【フリゲ感想】ティアマトの星影
この記事の文字数は約6,800字です!
TGF2020も閉幕までいよいよあと2週間となりました!
公式サイトやTLを見ていていつも思うのですが、
開幕時の盛り上がりを半年以上維持しているのが本当に凄いなぁ、と。
感想や話題が飛び交う量が全く減っていない気がします。
さて、本日はこれを遊んだら2週間が埋まる?であろう逸品です。
1.「ティアマトの星影」
今回紹介したいのは、劇団くじら座さんの「ティアマトの星影」です!!
非常に幻想的なタイトルスチルで、一目見た時から意識に刻まれました。
この時に併せて得た情報が公称プレイ時間18時間。
いやいやいやいや。5,6時間なら分かるけど18時間って。
RPGじゃなくてノベルゲームですよ!正気ですか!という感じでした。
というわけで一気に遊べそうな万全のタイミングを見計らって遊びました。
結論、令和の時代に登場したことが信じられないADVゲームでした。
月姫が大ヒットを飛ばした同人ノベルゲームの全盛期ならつゆ知らず、
「紙芝居ゲー」と揶揄され、本ジャンルは廃れたと言われるこの時代に、
これだけ大ボリュームの王道ADVを制作したことがまず凄すぎます。
いにしえからのジャンルのファンとしてはそれだけでまず大きな拍手です。
細かいことは次項以降に回すとして、まずそれだけは声高に伝えたい!!
なお、ここから下を読むにあたっては、
是非本作のOP曲をBGM代わりにして頂くことをお勧めします。名曲です!
2.ネタバレなし感想
以下、自分が公式サイトに投稿した感想を引用、補足しながら進めます。
こちらはプレイ前でもあまり問題はないと思われます。
既にご存じの方も多いでしょうが、とんでもない力作となります。
プレイが終わった瞬間には感動とともに達成感と満足感が味わえました。
本当にお疲れ様でした。こんな作品がこの時代に新たに生まれるなんて。
長編には長編にしか味わえない感動と言うものがあると実感しました。
10時間を超えるプレイ時間による愛着、没入感。
その時間の重みがエンディング到達時には上乗せされた気がしました。
スマホ全盛、あらゆる娯楽が溢れ、瞬発的な刺激を求める時代においては
商業でも使いにくくなった手法ですが、やはり効果は実感できました。
プレイ中は商業の超大作をプレイしているような感覚を味わえました。
いにしえの作品群のファンの方は、深い懐かしみを感じられると思います。
制作者の方も非常に強い影響を受けているのだろうな、と見受けられました。
(もし間違っていたら申し訳ないです)
また、それらに匹敵する作品を作り上げようという、
物凄く高いところに目標を置いて制作しているのがビンビン伝わりました。
ここをもう少しこうすれば!というような点もそれなりにありますが、
それは比較対象によりハードルが上がり過ぎてしまったからだと思います。
それだけフリーゲームの枠に収まらない作品だという印象でした。
ここで上げている商業の超大作というのは、
例えばKey作品であったりマブラヴオルタやFateであったりします。
(間違いかもしれませんが、作風としてはKanon、AIRの影響を感じました)
ここをもう少しこうすれば!についてはネタバレのところで書きます。
上記商業作品同様に手放しで絶賛できるゲームでもないかなとは思います。
一言で言うとさすがに長いよねという話になってしまうのですが。
そのあたりも含めて、珍しく今後への期待を込めて記載してみます。
(それは魅力でもあり差別化ポイントでもあるのは重々承知しています)
まずシナリオは非常に壮大で素晴らしかったです。
序盤から大きな風呂敷がどんどん広がりっぱなしですが、
中盤から終盤にかけて見事に畳まれていくので安心しました。
星空や宇宙、記憶をテーマにとても幻想的であるとともに、
抽象的な説明や難儀な言葉で煙に巻くことも一切なく、
