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【フリゲ感想】フィルム・ラプンツェル

この記事の文字数は約5,100字です!
(実は最終的な目標は3,000字くらい)

先日のM-1はまさかの優勝者に本当に驚きました。
一応のゲーム制作者として応援せざるを得ない野田クリの優勝。
確実に史上最高だった昨年に比べると全体的にレベルダウンでしたが、
それだけお客さんの前で何度も披露することが大事だということでしょう。
ゲーム制作も多くの人に見てもらい、率直な感想を受け止めて、修正して、
ということでしかより高みを目指せないのかもしれません。(決まった!
前回記事と繋げつつ無理矢理話をそれっぽくまとめましたが、
そもそも5人に4人くらいはM-1に全く興味ないんですよね。

「まくら」が表記作に一切合っておらず申し訳ないので、早速本題です。

1.「フィルム・ラプンツェル」

今回紹介したいのは、丹綿樫さんの「フィルム・ラプンツェル」です!!

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なんだか抽象的な雰囲気すら漂う印象的なタイトル画面だなぁ。
ロゴがやたらオシャレだなぁ。
プレイ時間が2時間くらいだから程よく味わえそうだなぁ。
と言うような感じで、好評な感想もあって楽しみにしていました。

結論、とても強い印象が残る映画のようなゲームでした。

フィルムってタイトルに入ってる作品に「映画のような」は安直ですが、
なんというか作品内でやたら印象に残るシーンがいくつかあって、
情景がありありと映像のように頭に残ってるのが映画っぽいなぁ、と。
他になんかこれだという芯を食った表現も思い浮かばず。くっ、語彙!

元々作者さんは昨年のフェス作「ヘクソカズラ」を見て強く興味を持ち、
遊ぶタイミングを失ってるうちに点鬼簿行路でヒットをかました方です。
何となく今作は個性と遊びやすさが同居している予感がしてました。

個人的には点鬼簿行路よりこちらの作品の方が好きでした!
(なんとなく作者の個性をより感じたような気がしました)

※参考「ヘクソカズラ」 画像リンクあり

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※参考「点鬼簿行路」 画像リンクあり

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2.ネタバレなし感想

以下、自分が公式サイトに投稿した感想を引用、補足しながら進めます。
こちらはプレイ前でもあまり問題はないと思われます。

どの要素を抜き出しても高クオリティな作品ですが、
何よりもストーリーが非常に強く印象に残りました。
中編と呼べるくらいのボリュームでしたが、
相当に作品に引き込まれていたようで一瞬で過ぎ去ったような感覚でした。

基本的には遊ぶ時はPCに正対して集中を心がけているのですが、
それでもやはり正直なところ遊ぶゲームによって集中度は変わってきます。
今作はなんというか表現されている部分を残さず感じ取りたい!という
思いが沸き上がり相当集中できたため、体感時間経過が相当速かったです。


大前提として文章の表現力が極めて高いのですが、
それでいて読みにくさも一切感じないところが素晴らしいと思いました。
ストーリーは心情を表す細かい描写を多分に含みながらも、
かなりドラスティックに展開した印象です。
主人公が多面性を持つ複雑な(リアルな)性格と感じましたが、
そんな主人公のフィルターを通して、
主人公と関わる人々の感情が豊かに描かれていました。
展開などはネタバレに繋がりそうなのでここでは触れないことにします。

自分が文章力の何を語れるのか、と言うのはありますが、
文章は読みやすいし印象的だし言うことはないと思いました。
それに加えて感じたのは緩急です。
全シーン濃淡なくダラダラ描写してしまったり、
逆に説明不足でさっと飛ばし過ぎてしまったり、
そういうこととは一切無縁だな、と感じました。
セリフや心情をじっくり描くシーンと、
さっと飛ばす部分がとても書き分けられていたと思いました。

登場人物はセリフではなく行動で心情を示すシーンが印象的でした。
このあたりも説明チックにならずに素晴らしいな、と。


グラフィックはストーリーと物凄くマッチしておりました。
イベントスチルの数は多くないですが、どれも非常に印象的です。
1枚目のスチルはノベコレニュースなどでよく拝見していたのですが、
そのたびに印象的だよなぁと感じておりました。素晴らしいです。
なお、プレイを終えた今となっては最後のCGが最も胸に刺さっています。

