認や記憶違いの可能性も否定できません。予めすみません。

ただ、延々と述べた通り素晴らしい作品であることは間違いないです。
まさに「ノベルゲーム」と呼ぶにふさわしい素晴らしい作品でした。
人は多少選ぶかもしれませんが、超絶おススメです。

以上、富井サカナでした。


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