きちんと明確にプレーヤーに伝わる良質なシナリオだったと思います。
プレイ後の消化不良感は一切無縁でした。
なかなかストーリーが進展しないのにヤキモキはしましたが、
第一部に溜めた分だけ中盤以降の展開にはテンポと広がりを感じました。
序盤の日常パートを長めにお届けするのは
古き良きノベルゲームファンからするともはや規定演技です。
受け入れるべきものであると調教されていますので私は大丈夫でした。
長編ゲームをプレイし終わって最も困るのは、
「で、なんだったんだろう?」的な終わり方だと思います。
その点については演出含めてバシッ!と綺麗にフィナーレを迎えますので、
少なくとも「終わりよければ全て良し」という読後感は得られるはずです。
テキストは流石のプレイ時間なので、少し冗長に感じた部分もありました。
特にStarlightの部分はもう少しテンポ良く刈り込んでも良いとは思ってしまいました。
でももしかするとそんなところも過去の名作リスペクトなのかもしれません。
とはいえ、随所に笑える部分があって退屈せずにプレイできました。
全編を通じて特に好きだったのは某自宅での食事イベントです。
こういう家族で馬鹿なことをやるってのは本当に自分にとっては理想です。
あとは某ひみつ道具がトラウマというネタ。あの話は確か未解決エンドですもんね。
ファンタジーなシーンやクライマックスは描写が丁寧で素晴らしかったです。
某自宅イベントは夏にコタツで鍋、というものです。
こういうバカバカしいことをやる家族って良いなぁ、と。
それにしても大判焼きと鍋がなぜか実写なのがウケます。
描写は冒頭から終始みっちり丁寧系ですので、
クライマックスなど大事なシーンでは十分に堪能できます。
個人的には見せ場のシーンはもっと長くても全然大丈夫でした。
ドラえもんの道具というのはバイバインのことですね。
どら焼きをたくさん食べようと倍々に増やそうとして収集が付かなくなり、
最後は宇宙空間に飛ばして誤魔化すというものです。(誤魔化せてない)
あの話のおかげで幼少期にべき乗の感覚が掴めたのは良かったなぁ、と。
新聞紙を何回折ったら富士山と同じ高さになる、みたいな話もあり、
やっぱりドラえもんは素晴らしい。実家の建て替えで手放したのは大失敗!
グラフィックは特に塗りが特徴的で個性を感じられるものなので非常に好きです。
メインビジュアル初見時のインパクトは個人的には絶大なものでした。
ED前のイベントCGなんてこれしかないよ!という素晴らしさでした!
背景などを含めて全編を通じて統一感があり世界観を形成していたなぁ、と。
キャラクターは委員長が一番可愛らしいと感じました。差分も素敵!!
グラフィックに関しては見てねとしか言えませんが、
第二部、第三部に多数表示されるイベントスチルは本当に美しいです。
立ち絵は塗り?絵柄?が少し個性的なので人を選ぶのかもしれませんが、
イベントシーンになるとこのグラフィックがとても真価を発揮します。
メッチャ幻想的で夜空・宇宙の背景との相性は抜群でした。
キャラクターとしては委員長派です。違う服着ただけで萌えちゃう。
プレイ中のBGMも作品に合っていて良かったのですが、
どうしてもOP曲とED曲の素晴らしさに耳が持ってかれてしまう!!
OPはムービーの演出も素晴らしく、初見時なんじゃこりゃい!となりました。
ムービー最後の実写映像なんて、こんなんどこで撮ってきたんだ!と感じました。
ED曲は良すぎる。本当に良すぎる。素晴らしすぎる。(しつこい)
実はOP曲とED曲はYoutubeで確認できます。(ネタバレ配慮はあるので安心)
でも、OPはともかくEDは絶対にプレイ後に聴いてほしい!本当に!
OP曲とED曲は手放しで素晴らしいと思いました。いやホント素晴らしい。
ED曲の感動をしっかり味わうためだけでもみんな18時間を完走するのだ!!
どう考えても曲作るのだけでももっと時間掛かってますからね!!!