イベントスチルはズバ抜けて印象的だな、と思っています。
こちらは数はそれほど多くないですが本当に心に残っているので、
別途ネタバレの方で触れます。


システム面や演出については誰も文句が付けられないレベルと思いました。
起動して、タイトル画面を表示してからプレイを開始するまでの間に、
既にこの作品の世界に入り込んでしまうような気持ちになりました。
冒頭のノートのシーンや章間の演出、もちろんバックログなど、
ゲームとしての表現を追及する姿勢が垣間見れて感動致しました。

システム面が非常にレベルが高いけど中身がスッカスカ、
みたいなことは基本的にはかなり起こりにくい気がします。
分業の場合はしょぼいテキストに頑張ってくれるスクリプタが存在しない、
個人の場合はしょぼいテキストにスクリプトのヤル気が出にくい、
みたいなこともあるのかなと思います。
逆に言うと、システム面がしっかりしているゲームの場合は
中身が安心できることが多いような気がします。
心置きなく中身に集中できる、良く見える、みたいなこともありそうです。
(個人の感想です)

そういう点では全くケチのつけようがなかったです。
起動をしてから各選択肢にカーソルを合わせた時の感じ。
あの時点でもう「はい、このゲーム当たり!」と思いました。
神は細部に宿るというのはある程度真理を含むのではないかと。
(細部は適当だけど魅力大爆発、というのも一方で目にしますが)


3.ネタバレあり感想

ここからは容赦なくネタバレします。
プレイする前に読んだら面白さが半減します。

こんな駄文読んでプレイした気になっては絶対にダメですので、
未プレイの方は必ず上に戻って公式サイトからDL・プレイし、
ノベコレ公式サイトに感想を残してからまたおとといきやがれください。

↓ネタバレ記事開始カウントダウン5

↓ネタバレ記事開始カウントダウン4

↓ネタバレ記事開始カウントダウン3

↓ネタバレ記事開始カウントダウン2

↓ネタバレ記事開始カウントダウン1


■ストーリー
プレイ後に読んでいるものという前提でストーリーは割愛します。
全体的に作中での描写は現実味がやや薄いような雰囲気を感じたので、
過去回想+足が地に着いていないような心情にあったということかな、と。

主人公に自覚があるか不明ですが小絢の存在は本当に大きな救いなので、
作中での描かれ方が天音や伊織と比べて控えめだったのは切ないです。
主人公の人生における存在感という意味において2人に劣るのかな、
などと思うとなんともいたたまれないです。
2人のことを一生忘れられないのは当然ではあるものの、
普段はより小絢の存在が大きくて大切だということにします!!

ぶっちゃけた話、主人公と伊織の性的な描写は少しきつかったです。
天音を失った傷を舐め合うシーンなのである程度のリアルさ
=生々しい描写をした方がより傷の生々しさも引き立つのは分かりますが、
単純に大人の男同士のファンタジー的でない性描写は苦手なんだなぁ、と。
もちろんBLという看板(タグ)をきちんと掲げられている以上、
中華料理屋で飯食った後に「中華はちょっと苦手」というのと同じで、
女性が好きな普通のおっさんから見たらそりゃそうだ、というだけですね。

ただ、TGF2020をほぼ全作プレイしていてそう感じたのは初めてですので、
逆説的にそれだけ表現力が卓越していたということなのかもしれません。


■演出
・起動後の画面
・タイトル画面
・ロード中画面
・目次(章表示)画面
・バックログ
・文字が歪んで見える画面
など、とにかく様々な部分で演出に凝っていました。

その全てが視覚的な印象付けやプレイへの集中を高めるのに
役立っているように感じました。

但し、印象的な演出の中で2つだけ意図が読み取れないものがありました。
①クリア後画面の文字化け&データを復元しますか?という部分
②天音に対して会話を投げかけようとする画面
の2点です

どちらも明確な意図がある演出なので自身の読解力不足が悔やまれます。
全然違うと恥ずかしいので推測はここでは述べませんが、
このあたりがスッと読み取れる人(加えてBL展開が全然OKなら更に)は
この作品に対する印象が更にググっと上振れるのではないかと思いました。


