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真実は一つだが、人によって事実が異なるのはなぜか?

ところで私の苗字は『成願(ジョウガン)』です。

私は自分の名前が『成願』であることによって多くのことを学ぶきっかけを与えられたことに感謝しています。

FBで私に友達申請してくる方の5人に1人は私の名字を『成瀬(ナルセ)』と思い込んでいます。
とても多いので、最近は相手に違っている事も伝えません。
なぜならば、その人は私に、本当はそれほど興味がないからです。
とは言え、実はこれには無理からぬ理由があるのです。

脳科学者も言っておられますが、人の脳は基本的に楽をしようとする性質があるのです。そうです脳は怠け者なのです。
だから、人の脳は未知のものに出会うと、まず、過去の似た記憶に置き換えようとします。
その結果、大人になった人間が毎日見聞きする情報のほとんどが過去の記憶の中にあることになります。これは実に恐ろしいことです。

だから初めて見る「成願」を過去の記憶の「成瀬」に置き換えてしまうのです。

これはパソコンのキャッシュ機能と同様で物事を瞬時に判断するための高速化機能が脳にもあるためです。 必要機能と言っても良いでしょう。

『キャッシュ』とは、ブラウザが一度表示したWebページのデータを保存しておいて、次に同じページを表示する際、一度目より素早く表示してくれる仕組みのことです。
キャッシュを利用することで、サーバーでのファイルの作成を省いたり、ブラウザからサーバーへのデータ通信が不要になったりします。
つまり時短省エネ機能です。

しかし、実際は初めて見たにも関わらず、成願と認識する人もいらっしゃいます。

成瀬と読む人と、真実の成願と読む人、両者の違いは明確ですね。
よく見るか、よく見ていないか?それだけのことです。

人生においては、この些細なことの積み重ねが大きいのです。
キャッシュ機能を使わず、よく見る人には常に「気づき」があり、「学び」があり、新鮮な驚きと感動を味わう機会も増えます。

ビジネスや人生においても、あらゆる問題解決法の元となるのは「気づき」です。

黒澤明監督の映画「羅生門」から派生した心理学用語に
「Rashomon effect」(羅生門効果)という言葉があります。
これは今や世界共通の慣用句になっています。
意味としては、ひとつの出来事において、人々がそれぞれに見解を主張すると矛盾してしまう現象のことを言いますが、それらの人々が意図的に間違ったことを言っていないのにこの現象が起こるのはまさに「気づき」の違いからです。
真実は一つですが、人によって事実は異なるのです。

結局よく見た人とよく見ていない人、つまりは、キャッシュ機能を使う人と使わない人の見解の相違なのです。
それと、どの視点で捉えたかでも事実は変わってきます。
まさに、ことわざ「群盲、像を評す」の通りですね。

例えば、ある人がどこかで私と名刺交換して、後に「この前、ナルセさんに会ったよ」と、誰かに言ったとします。
その人にとってナルセさんと会ったことは事実なのです。
私の名前は成願だという真実よりも、その人にとっての事実がその人には優先されるのです。

この脳のキャッシュ機能が私たちの能力を高め、同時に下げていることを知っておく必要があります。

特に、年配の方に御忠告です。
なぜ、人は歳をとると感動することが減るのでしょうか?
答えは言わずもがな。
だから、できるだけキャッシュに頼らず毎日を生きることです。

脳は気づきによっても活性化されます。
実は今見ているものは全て初めて見るものなのです。
過去に見たものとは必ず異なっているのです。
ものごとは必ずうつろいます。植物や動物、風景などの自然界にあるものは言うに及ばず、機械などの無機質なものも、色褪せや経年劣化しています。
社会状況やビジネスの状況も然り、
ありとあらゆるものが毎日、一刻一刻変化しているのです。
ほとんどの人はそれに気づくことなく、生きています。

話を最初に戻すと、私の苗字の成願を成瀬と読み間違えるのは、脳のキャッシュ機能を使っているからです。
人間関係においては、できる限りキャッシュ機能は使いたくないものです。

黒澤明監督:映画『羅生門』より

かつて「笑っていいとも」でタモリさんがゲストによく言ってた、「髪切った?」は、他人とのコミュニケーション能力を高めるためには、とても大切ですね。

人は自分の変化に気づいてもらえたことに喜びを感じる生き物なのです。

だから私も、昨日と違う今日のあなたに気づいてあげられる人でありたいです。
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#和文化デザイン思考  講師
成願義夫 Jogan Yoshio プロフィール
伝統文様研究家、装飾画家、アートディレクター、着物デザイナー、グラフィックデザイナー、伝統産業商品開発アドバイザー
株式会社京都デザインファクトリー 代表取締役社長

●代表作と最近の活躍
関西国際空港の初代ウエルカムボードのデザイン。
長野県善光寺の納骨堂の納骨壇の扉デザインの他、納骨堂のデザインは多数。
サッポロビールワインラベルなど、手がけたデザインは多数多岐に渡る。

●近況
2018年、秋、成願がデザインした金属製スマホケースが英国ウェールズ国立博物館に永久保管決定。
2018年、冬、和柄をテーマにした民放テレビ番組に解説者として出演。
2019年、春、ジョルジオアルマーニビューティー主催のイベント講師に招かれる。
2019年、夏、京都駅ビルのフォトスポット四箇所のデザインを手がける。
2019年、秋、京都高島屋のバイヤー向け『伝統文様勉強会』講師を務める。
2020年、埼玉県秩父市の招きで2日間に渡り講演会と伝統デザイン勉強会を開催。
2022年、NHKのテレビ番組『美の壷』に出演。

●近年はグラフィックデザイナー、壁面装飾画家、着物デザイナー、伝統文様研究家、伝統産業の商品開発アドバイザー、講演家として、テレビなどにも出演し、幅広く活躍中。  
著書は、和柄デザイン素材集を10冊以上執筆。総販売数は40万冊を突破。
また、著書の大人の塗り絵『和柄のヒーリングぬり絵ブック』(PHP研究所発行)は、累計7万冊を突破していまだにロングセラーを続けている。
成願の和柄デザイン素材集は日本中のデザイン事務所に、必ず1冊以上置かれていると言われている

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