プレイ時間目安18時間(私は15時間弱でした)とありますが、
文章量だけでない大力作でプレイ終了時の感動は掛けた時間分上乗せされた気がしました。
チームで注いだ情熱が尋常でない作品をありがとうございます。
シナリオ、グラフィック、音楽、演出がガッチリ噛み合ったゲームでした。
超本格派!というゲームを集団で作る人たちって減ってきたと思うので、
今後も是非活動を続けていって欲しいと心から思っております。
3.ネタバレあり感想
ここからも大したネタバレはありません。
未プレイの方はこちらもプレイ前の参考にされても良いかもです。
↓ネタバレ記事開始カウントダウン5
↓ネタバレ記事開始カウントダウン4
↓ネタバレ記事開始カウントダウン3
↓ネタバレ記事開始カウントダウン2
↓ネタバレ記事開始カウントダウン1
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■全般
まずやはり特筆したいのはボリュームです。
「ひぐらし」「月姫」などの同人ドリームの可能性があったあの頃と違い、
今現在では注いだ情熱と労力に見合う反響を得ることは正直難しい。
それでも本作を作ろうとして、作り切ったということが本当に素晴らしい。
エンディングシーンのビジュアル・音楽を含めた演出は本当に一級品。
一部の超名作を除く商業の名作と遜色ない出来栄えだと素直に感じました。
■シナリオ
シナリオを削ればプレイ時間5時間くらいにまとめることもできたはず。
それでもこのボリュームを作り切ったということが無条件で尊敬できます。
良し悪しは人それぞれかもしれませんが、書き手の個性も感じました。
無個性だとつまらないのでこの点も基本的には良かったと思います。
シナリオの文字数は調べられなかったのでざっと計算してみます。
以前かなり調べた際に見つけた1分当たりの読む速度は600~1,000字。
改めて調べたら400~600字という情報もありました。
(ノベルゲーム好きは軽く1,000字を超えている人も多そうです)
600字を採用すると、18時間換算で64.8万字、千字とすると108万字!
多分この間くらい(100万字弱?)なんじゃないかと思われます。
機械のように1時間千字で書き続けても執筆千時間の計算です。
とはいえ正直なところ、文字数は体感ではもっと多いように感じました。
そう考えると商業のテキストボリューム押しは尋常じゃなかったんですね。
(本作とは異なり制作期間の都合で分業の作品も多かったようですが)
シナリオ担当の方に対して凄いなと思える理由が実はありまして、
私自身が超ボリュームゲーのシナリオを途中で止めてしまっているんです。
古き良き学園青春恋愛モノ(攻略対象5人)で仕上がり字数は100~150万字。
共通ルートの大半と1ルートは完成(確か50万字くらい)しているのですが、
そもそも絵はどうすんだっけとか、今更ベタな話をやってもなぁとか、
完成までの制作時間でそこそこの規模のゲーム10個は作れるよなとか、
邪念・雑念が混じりすぎて筆が3,4年前に止まっちゃってるんですよね。
(それ以前ももっと長い中断期間もありましたが)
自分語りを織り交ぜてしまい恐縮ではありますが、
というわけで書き手の苦悩の諸々が良く理解できるつもりだったりします。
それだけにこの規模で完成させたことが素晴らしいとまずは絶賛したい!
書き始める当初から共同制作者が決まっていたのであれば、
それも大きな力になったんだろうなぁとかも勝手に妄想しております。
(あ、でもこれは逆に作用することの方が多いのかもしれません)
■グラフィック
こちらも個性を感じるグラフィック。
絵のことは良く分からないのでなんとも形容できないのですが、
このジャンルによくある絵柄でもないので序盤は少し慣れませんでした。
が、すぐに慣れますし何より終盤の怒涛のイベント絵が素晴らしい!!
ということで単純で恐縮ですがこの絵柄じゃなきゃダメだ、となりました。
しつこいけど夜空・宇宙的な部分がとっても幻想的なんですよね。
ちなみに大判焼きと鍋が実写なのはなんでなんだろう。謎だ!!
■音楽
音楽はOP曲とED曲がともかく最高でした!
しつこいですがED曲のクオリティはもう尋常じゃないです。プロの仕事。
作中BGMは正直なところあまり意識せずにプレイしていましたが、
違和感がない=場面に合った最適なものだったということかと思います。
■ここをもう少しこうすれば!と感じた点
正直なところ手放しで大絶賛できる作品でないとは思いますので、
勝手な1プレーヤーとしての意見として、
次回作を作られる予定という前提で以下記載いたします。
!この項だけそこそこのネタバレを含みますのでご注意ください!