■イベントスチル
本作ではイベントスチルの破壊力をまざまざと見せつけられました。
点数はタイトル画面と別に3点と控え目ですが、非常に印象が強い!
以下、1点ずつ感想です。
なお、分析レビュー的なことは一切できないのであくまで個人の感想です。

〇タイトル画面
なにやら非常に神秘的なグラフィックです。
目を閉じて手を胸の上で組み、草むらに寝ているアルビノらしき少女。
その少女の上に葉っぱを掛けようとする手。(まさかすくってないよな?)
ロゴに描かれる十字架とカラスが少女の死を連想させるので、
誰かが安らかに眠る少女を弔おうとしているのでしょうか。
きっとこの少女は作品中で死ぬんだろうな、というなんとなくの印象。
にしても凝ったロゴとほぼモノトーンなグラフィックがカッコ良いな、と。

〇1点目(天音と目が合う)
伊織と抱き合いながら天音がこちらに向かってシーってやってるシーン。
良くノベコレニュースで見るやつなのでプレイ前からこの絵の印象は強い。
それにしてもなにこの背徳感を刺激してくるグラフィック!
主人公と黒づくめ男と純白少女の関係性・場面が非常に気になります。

手前の伊織は黒ずくめのフードでだいぶ怪しい感じなんだけど、
その割には天音の表情はずいぶん余裕がある感じなので割と強キャラ?
このシーンでは伊織と天音の関係性には踏み込めない、
距離感を見せつけられたような感じがしました。

〇2点目(伊織と並んで座る)
自殺した伊織を発見した後のシーンとなります。
2人にとって特別な存在であった天音を失った後、
失意の底で慰め合っていた2人でしたが伊織は先に旅立ってしまいました。
主人公にとっては伊織もこの頃になると大きな存在になっていたので、
相次ぐ悲劇のダメージは計り知れないものがありそうです。

主人公と伊織を分けたもの、主人公が踏みとどまれた理由、
それはやっぱり小絢の存在ですよね。
これだけ好意を持ってもらえたのは主人公にとって僥倖です。

〇3点目(天音と伊織が路地でこちらを見ている)
ゲーム中にはこのシーンはなかったと思うので、
これは主人公の心象風景という理解でおります。
その視線と彼らが立つ路地というロケーションからは
「俺たちのことを忘れるな」という強いメッセージを(勝手に?)感じます。

主人公のその後の人生にはこの2人の印象が強く刻まれていて、
決して忘れることがなかったのだろうな、と感じました。
誰だってこんな出来事があったら忘れられることはないでしょうが、
それにしてもこのグラフィックの目力の強さと言ったらないなぁ、と。

主人公は様々な出来事を経て小絢とともに生きていくことになりましたが、
直接的には自分が2人の終わりへの引き金を引いてしまったことに、
強く後ろめたい気持ちを持ち続けていたんだろうな、と感じました。
そうでなければこの場所でこの視点はないよなぁ、と。

なんにせよ本当に印象深い1枚になりました。


ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯


4.おわりに

というわけで「フィルム・ラプンツェル」の感想はこれでおしまいです。
クリア後タイトル画面のCGは今後も脳裏に刻まれたままだと思います。
秒単位でこれだけ印象を与えられるんだから絵の力はやっぱり凄い。
非常に印象深い作品となりました。

自分には少し苦手なシーンや読み取れない演出があったので、
そのあたりをクリアした方は更に本作に対して感動したものと思われます。
本作の魅力の絶対値はこの感想で記されているよりも上を行く気がします。

作者の丹綿樫さんの作品は「へクソカズラ」が未プレイのままですし、
現在も並行して2つの作品を制作中とのことなので今後も目が離せません。
稀にSNSでお見かけする制作への姿勢も尊敬の念を抱かざるを得ませんし、
最近note記事を拝見して創作活動のきっかけを知りました。
丹さんの作品が人を惹き付けるのも納得でした。

これまで制作した3作品ともに全く外れなしの作者さんと思いますので、
気になった作品からプレイしてみてはいかがでしょうか。

以上、富井サカナでした。


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