・プレイ時間がやっぱり長い
プレイ時間はどうしても長く感じました。
テキストを飛ばすという選択肢は個人的にはないのですが、
序盤はスキップの誘惑に勝てない人もいるのではないかと感じました。
このプレイ時間を退屈させずに引っ張るには、
・序盤も中盤以降のような密度で話を展開させるか、
・掛け合いを見ているだけで楽しい卓越したテキストの面白さか、
・小さなオチを付ける登場人物のエピソードを持ち回りで入れるか、
何かしらの更なる工夫が必要だったのかな、と感じました。
感動の絶対量としては十分すぎるほど素晴らしいのですが、
感動量をプレイ時間で割った時間当たりの感動の単価値からすれば
プレイ時間3時間くらいの良作には敵わないよなぁ、と。
(いやもうそこが同レベルなら余裕で商業で天下取れそうですが)
なお、ファンタジーやミステリー的事象が一切起きない学園青春モノを
書き途中の身からすると未完成ながら刃のブーメランっぷりが痛い。。
・選択肢はないのか!?
勝手な想像としてはAIRのような構成を意識していたのかなと感じました。
Starlight編で各キャラをクリアしたらSpace編が開放されるというような。
そう見せるオマージュで元々一本道想定なのかもしれませんが、
時折目にする、分岐選択肢が現れそうな演出は気になりました。
というのも、個人的に魅力的だと思ったキャラクターが柳花で、
柳花>>>遠枝≧詩織>眞都といった具合に魅力的に感じたからです。
選択肢がない中で急激に眞都とのストーリーに入っていくところで、
私と主人公(およびゲーム自体)との心理的な距離が開いた気がしました。
・眞都の性格
Stella編で明らかになる眞都の心の内ですが、なんだか性格が悪いです。
バックボーンを考えると俗人的過ぎるような印象も持ちました。
そもそもプータロー的な存在なのに平気で大量の大判焼きを奢られたり、
それでいて特段感謝している様子もないし、というあたりも気になります。
委員長も務めながら家の手伝いで巫女にもなる柳花との差は歴然かな、と。
眞都は完全にメインヒロインなので、もっと魅力が伝わればと思いました。
・主人公のポジショニング
ちょっと主人公が傍観者ポジになってしまったのかな、と感じました。
Space編との因果があるのはジョナさんじゃなく主人公であってほしい!
主人公の主人公たる意味合いみたいなものが最後薄かった気がしました。
これは私の読解力不足かもしれませんが、
主人公でなければいけない必然性のようなものが欲しかったです。
好き勝手に記載してしまいましたが、
これだけの熱量を注ぎ完成させた完成度の高い作品を目の当たりにし、
もっと更なる高みを目指して欲しい!と感じてしまったようです。
商業の大作(しかも遊ぶのは大抵高評価のものだけだったりする)との
比較がどうしても脳裏をかすめてしまったというのもありそうです。
(なおそんな商業の大作も同じように気になる点はあったりします)
というわけで今はまだ考えられないのかもしれませんが、
最高の制作チームだと思うので是非今作を超える作品をまた作ってほしい!
なおその際は本作と同程度のテキストボリュームがいいなぁ(鬼すぎる)
令和の時代に伝説の第二幕を目撃したいんや!!
ネタバレ防止緩衝地帯
ネタバレ防止緩衝地帯
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ネタバレ防止緩衝地帯
ネタバレ防止緩衝地帯
ネタバレ防止緩衝地帯
4.おわりに
というわけで「ティアマトの星影」の感想はこれでおしまいです。
何度でも繰り返しますが、本当に力のこもったまさに渾身の一作です。
前項までに言及できませんでしたが、
分作形式ではなく単一の作品として完結させたところも素晴らしいです。
誘惑に負けてStarlight編だけで一旦出しちゃって、
そこで満足したり反応量が不満でやめちゃうとか普通にありそうです。
耐えに耐えて完成まで頑張り続けたのは本当に凄いと思います。
大作ノベルゲームに親しんできたベテランゲーマーには懐かしみを、
そうではない方々には新鮮な驚きを与えてくれるであろう本作、
最後までプレイして感動の結末をその目で、耳で、是非味わって下さい!
以上、富井サカナでした。
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